誕生日に生まれ年のワインをプレゼントにもらう、または贈る、というのはワイン好きな方なら一度は憧れたことがあるのではないでしょうか。ただ、耳にされたことがあると思いますが、ワインには「当たり年」というものがあります。生まれ年がちょうど当たり年であればいいのですが、そうでない場合は残念なワインが贈り物になってしまうことも。
今回はワインの当たり年について解説するとともに、自分の生まれ年が当たり年かどうか調べる方法と、当たり年のスペインワインを紹介します。
よく耳にする「当たり年」とは?
ワインはぶどうから造られる飲み物です。そのため、原料として使われるぶどうの出来、不出来がワインのクオリティを大きく左右するのです。そして、そのぶどうの出来、不出来に大きく関わるのが天候です。ぶどうが適切に成長し、糖度と酸度のバランスのいい、熟した状態で収穫されるためにはいくつかの天候の条件が揃わなければなりません。
よく耳にする「当たり年」とは、ぶどうの栽培にとって最適な天候の条件で収穫できた年のことを指します。
ワインの当たり年は「グレートヴィンテージ(Great Vintage)」ともいい、反対に、病気などでぶどうを熟した状態で収穫できなかった年を「オフビンテージ(Off Vintage)」といいます。
ぶどうにとって最適な天候の条件とは
ぶどうが健全に生育する際に、ポイントとなる天候の条件には以下のようなものがあります。
ぶどうは「遅霜」と呼ばれる春の霜によって害を受けることがあります。春にぶどうが芽を出す頃に、急に冷え込んでしまうようなことがあると芽が霜にやられ、壊死してしまうことがあるのです。また、春には雹が降ることもあります。雹が芽にあたって落ちたり、傷ついてしまったりするのです。
通常、夏になれば日照量、気温は共に上がっていきます。しかし、異常気象などで日照量、気温が上がらなければぶどうの糖度が上がりません。また、日照量、気温が上がっても、夜間の冷え込みが足りなければ酸の足りないぶどうになってしまいます。ぶどうは日中の日照によって光合成をして糖分を蓄え、夜間の冷え込みによって酸を蓄えるという性質があるのです。酸の足りないワイン用ぶどうはワインの味を平板な奥行きのないものにしてしまいます。
降雨量もぶどうの品質に大きく関わります。ぶどうはそもそも、多くの雨を必要としません。ぶどう栽培に適した年間降雨量は500〜800mm程度とされています。雨が多いと葉や蔓だけが茂ってしまい、実に栄養が行き届かなくなったり、水っぽくなってしまったりすることがあるのです。
また、雨が多いとぶどうが病気になってしまうリスクが高まります。ぶどうは雨に濡れることで、晩腐病やべと病、灰色かび病などの病気にかかりやすくなってしまうのです。
さらに、雨のせいで適切な防除(病害虫の予防)ができない、ということもあります。
近年、温暖化の原因で世界的に「ゲリラ豪雨」と呼ばれる突発的な豪雨が増えています。せっかく防除をしても急に雨が降ってしまうと、農薬が流れ落ちてしまうのです。
自分の生まれ年は当たり年?チェックしてみよう
もし、自分の生まれ年が当たり年であればその年のヴィンテージを飲んでみたいもの。また、生まれ年のワインをプレゼントする際に、相手の生まれ年が当たり年がどうかはチェックしておきたいですね。
そんな時は『ヴィンテージ・チャート(Vintage Chart)』で調べてみましょう。ヴィンテージ・チャートとは、収穫年によるぶどうの作柄と、そのぶどうでできたワインの評価を一覧にしたものです。ワイナリーやワイン雑誌、ワイン協会や販売者、評論家たちが発表していて、地域・年別にまとめられています。
ヴィンテージチャートは数多く存在しますが、おすすめするのは以下の3つです。
fwines(ファインズ)のヴィンテージチャート
ワイン輸入・販売をおこなっている『株式会社ファインズ』のヴィンテージチャートです。現地のワイン協会発行の評価などを元に作成されています。
ワイン通販会社『LoveWine(ラブワイン)』のヴィンテージチャートです。1940年以降のワインが評価されています。
The Wine Advocate Vintage Guide(ワインアドボケイトヴィンテージガイド)
「神の舌を持つ男」として有名なワイン評論家のロバート・パーカー(Robert Parker)氏の運営するホームページで発表されているヴィンテージチャートです。単純な格付け評価だけでなく、ぶどうの熟成度合も7段階と細やかに評価されています。
ワインアドボケイトヴィンテージガイドの読み方を説明します。
Rating ranges (格付け評価)
- 96-100:Extraordinary (格別に素晴らしい)
- 90-95:Outstanding (頭抜けている)
- 80-89:Above Average tu Excellent (平均以上〜良い)
- 70-79:Average(平均的)
- 60-69:Below Average (平均以下)
- <59:Appalling (ぞっとするほどひどい)
Maturitiy (熟成度合)
- C:Caution,nay be too old (注意。遅すぎる可能性あり)
- E:Early maturing and accessible (早目ではあるが熟成しつつあり、飲むことができる)
- NV:Vintage not declared (ビンテージ未申告)
- I:Irregular,even among the best wines (最高のワインでもイレギュラーあり)
- NT:Not yet sufficiently tasted to rare(まだ十分にレアではない)
- R:Ready to drink(飲み頃)
- T:Still tannic,youthful,or slow to mature(まだタンニンが強く、若いまたは熟成が遅い)
おすすめの当たり年のスペインワイン
ここからはおすすめの、当たり年のスペインワインを紹介します。
ムリージョ・ビテリ レセルバ(Murillo Viteri Reserva)2016
2016年のD.O.Ca.リオハ(Rioja)は、ワインアドボケイトヴィンテージガイドの格付け評価で95のOutstandingを獲得しています。
こちらのワインはD.O.Ca.リオハのボデガス・ムリージョ・ビデリ(Bodegas Murillo Viteri)の2016年ヴィンテージです。フレッシュな優雅さがあり、複雑さのあるルビー色。樽熟成による洗練されたバニラの香りと、フルーティなアロマがたっぷり。まろやかな口当たりで骨格はしっかりとして、絹のような滑らかな余韻が心地よく長く続きます。
ボデガス・ムリージョ・ビテリは1900年創設の家族経営のワイナリー。リオハ州の中心地、セニセロ(Cenicero)にあります。現在の当主、イニャキ・ムリージョ・ビテリ(Iñaki Murillo Viteri)は5代目で、創設以来続いている手仕事の精神を守り続け、伝統的なリオハのワインを造り続けています
ボデガス・ムリージョ・ビテリのコンセプトは、
- 品質の向上
- 作業の効率化
- 環境への配慮(水の再利用)
- バリアフリー
の4つ。まろやかで丸みのある、飲み心地の良い「朝の10時からでも飲みたくなるような」ワインを目指しています。高品質なワインを追求することはもちろんのこと、作業を効率化して無駄を省き、環境に負荷をかけない取り組みにも熱心です。タンクの冷却に使う水は全て灌漑に再利用し、醸造所内はどんな人が訪れてもいいようにバリアフリー対応にしています。
パゴ・デ・ロス・カペジャーネス クリアンサ(Pago de Los Capellanes Crianza)2018
2018年のD.O.リベラ・デル・ドュエロ(Rivera del Duero )は、ワインアドボケイトヴィンテージガイドの格付け評価で95のOutstandingを獲得しています。
こちらのワインはD.O.リベラ・デル・ドュエロのパゴ・デ・ロス・カペジャーネス(Pago de Los Capellanes)の2018年ヴィンテージです。ルビー色の色調、黒系果実のアロマ、ほろ苦いニュアンスにスパイシーさもあります。骨格はしっかりとしながら、スムースな口当たりに優雅な仕上がり。適度なタンニンにほどよい酸もあり、余韻もあります。
パゴ・デ・ロス・カペジャーネスはリベラ・デル・ドュエロの中心地に位置する新進気鋭のワイナリー です。高品質のぶどう産地として知られるペドロサ・デ・ドゥエロのわずか1kmほどのところにあり、ワイン造りに最適な土地と環境を備えています。収穫量はヘクタール当たり7000kgと制限されている地域で、あえてそれを5000kgに抑え、最高級のぶどうの栽培にこだわっています。設立以来数々の賞を獲得し、世界中から高い評価を得ている実力派です。
まとめ
ワインの当たり年について解説するとともに、自分の生まれ年が当たり年かどうか調べる方法と、当たり年のスペインワインを紹介しました。
当たり年はワイン選びにとって非常に重要な要素です。また、ワインがぶどうという自然からもたらされる恩恵であることに、気づかされるというのも当たり年という概念の持つ一面です。この記事を参考に、ぜひ、当たり年に親しんでみてください。