ロゼワインの魅力とは スペインならではのロゼワインをご紹介 ロゼワインの魅力とは スペインならではのロゼワインをご紹介

ロゼワインの魅力とは スペインならではのロゼワインをご紹介

ワインショップで見かけると思わず手に取ってしまう。ロゼワインにはそんな華やかな魅力があります。ロゼワイン生産量世界第2位のスペインを含め、世界の主要な市場ではロゼワインが高い人気を集めています。ロゼワインの魅力について、スコルニワイン営業統括本部長の齊藤邦久氏に話を聞きました。

Q:ロゼワインには、華やかでおしゃれというイメージがありますね。

A:ロゼは「バラ」や「ピンク」を意味するフランス語です。ピンク色は可愛らしさの象徴ですが、同時に豪奢な大輪のバラも想起させますね。桜や桃といった日本ならではの季節感や晴れの日を感じさせるワインでもあります。桜やバラはお祝い事にふさわしい花ですから、ロゼワインをギフトとして贈っても喜ばれますよ。ロゼはまた、日常から特別なイベントまで、どんな場面にも寄り添う汎用性があります。ブランチ、ランチ、ディナー、ティータイム、そしてパーティ。どんなシーンもロゼがあれば雰囲気が盛り上がります。おしゃれなイメージが先行しがちですが、ロゼワインにはアウトドアの開放的なイメージもある。夏の暑い日に外で焼き肉をしながら飲んでも美味しいのですよ。インドアでもアウトドアでも通年楽しめるところが魅力ですね。

Q:ロゼは汎用性が高いワインとのこと、料理に合わせやすいのではないでしょうか。

そのとおりです。ロゼは「ニュートラル」なワインです。つまり、赤ワインと白ワインの良いところを併せ持つワインなのです。酸味とタンニンのバランスがよく、ボディもライトからミディアムが多いので、味付けや素材を問わずどんな料理にも合わせやすい。パスタやピザや揚げ物はもちろん、刺身や焼き魚のような日本の食卓によく登場する淡白な風味の一品にも合います。餃子や麻婆豆腐などの辛い中華料理や、香辛料を利かせたパッタイや生春巻きなどのタイやベトナム料理にもよくなじみますね。料理だけではなくスイーツにもぴったりで、色とりどりのマカロンやフレッシュフルーツなどはロゼワインの鮮やかな色合いにマッチします。こうしてみると、ロゼが絶対に合わない料理を思いつくのが難しいくらいですよ。

Q:赤ワインと白ワインのどちらを選ぶべきか迷ったら、ロゼワインを選ぶと良さそうですね。

A:ええ、「迷ったらロゼ」です(笑)。特に普段あまりワインを飲まない方や、これからワインについて学ぼうとしている方は、まずはロゼを飲んでみるのも一案ではないかと思いますよ。白ワインと赤ワインの良さを併せ持つロゼワインを飲めば、「ワインは渋いだけ」あるいは「ワインはあっさりしすぎで物足りない」といったありがちな誤解を避けられるかもしれません。

ロゼワインは基本的に赤ワイン用の黒ブドウを使用してつくられます。ロゼワイン用のブドウ品種というものは特にありません。例えばスペインなら、ボバルやフォルカリャといった土着品種からピノノワールなどの国際品種まで、土地ごとに適切とされる品種が使用されています。

ロゼワインには、直接圧搾法そしてセニエ法と呼ばれる2種類の代表的な造り方があります。直接圧搾法は白ワインの造り方と同じで、黒ブドウを破砕してすぐに圧搾し、果皮でほんのりとピンクに色づいた果汁を発酵させます。渋みが少なく、すっきりした軽やかな飲み口のワインに仕上がりますね。一方、セニエ法は赤ワインの造り方と同じで、黒ブドウを破砕した後に果皮と果実を短時間漬け込み、色づいた果汁を引き抜いて発酵させます。よりしっかりした色合いと味わいを持つワインになりますね。こうした造り方の違いによって、ピンクだけでなく、サーモン、オレンジ、そして朱色など色合いにも幅広さが生まれるのですよ。

このようにつくられたロゼワインは、自分の好みを知るのにも役立つと思いますよ。すっきりタイプが好きなら主に白ワインから、しっかりタイプが好きなら主に赤ワインから飲んでいけばいいのではないでしょうか。

Q:ロゼワインの多様性は驚くばかりですね。おすすめのロゼを教えてください。

A:今日は数ある中から2種類ご紹介します。1本目は「エステバン・マルティン ロサード」というロゼワインです。ガルナッチャ100パーセントでつくられたこのワインは、淡いサーモンピンクの色合いがチャーミングで、春から初夏にかけて陽光降り注ぐテラスで飲むのにぴったりな1本ですね。フルーティでキャンディーのような甘いアロマが特徴で、ライトな口当たりですがセニエ法でつくられただけあってしっかりとしたコクも備えた辛口ワインです。生ハムやスモークサーモンなどを使った冷製おつまみから、酢豚やエビチリソースなどのがっつりした料理まで、いろいろな料理に合わせられるオールマイティーなワインですよ。造り手のボデガス・エステバン・マルティンは、大きな協同組合が主流のD.O.カリニェーナでは珍しく、家族経営スタイルを続けているワイナリーです。ブドウの鮮度を損なわない工夫をすることで香り豊かなワインづくりを心掛けているとのこと。このロゼワインを通じてその工夫が伝わってきますね。

2本目は「エウダルド ブルット・ロサード」です。ピノノワール100パーセントのカバで、濃く鮮やかなローズピンクの色合いが特徴です。透明なボトルに入っているので、昼に屋外で飲むとさらに外観の美しさが際立ちますよ。グラスから立ち上ってくるラズベリーやザクロの豊かなアロマが非常に心地よい。酸も優しく泡立ちも緩やかなのですが、一口飲むとその厚みとピュアな生命力に驚かされます。

こうした美味しさは、ビオディナミ農法によるワインづくりから来るものだと思います。造り手のマッサナ家は手間暇かけてビオディナミ農法を忠実に実践していますからね。この農法では、自然との共存を軸に様々な要素を考慮しなければならないのですよ。例えば、植物の生命力が増す満月の頃にブドウの収穫を行ったり、害虫や病原菌を殺さずそれらに負けない健やかなブドウづくりに努めたりね。このロゼはまた、ぶどうの果皮に自然についた酵母だけを頼りに発酵を行っています。ぜひ飲んでいただきたいロゼですね。

Q:世界の主要な市場では、ロゼワインが普段飲むワインとして定着しつつあります。しかし日本ではそうした状況が見られませんね。

A:確かにそれは否定できません。こうした世界とのギャップは、1980年代に日本市場に投入されたロゼワインにも原因の一部があると思われます。当時は甘口のロゼが主流で、「ロゼはワインとしての深みにかける」という間違った考えが横行し、そのイメージが更新されずにいるのです。このため、たいして飲みもしないで敬遠しているのではないかと思います。ロゼには甘口から辛口まであり、丁寧につくられた繊細かつ個性的なワインが揃っているのにね。

ちょっと場違いかもしれませんが、私はこうした状況をよく日本の競馬になぞらえています。一般的には競馬というとギャンブル性が注目されて、馬、騎手、調教師などが作り上げる競技スポーツとしての素晴らしさは見落とされがちですよね。しかもかつての競馬場は、レトロな雰囲気と男性ばかりのギャンブル感であふれていました(笑)。しかし今はリノベーションされたきれいな競馬場が多く、スタイリッシュな飲食店も入り、幅広い客層が集まる場所として生まれ変わりました。

私はこうした改革をロゼワインに起こしたいと思っています。ロゼワインの真価を日本の消費者のみなさまが知り、もっともっとロゼワインを飲みたいと思う状況をつくりたいと思っています。そのためにはソムリエそしてインポーターとして、ロゼワインを取り巻く状況や時代背景の変化を含め、ロゼワインの品質について適切にお伝えする責任の一端を担っていると思っています。赤ワインや白ワインと並び、ロゼワインも多くの消費者のみなさまのお手元に届けられるよう尽力していきたいと思っています。

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