フランスやスペインと並ぶ、ワインの生産国として知られるイタリア。美食や観光の国としても人気の、イタリアのワインの歴史や固有品種、代表産地などについて解説します。

ワイン生産量世界第1位

イタリアは2015年にフランスを追い抜き、その後2020年までワインの生産量で世界第1位の座に君臨しています。また、ぶどうは中国に次いで世界第2位の生産量(2020年)を誇っています。

全長が南北に1,000kmほどに長く伸び、地中海に突き出た国土は全体的に温暖で日照に恵まれ、イタリア20州すべてでワイン用ぶどう、そして赤、白、ロゼワインを生産しています。

イタリアワインの歴史

イタリアのワイン造りの歴史は古代ローマ時代にまで遡ることができると言われています。

古代ローマにぶどう栽培とワイン造りの技術を伝えたのはギリシャから来た人々です。ギリシャ人はイタリアの風土に適した苗を選択してぶどうを栽培したため、古くからイタリアのぶどうは高糖度、高品質でした。そのため、イタリアは古代ギリシャ語で、「エノトーリア・テルス(Enotoria Tellus/ワインの大地)」と呼ばれていました。現在、高級ワインの産出国の筆頭としてあげられるのはフランスですが、より長いワイン造りの歴史があるのはイタリアなのです。

起源79年に噴火で埋もれた古代ローマの有名な遺跡「ポンペイの廃墟」には約200カ所もの酒場の跡がはっきりと残っています。現代のスナックやバーのようなカウンターのある酒場が700m以内に8軒も並んでいる通りまであり、古代ローマ人がいかにワインを愛していたかがはかり知れます。

ポンペイの郊外で発見された31の大邸宅のうち、29カ所がワイン生産者で、地下の貯蔵庫は熟成中のワインが入ったアンフォラ(Amphora /ギリシャ風の壺)で満たされていました。

ローマ帝国の崩壊と移民の流入とともに、イタリアのぶどう栽培とワイン造りは一時衰退したと考えられています。しかし、その後も修道院によってワイン造りが受け継がれていきます。なぜなら、キリストがパンを自分の肉、ワインを自分の血になぞらえて行った聖餐の儀式を受け継ぐため、キリスト教の布教にはワインが欠かせないものだったのです。

儀式で用いられる飲み物だったワインは中世後期に日常の飲み物として飲まれるようになります。17世紀には現在のようなガラス製のボトルに瓶詰めされたワインが販売されるようになりました。

そのころから、イタリアよりもさらにぶどう栽培に適した土壌と気候を持ったフランスに醸造技術の面でも追い抜かれる形となります。そして、19世紀半ばから末にかけ、フランスのぶどうをほとんど壊滅させてしまったフィロキセラの害をきっかけに、フランスワインを補う形での需要が増え、イタリアワインの「質より量」といった風潮に拍車がかかりました。しかし、そんななかでも、ヴェネツィア(Venezia)やフィレンツェ(Firenze)で造られる甘口ワインは例外で、世界的に評価されていました。

1963年、フランスからは30年ほど遅れをとってしまったものの原産地呼称制度を制定。イタリアは再び、人気のワイン産出国として世界に名を馳せるようになったのです。

イタリアの原産地呼称制度

1963年に制定されたイタリア初のワイン法はD.O.C(Denominazione di Origine Controllata)といい、原産地統制呼称、と訳すことができます。

D.O.Cでは生産地や品種、収穫高や熟成方法が規定された条件を満たした場合に格付けされますが、それよりさらに限定された地域で造られたワインのみ最上クラスのD.O.C.G(Denominazione di Origine Controllata e Garanita/統制保障原産地呼称)を名乗ることができます。D.O.C.GはスペインワインのD.O.Ca(Denominacion de Origen Calificada /特選原産地呼称)に近い格付けです。

その後、2009年EUのワイン法の改定に伴い、D.O.CとD.O.C.GはまとめてD.O.P(Denominazione di Origine Protetta/保護原産地呼称ワイン)、I.G.P(Indicazione Geografica Protetta/保護地理表示ワイン)、Vino(地理的表示なし)の3つに分類するようになりました。

500種以上の土着品種

イタリアにはその土地固有の遺伝子タイプを持つ土着品種のぶどうが500種類以上、一説では2,000種類以上あるとも言われています。

イタリアに数多くの固有品種をもたらした理由の1つに、多様な気候と変化に富んだ地形があげられます。北部にはアルプス山脈(Alpi)、内陸部にはイタリア半島を縦断するアペニン山脈(Appennini)があり、山岳・丘陵地帯が多く、大きな標高や傾斜の変化があります。また、地中海性気候のほか、アルプス気候、大陸性気候などのバリエーション豊かな気候があり、それぞれの土地に多様なぶどう品種と栽培方法が存在します。

また、イタリアが小都市国家の集合体だった時代が長いことも土着品種の多さに関係していると言えるでしょう。イタリアが初めて国家として統一し、イタリア王国となったのは1861年。それまでの長い期間、それぞれの地方は独自の歴史と文化を築き、ぶどう栽培においても独立した道を歩んできたのです。

イタリアの代表的な土着品種として有名なのが、サンジョヴェーゼ(Sangiovese

)です。直訳すると、ローマ神話位の主神である「ジュピター(Jupitar)の血」という名前のこの黒ぶどうは、古代ローマの時代から栽培されてきたとされています。イタリア中部のトスカーナ(Toscana)地方で主に栽培されていて、D.O.C.Gワインのキャンティ(Chianti)の原料として知られています。

そのほかにも、モンテプルチアーノ・ダブルッツォ(Montepulciano d’Abruzzo

)の原料、モンテプルチアーノ、苗が強く、イタリアで1位、2位を争う量が栽培されている白ぶどうのトレッビアーノ(Trebbiano)など、イタリアの人気ワインに使われるぶどうはほとんど土着品種だと言えるでしょう。ちなみに、トレッビアーノはブランデーのコニャックの原料としても使われる品種です。また、黒ぶどうの(Aglianico)はギリシャ人によって持ち込まれたぶどうで、イタリア南部を中心に古代から栽培されてきた伝統品種で、しっかりとしたタンニンと酸味が特徴です。アリアニコは最も長くワインの材料として使われてきた歴史のあるぶどう品種だと言われています。

代表的な産地

全20州でワインが醸造されているイタリアですが、そのなかでも代表的な産地を紹介していきます。

ピエモンテ州

ピエモンテ=山の足、という名の通り、アルプス山脈の麓に位置するイタリア北部の州です。夏は暑く、冬は寒い大陸性気候で、イタリアで最上クラスのぶどう品種のネッビオーロ(Nebbiolo)など、優れたぶどう品種が数々栽培されています。ネッビオーロで造られる高級赤ワインのバローロ(Barolo)は「イタリアワインの王様」と称えられています。

また、ピエモンテ州は美食の地としても知られ、白トリュフやチーズ、チョコレートなど、さまざまな美味しい食材の産地でもあります。

ヴェネト州

水の都、ヴェネツィアを州都としたヴェネト州(Veneto)は北にアルプス山脈、南はアドリア海に挟まれた自然豊かな州です。北風はアルプスが防ぎ、アドリア海 (Mar Adriatico)が温暖な空気を保ってくれるため、しっかりとした果実味とミネラル感のあるぶどうが育つ産地です。

イタリアで最大のワイン産地であり、州の代表品種であるガルガネガ(Garganega)を用いたソアヴェ(Soave)は、果実味とすっきりとした飲み口が魅力のイタリアを代表する白ワインです。また、ヴェネト州のヴェローナ地区(Verona)は希少な最高級ワインのアマローネ(Amarone)の産地としても知られています。アマローネは陰干しぶどうで造られる、糖度を30度以上にまで高めた甘口ワインのレチョート(Recioto)の発酵をさらに進め、辛口に仕立てたワインです。

トスカーナ州

フィレンツェを州都とした中部のトスカーナ州はイタリアの文化の中心地的存在です。1970年代にイタリアワインの復権を目指して興った「イタリアンワイン・ルネッサンス」でも、牽引役となったのはトスカーナの生産者でした。

西のティレニア海(Mar Tirreno)と中央のアペニン山脈との間に丘陵部が広がり、赤ぶどうの生産量が多いのが特徴です。キアンティの産地として有名ですが、ほかにも、「スーパートスカーナ(Super Toscana)」と呼ばれるサッシカイア(Sassicaia)やオルネライヤ(Ornellaia)、「イタリアワインの女王」と呼ばれる、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(Brunello di Montalcino)などの優れたワインも生み出しています。

シチリア州

イタリア半島のつま先部分、イオニア海(Mar Ionio)に浮かぶシチリア島は全体でイタリア最大の州でもあります。温暖な地中海性気候に恵まれつつ、ヨーロッパ最大の活火山であるエトナ火山(Etna)などを筆頭とした標高の高い地帯もあり、冷涼な地域もある多様性に富んだ生産地です。

州全体のワイン生産量の6割が白ワインで、赤ワインは土着品種のネロ・ダーヴォラ(Nero d'Avola)や代表品種のフラッパート(Frappato)で造られるD.O.C.Gワインのチェラスオーロ・ディ・ヴィットーリア(Cerasuolo Di Vittoria)などがあります。また、島西部ではスペインワインのシェリーのような酒精強化ワインで、ティラミス(Tiramisu)の材料としても知られる「マルサラ(Marsala)」が造られていることでも有名です。

まとめ

イタリアワインの歴史や固有品種、代表産地などについて解説しました。イタリアワインとスペインワイン、それぞれの特徴を比べて楽しんでみるのもまた一興、かもしれませんね。