アフタヌーンティーを楽しむ「ヌン活」はコロナ禍をきっかけに人気となり、2022年には流行語大賞」にノミネートにもされるなど、注目を集めました。華やかで美味しそうな食べ物が並び、優雅なカップで紅茶を楽しめるアフタヌーンティーではまるで貴族になったかのような贅沢感や非日常感が味わえます。また、インスタなどの投稿で「いいね」がつきやすいことでも人気を博しているようです。
今回はアフタヌーンティーについて、その歴史や定番のスイーツについて解説し、ペアリングにおすすめのスペインワインもあわせて紹介します。
アフタヌーンティーとは?
アフタヌーンティーは1840年頃、ビクトリア時代のイギリスの社交界で始まったとされる習慣です。
当時のイギリスの食事は、10時頃の、イングリッシュ・ブレックファーストと呼ばれる朝食と20時頃の夕食の1日2回でした。しかし、第7代ベッドフォード公爵フランシス・ラッセル夫人、アンナ・マリア・ラッセル(Anna Maria Russell, Duchess of Bedford)が空腹と、当時の貴族の女性がつけていたきついコルセットに耐えかね、16時頃にベッドルームで紅茶とパンでひとり、お茶会を楽しむようになったのです。そのうち、そのお茶会に友人を招くようになり、社交の場へと発展しました。そして、公爵夫人のお茶会はアフタヌーンティーと呼ばれるようになったのです。
その後、ビクトリア時代の後期にはロンドンの「ブラウンズ・ホテル(Brown’s Hotel)」がアフタヌーンティーを提供するようになり、公爵夫人から噂を聞きつけたヴィクトリア女王も度々訪れたそうです。
20世紀になると現在の日本でも主流となっている、3段の皿が連なる、ケーキスタンドを並べたアフタヌーンティーの形式が誕生します。ケーキスタンドは上からデザート、焼き菓子、サンドイッチがそれぞれの段に載せられていて、下段のサンドイッチから順番に頂いていきます。ちなみに、伝統的なアフタヌーンティーのサンドイッチの具はきゅうりのみでした。
アフタヌーンティーにおすすめの洋菓子とワインの紹介
スコーン
スコーンはイギリスの伝統的な焼き菓子で、アフタヌーンティーを代表するような焼き菓子です。膨らんだスコーンを上下ふたつに手で割り、ジャムとクロテッドクリーム(Clotted cream)を塗っていただくのが定番です。ジャムは通常いちごジャムですが、マーマレードや蜂蜜などが使われることもあります。ちなみに、クロテッドクリームはたっぷりとつけて食べるのが定番です。イギリスではクリームティーという習慣があります。クリームティーはフルコースのアフタヌーンティーから紅茶とスコーンだけを抜き出したアラカルトスタイルを指します。
クロテッドクリーム
クロテッドクリームはバターと生クリームの中間のようなクリームで、脂肪分の多い牛乳を煮詰め、凝固した乳脂肪分を集めて作られます。たっぷりとクロテッドクリームをつけると、パサつきがちなスコーンもしっとりと美味しくいただけます。
ヴィクトリア・サンドイッチケーキ
ヴィクトリア・サンドイッチケーキはおよそ150年前に、ヴィクトリア女王の時代に生まれたアフターヌーンティには定番のケーキです。
ヴィクトリア・サンドイッチケーキが生まれたきっかけとなった出来事は、1861年にヴィクトリア女王の夫であるアルバート公が死去したことです。ヴィクトリア女王は塞ぎ込んでしまいましたが、女王を元気づけるため、ティーパーティーが頻繁に開かれたのです。その際、女王のために作られたケーキが後にヴィクトリア・サンドイッチケーキと名付けられたのです。
ヴィクトリア・サンドイッチケーキはバタースポンジ生地にジャムを挟んだシンプルなお菓子です。しかし、シンプルだからこそ紅茶の美味しさに良く合い、クセになってしまう味なのです。
ヴィクトリア・サンドイッチケーキのレシピとスペインワインの紹介
ヴィクトリア・サンドイッチケーキのレシピ
材料
- 無塩バター・・・100g
- グラニュー糖・・・100g
- 全卵・・・2個
- 薄力粉・・・100g
- ベーキングパウダー・・・4g
- バニラオイル・・・適量
- 粉糖(仕上げ用)・・・適量
*いちごジャム
- 小粒いちご・・・300g
- グラニュー糖・・・150g
- レモン汁・・・大さじ1
作り方
- ケーキ型(丸型直径15㎝)にクッキングシートを敷いておきます。無塩バターは室温に戻しておきます。薄力粉とベーキングパウダーは合わせてふるっておきます。
- ボウルに無塩バターを入れ、ゴムベラを使って滑らかにし、グラニュー糖を加え、泡立て器でよくすり混ぜます。
- しっかりと溶きほぐした卵を2に少しずつ加え、良く混ぜ合わせます。
- 3にバニラオイルを2~3滴加えます。
- 4にふるった粉類を加え、ゴムベラで粉気がなくなるまで、切るように混ぜ合わせます。
- 用意したケーキ型に生地を入れ、表面をゴムベラなどで平らにならします。
- 170℃に予熱したオーブンで40分ほど焼きます。竹串を真ん中にさして、生地がついてこなければ焼き上がり。
- 7を型から外し、ケーキクーラーにのせて冷まします。生地が冷めたら横半分に切り、切った面にジャムをたっぷりとまんべんなく塗ります。その上にもうひとつの生地を重ね、上に粉糖をふるって完成です。
*自家製いちごジャム
- いちごのへたをとり、水でよく洗い、ザルに上げて水気をしっかり拭き取ります。
- 鍋にいちごを入れ、グラニュー糖とレモン汁を加え、いちご全体に混ざるようにしっかりまぶしてからそのまま1時間位置いておきます。
- いちごから水が出てきたら、鍋を強めの中火にかけ、木べらでいちごをつぶすようにしながら沸騰させます。木べらで叩くようにしていちごをつぶすと種の中のペクチンを潰して出すことになるため早くとろみがつき、色が鮮やかに仕上がります。
- アクが出てきたらすくい取り、とろみがつくまで30分くらい煮詰めて完成。
ヴィクトリア・サンドイッチケーキとのペアリングにおすすめのスペインワイン
1822 ペドロ・ヒメネス(1822 Pedro Ximénez)
苦味と甘さが魅力の上質な甘口シェリー(Sherry)。ペドロ・ヒメネスとはペドロ・ヒメネス種を天日干しにし糖度を高めることにより、造られる天然の極甘口シェリーです。
色合いは濃い琥珀色。プルーンやイチジクなどの凝縮されたドライフルーツのようなアロマに加え、黒糖や黒蜜を連想させる濃厚で甘やかなうっとりするようなニュアンスがあります。滑らかな口当たりで、最初のひと口も柔らかく、苦味とコクを兼ね備えた上質な甘さが魅力のシェリーです。余韻は十分に長く楽しめます。
ヴィクトリア・サンドイッチケーキ以外にペアリングにおすすめなのは紅茶のシフォンケーキ、ビターチョコレート、ドライフルーツ、ブルーチーズ、ブルーチーズとブルーベリージャムのカナッペなど。
造り手のアルグエソ社(Herederos de Argüeso)はスペインの南、アンダルシア地方、サンルーカル・デ・バラメダにあります。スペイン北部のアリハ(Arija)から来たファン・レオンデ・アルグエソ(León de Argüeso y Argüeso)が1822年に設立した家族経営のボデガです。 ファン・レオンは最初小さな食料品店を開き、その後ワイン醸造会社を設立するために、古いソレーラと推定樹齢250年以上のぶどうの樹を持つワイナリーを入手しました。アルグエソ社では創業以来約200年もの間、修理、修復を重ね使い続けている樽をシェリーの熟成に使っています。
まとめ
アフタヌーンティーについて、その歴史や定番のスイーツについて解説し、ペアリングにおすすめのスペインワインもあわせて紹介しました。
アフターヌーンティは紅茶を楽しむものというイメージが強いかと思いますが、ワインと一緒に軽食を楽しむのもおすすめです。ぜひ、お試しください。