スペインワインを代表するブドウ品種や産地の特徴まとめ!スペインワインの世界について徹底解説します! スペインワインを代表するブドウ品種や産地の特徴まとめ!スペインワインの世界について徹底解説します!

スペインワインを代表するブドウ品種や産地の特徴まとめ!スペインワインの世界について徹底解説します!

スペインはフランスやイタリアに並ぶ有数のワイン生産国で、ぶどうの作付け面積は世界でトップにランキングされています。2019、2020年のワインとマスト(Must/ぶどうの果汁)の生産量はイタリアとフランスに続いて第3位となっています。輸出総量がイタリアに続いて世界第2位となっています。

今回は多様な産地に恵まれ、厳しい基準で品質を守っているスペインのワインについて、その歴史や主要なぶどう品種、主要産地などを含め、解説します。

スペインワインの歴史

スペインワインの3000年にも及ぶとされる歴史は波乱に満ち満ちています。

その起源は紀元前1100年〜紀元前500年頃まで遡ることができるとされています。当時、スペインの東海岸全域を支配していた古代ギリシャ人やフェニキア人により、ぶどう栽培とワイン造りの技術が伝えられたのです。

帝政ローマ時代には生産技術が向上し、ヒスパニア(Hispania /現在のスペインに位置したローマ帝国領)産ワインはイタリア産ワインよりも多くの量がガリア(Gallia /ローマの属州)に輸出されていたとされています。

ローマ帝国が衰退し、ゲルマン民族の侵略によって多くのぶどう畑が破壊されてしまいます。しかしその後、西ゴート族がイベリア半島に進攻、ワイン醸造が復活しました。

8世紀初頭から始まったイベリア半島へのイスラム教徒の侵略により、ワイン醸造は絶滅の危機に瀕します。しかし、高利益を生み出すワインは戒律を重んじるイスラム教徒にとっても禁じきれず、ワイン醸造が完全に途絶えることはありませんでした。

その後、レコンキスタによって再び創設された修道院を中心に、スペインのワイン醸造は受け継がれていきます。現在でも名高いとされているぶどう畑の多くは、修道士によって作られたと言われています。

15世紀末から始まった大航海時代はスペインワインの大量生産の契機となりました。また、16世紀になるとイギリスの商人とのワイン取引が増加します。

17〜18世紀にはシェリー(Sherry)やマラガ(Málaga)のモスカテル(Moscatel)、リオハ(Rioja)ワインが世界的にも普及しました。しかし、産業革命で他のヨーロッパ諸国に遅れを取ったこともあり、スペインの醸造技術への評価は低迷してしまいました。

しかし、19世紀後半にフィロキセラの流行をきっかけに、事態が変わります。フランスのぶどうは壊滅状態に陥り、フランスの多くのワイン生産者らがスペインに流入、高度な醸造技術を伝達したのです。

その後フィロキセラはスペインにも被害を及ぼしたものの、20世紀初頭にはヨーロッパ全体で克服することができました。しかし、その後の第二次世界大戦とスペイン内戦により、スペインワインの生産と輸出は再び危機に陥ります。しかし、50〜60年代にワインの大量供給を目的とした協同組合が各地に設けられ、栽培が簡単で大量の収穫が見込めるぶどう品種を中心に、栽培が広まっていきました。

70年代には内戦も落ち着き、ワイン生産も量より質を重視する傾向となり、80〜90年代には各地に新しいワイン生産地が台頭するようになりました。そして21世紀、スペインのワイン産業は大きく発展。現在、若い世代の醸造家が新たなスペインワインの輝かしい歴史を築きつつあるのです。

ぶどうは世界第1位なのにワインは世界3位なのはなぜ?

なぜ、スペインのぶどう作付け面積は世界第1位なのに、ワインの生産量は世界第3位なのでしょうか?理由はさまざまありますが、その1つに、スペインワインの味わいとそれぞれの地方独自の品質を保護するために、各ワイン産地に設けられた規制措置の基準の厳しさが挙げられます。

スペインのワイン法

現在のスペインのワイン法につながる最初の法は、リオハ産ワインの原産地を定める1902年の王令でした。1932年にはワイン法が制定され、翌年、D.O.と呼ばれる原産地呼称制度(Denominación de Origen、デミナシオン・デ・オリヘン)を定める法律が発令されたのです。

1970年「ぶどう畑、ワイン及びアルコールに関する法令」が施行されました。この法に基づき、全国原産地呼称庁(INDO)が設立。D.O.を名乗るための、栽培面積、地域の境界限定、栽培品種、収穫量など、さまざまな条件がより厳しく定められたのです。

最新のD.O.は2006年の法改正によって現在以下の7段階に分類されています。

・V.P.(Vino de Pago、ビノ・デ・パゴ)=単一ぶどう畑限定高級ワイン

・D.O.Ca.(Denominación de Origen Calificada、デノミナシオン・デ・オリヘン・カリフィカーダ)

=特選原産地呼称ワイン

・D.O.(Denominación de Origen、デミナシオン・デ・オリヘン)=原産地呼称ワイン

・V.C.I.G.(Vino de Calidad con lndicacion Geografica、ビノ・デ・カリダ・コン・インディカシオン・ヘオグラフィカ)=地名名称付き高級ワイン。

・Vino de la Tierra(ビノ・デ・ラ・ティエラ)

=地方ワイン

・Viñedos de España(ビニェードス・デ・エスパーニャ)

=11地域のワインのブレンドが許されている区分

・Vino de Mesa(ビノ・デ・メサ)

=テーブルワイン

熟成期間による格付け

スペインでは伝統的に、古い樽で何年もの熟成を行い、酸化が進むほど上質なワインと認められる傾向があります。そのため、INDOは熟成期間による格付けを分類しています。以下3つの分類の存在が、スペインワイン独特の味わい深さに貢献しているのです。

・Grand Reserva(グラン・レセルヴァ)

赤・・・60ヶ月以上熟成。そのうち18ヶ月以上の樽熟成。

白、ロゼ・・・48ヶ月以上熟成。そのうち最低6ヶ月の樽熟成。

・Reserva(レセルヴァ)

赤・・・36ヶ月以上熟成。そのうち12ヶ月以上の樽熟成。

白、ロゼ・・・24ヶ月以上熟成。そのうち最低6ヶ月の樽熟成。

・Crianza(クリアンサ)

赤・・・24ヶ月以上熟成。そのうち6ヶ月以上の樽熟成。

白、ロゼ・・・18ヶ月以上熟成。そのうち最低6ヶ月の樽熟成。

スペインワインの主要品種

スペインは地方ごとに複雑な地形と気候が存在し、150種類ほどのぶどうがワインの原料として使われています。その中には多くの固有品種があり、それぞれの産地で栽培されているのです。

スペインワインを代表するぶどう品種には以下のようなものがあります。

黒ぶどう

・テンプラニーリョ(Tempranillo)

リオハ(Rioja)・ナバーラ(Navarra)地方原産。「早熟」という意味を持つ。スペインを代表する赤ワイン用品種。濃いルビー色、豊かなタンニンと酸が特徴。

・ガルナッチャ(Garnacha)

アラゴン(Aragón)地方原産。赤ワイン用品種では世界一栽培面積が広い。病害に強く土壌を選ばない。きれいな赤色が特徴。

・メンシア(Mencía)

ガリシア州(Galicia)やカスティーリャ・イ・リオン州(Castilla y León)のD.O.ビエルソ(Bierzo)で栽培。上品なアロマと爽やかな酸味のあるワインになり、スペインのピノ・ノワールと称される。

・ボバル(Bobal)

主にバレンシア(Valencia)地方で栽培されている。悪天候に強く、収穫量が多い。タンニンが豊富で、酸度が高い。

・モナストレル(Monastrell)

バレンシア原産とされている。乾燥に強く、晩熟。深いルビー色で果実味が豊富。ロゼやカヴァ、甘口と、さまざまなワインの原料になる。

白ぶどう

・アイレン(Airén)

ラ・マンチャ(La Mancha)地方の固有品種。世界一栽培面積が広い。バナナやパイナップルのような果実味がある。シェリーの酒精強化用蒸留酒の材料として知られる。

・ヴェルデホ(Verdejo)

主にD.O.ルエダ(Rueda)で栽培。スペインの白ワインの代表的品種。爽やかな香りと果実味が特徴。

・アルバリーニョ(Albariño)

ガリシア原産という説と、サンティアゴ・デ・コンポステーラ(Santiago de Compostela)へ向かうライン川(Rhein)地方から来た修道士によって持ち込まれたとする説がある。辛口高級白ワインの材料として知られる。豊潤な香りと強い酸味が特徴。

・ゴテーリョ(Godello)

ガリシア州とカスティーリャ・イ・リオン州の境のシル川(Sil)源流が原産地。乾燥した土壌に適している。繊細なフローラルの香りと複雑な風味と味わいが特徴。

・マカベオ(Macabeo

ラ・リオハ州とカタルーニャ州(Cataluña)で広く栽培。カヴァ(Cava)の主要品種として知られる。爽やかな香りと果実味を持つ。樽熟成によって個性的で芳香の良いワインになる。


スペインを代表するワイン産地

スペインはそのほぼ全土でぶどうを栽培し、各地に独自の個性を持つワイン産地があります。その中でもスペインを代表する産地を厳選してご紹介します。


  • リオハ
  • 古代ローマ時代からワイン造りが行われていたとされるスペイン最高の銘醸地です。1991年にはスペインで初めてとなる、最高位の格付けのD.O.Ca.に認定されています。テンプラニーリョによる赤ワインのほか、白とロゼ、スパークリングも造られています。


  • ルエダ
  • 白ワインの代表産地で、1980年にヴェルデホ50%を使用した白ワイン、2008年には赤とロゼがD.O.認定を受けました。


  • カタルーニャ地方
  • D.O.Ca.とDOに認定された多くの産地が点在しています。赤も白も多くのワインを産出し、カヴァの95%がカタルーニャ州のペネデス(Penedès)で醸造されています。


  • カスティーリャ・ラ・マンチャ
  • スペイン最大のぶどう産地で、世界で最も多くのぶどうが栽培されている地方でもあります。D.O.は8つ存在し、最も有名なラマンチャD.O.では白ワインを中心に、さまざまな種類のワインを生産しています。


  • ガリシア
  • 年間通して温かい海洋性気候で雨が多く、水はけの多い銘醸地として知られています。特に有名なD.O.はリアス式海岸に面したリアス・バイシャス(Rías Baixas)で、アルバニーリョによる「海のワイン」で知られています。


  • アンダルシア
  • スペイン最南部の州で、シェリーの名産地として知られています。また、有機栽培に取り組んでいる農家が多いことでも知られています。


    まとめ

    ひとくちにスペインワインと言っても、さまざまな優れたワインがあることがわかっていただけたかと思います。ぜひ、いろいろと試して、その魅力にはまっていただけたらと思います!

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