スペインワインの熟成タイプの定義について解説します スペインワインの熟成タイプの定義について解説します

スペインワインの熟成タイプの定義について解説します

ワインを選ぶ際には産地や生産者、原材料のぶどう品種やヴィンテージなどの他に、熟成のタイプがどのようなものなのかを知ることが非常に参考になります。

一般的にワインは熟成期間が長いと複雑で深い香りや味わいになる傾向があると言われ、赤ワインであれば渋さに丸みが出て舌触りがまろやかになるとされています。また、熟成が樽の中で行われるのか、瓶の中で行われるのかによってもワインの香りや味わいには違いが出てきます。

今回はワインの香りや味わいを知る上で重要な熟成タイプの、スペインワインにおける定義について解説します。

スペインワインの規制の歴史

ヨーロッパ大陸の南端にあり、ピレネー(Los Pirineos) やカンタブリア( Cordillera Cantábrica)、シエラ・ネバダ(Sierra Nevada)など多くの山脈とその間に広がる平原と大河を抱いた広大な国、スペイン。海洋性気候で比較的降水量の多い北部、地中海性気候で乾燥した東部、降水量の少ない大陸性気候の南部と、全体的に温暖な気候に恵まれ、国土のほぼ全域でぶどう栽培が行われ、栽培面積は世界一を誇り、ワインの生産量は世界第3位となっています。

赤ワイン用品種のテンプラニーリョ(Tempranillo)やガルナッチャ(Garnacha)、白ワイン用品種のアルバリーリョ(Alvarinho)やアイレン(Airén)、カヴァに用いられるマカベオ(Macabeo)、シェリーに用いられるパロミノ(Palomino)などスペイン固有のぶどう品種は数多く、スペイン全土で140種類以上のぶどう品種が栽培されています。

石灰質や粘土質の土壌が多く、ぶどう栽培の適地であるスペインのワイン造りの黎明は紀元前1,100年ごろと言われ、スペインには3,000年以上ものワイン醸造の歴史があります。16世紀から18世紀にかけては現在にまで続くワイン産地としての骨組みが確立されました。その後スペインワインは19世紀にイギリス国内で人気を獲得し、広く世界で楽しまれるようになりました。

しかし、スペインのぶどう農家は長年、自家生産していたワインを貿易業者に安く買い叩かれるという憂き目にあっていました。その状況を打破するべく、1902年にリオハ(Rioja)産ワインの原産地を定める王令が制定され、1926年にはリオハに原産地呼称委員会が設立。また、ヘレス(Jerez)やマラガ(Málaga)にも原産地呼称統制委員会が設立されました。

そして、フランスワインに原産地呼称制度、AOC(Appellation d'Origine Contrôlée、アペラシオン・ドリジーヌ・コントローレ)が導入された1935年よりも3年早い1932年のことです。スペイン第二共和制期にワイン法が確立、DO(Denominación de Origen、デノミナシオン・へリオン。原産地呼称制度)が導入されました。

1970年代にワイン法が改定され、「ぶどう畑、ワインおよびアルコールに関する法令」が施行されるとともに、スペイン国立原産地呼称庁(INDO、後の品質呼称局)が設立され、原産地呼称認定ワインの品質管理制度が強化されました。INDOは各地域のぶどうの栽培面積、地域の境界限定、栽培品種、植樹密度、収穫量、灌漑規制、ワインの収量、醸造法、アルコール度数や総亜硫酸量などを定め、既存のDO認定地域の管理を強化しています。

スペインワインの格付けと熟成タイプ

ここからはINDOによるスペイン産ワインのおおまかな格付けや熟成タイプについて説明します。

格付け

  • DO

原産地呼称(デノミナシオン・へリオン、Denominación de Origen)。高級スペイン産ワインの主流区分で、認定されてから10年以上経過するとDOCaへの昇格が申請可能です。

  • DOCa

特産原産地呼称(デノミナシオン・デ・オリオヘン・カリフィカーダ、Denominación de Origen Calificada)。DOの中で特に優れた地域の認定区分です。

  • VCIG

地域名称付き(ビノ・デ・カリダ・コン・インディカシオン・ヘオグラフィカ、Vino de Calidad con lndicación Geográfica)。VCIGに認定されて5年以上が経つとDOに昇格する可能性があります。

  • VdIT

Vino de la Tierra(ビノ・デ・ラ・ティエラ)の略で、地方ワインやカントリーワインという位置付けです。

  • ビニェードス・デ・エスパーニャ

Viñedos de Españaとは2006年に安価な輸入ワインと区別するために設けられた新たな区分です。異なる11地域のワインをブレンドすることを許されています。

  • ビノ・デ・メサ

Vino de Mesaとはいわゆるテーブルワインのことです。DO認定されていないぶどう畑で生産された原料を使ったワインや醸造所が地域外にある場合、また、異なる地方のワインをブレンドして造られるワインなどを指します。

熟成期間

DOとDOCa、VCIGとVDITおよびビニェードス・デ・エスパーニャの地理的表示付きワインや一部地域とで分類の区分が異なります。

DOとDOCa

  • グラン・レセルバ(Gran Reserva)

グラン・レセルバは一般的にはスペインの長期熟成させたワインのことになります。

赤ワイン

赤ワインに関してはぶどうが優良な年のみ造られるとされています。最低60ヶ月以上、そのうち18ヶ月以上はオーク樽で熟成させる必要があります。

白ワイン・ロゼワイン

最低48ヶ月以上、そのうち6ヶ月以上は330リットル以下のオーク樽で熟成させる必要があります。

カヴァ

最低30ヶ月以上熟成させる必要があります。

  • レセルバ(Reserva)

一般的には樽で寝かせる熟成期間を一定期間設けたワインのことになります。国によってはレセルバを名乗るための規定がない国もありますが、INDOでの規定は以下のようになります。

赤ワイン

最低36ヶ月以上、そのうち12ヶ月以上を330リットル以下のオーク樽で熟成させたワインに与えられる区分です。

白ワイン・ロゼワイン

最低24ヶ月以上、そのうち6ヶ月以上は330リットル以下のオーク樽で熟成させたワインに与えられる区分です。

カヴァ

最低15ヶ月以上熟成させたワインに与えられる区分です。

  • クリアンサ(Crianza)

熟成させたスペインワインに記載される表現のひとつで、規定は以下の通りになります。


赤ワイン

最低24ヶ月以上、そのうち6ヶ月以上を330リットル以下のオーク樽で熟成させたワインに与えられる区分です。

白ワイン・ロゼワイン

最低18ヶ月以上、そのうち6ヶ月以上を330リットル以下のオーク樽で熟成させたワインに与えられる区分です。

(カヴァにはクリアンサの規定は設けられていません)

  • ビノ・ホーベン(Vino Joven)

醸造されてからすぐ瓶詰めされる、もしくは樽内での熟成がクリアンサの基準まで達しない若飲みタイプのワイン。シン・クリアンサ(Sin Crianza)とも呼ばれます。

地理的表示付きワインおよび一部地域

  • ビエホ(Viejo)

600リットル以下のオーク樽もしくは瓶で36ヶ月以上熟成され、光、熱、酸素の作用による酸化熟成が著しく認められたワインに与えられる区分です。

  • アニェホ(Añejo)

600リットル以下のオーク樽もしくは瓶で24ヶ月以上熟成されたワインに与えられる区分です。酒精強化ワインのマラガ(Málaga)に関しては36〜60ヶ月熟成されたワインに与えられます。

  • ノーブレ(Noble)

600リットル以下のオーク樽もしくは瓶で18ヶ月以上熟成されたワインに与えられる区分です。マラガに関しては24〜36ヶ月熟成されたワインに与えられます。

スペインワインの近年の傾向

近年、リオハなどのDOやDOCaの認定地域では、熟成期間の長いグラン・レセルバよりもよりフレッシュで、ぶどう本来の果実味や骨組みが感じられるレセルバやクリアランサを重視する生産者が増加していると言われています。伝統と革新の共存によって生まれる新たなスペインワインのスタイルは世界中のワイン愛好家をさらに魅了しています。

まとめ

スコルニワイン 赤ワイン スペイン

スペインワインの熟成タイプの定義について解説しました。

日本の国土の約1.4倍の広さのあるスペインは地域によってバラエティ豊かな地形と風土があり、地域ごとにそれぞれ魅力的なワインが数多くさまざまにあります。スペインにおけるワインの熟成タイプの定義を知ると、スペインワインの持つバラエティ豊かな面白みや魅力をより感じていただけるはずです。ぜひこの記事を参考に、熟成のタイプで変わるスペインワインの多彩な表情を楽しむきっかけにしていただけたらと思います。

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