ワイン選びがもっと楽しくなる・白ワインの醸造方法を解説 ワイン選びがもっと楽しくなる・白ワインの醸造方法を解説

ワイン選びがもっと楽しくなる・白ワインの醸造方法を解説

ワインについて知識を深める上でその醸造方法を知ることはとても大切です。今回は白ワインの醸造方法を工程ごとに順を追って説明していきます。

白ワインの醸造法

白ワインの原料

赤ワインが黒ぶどうを使って造られるのに対し、白ワインは白ぶどうと呼ばれる品種のぶどうを使って造られます。白ぶどうで代表的な品種に、シャルドネ(Chardonnay)、リースリング(Riesling)、ソーヴィニヨン・ブラン(Sauvignon blanc)などがあり、スペインではアルバリーニョ(Albariño)、ベルデホ(Veldejo)、マカベオ(Macabeo)もしくはビウラ(Viura)、モスカテル(Moscatel)、パロミノ(Palomino)などの品種があります。

ただし、白ワインでも黒ぶどうを使うものもあります。その代表的な例がシャンパーニュ(Champagne)、およびカヴァ(Cava)です。シャンパーニュではピノ・ノワール(Pinot noir)、ムニエ(Pinot Meunier)の2種の黒ぶどう、カヴァではガルナッチャ(Garnacha)やモナストレル(Monastrell)、トレパ(Trepat)、ピノ・ノワールの4種の黒ぶどうの使用が認められています。

赤ワインは果皮や種子も一緒にアルコール発酵させるため、果皮由来の赤い色をしています。いっぽう、白ワインは果汁のみを抽出し、果汁だけを発酵させるため、あのような透き通った色をしているのです。白ワインは白ぶどうを使っているから白に近い色をしているわけではないのです。

収穫

ヴァンダンジュ(Vendange)

スコルニワイン 白ワイン

白ぶどうの収穫は早いものだと8月から始まります。収穫するぶどうの成熟具合は出来上がりのワインをどのようなものにするかで決めます。


伝統的に収穫は手摘みで行いますが、現在はぶどう収穫機で行う例が増えています。


選果

トリアージュ・デ・レザン(Triage des raisins)

収穫したぶどうから、未熟なものや腐敗しているものを取り除きます。


ただ、生産者によっては白ワインの場合は赤ワインほどに厳しく選果を行わない生産者もあるようです。貴腐菌とも呼ばれるボトリティス・シネリア(Botrytis cinerea)が多少ぶどうについていたとしてもすぐに圧搾するために大きなダメージにならない、というのが理由なのだとか。また、ボトリティス・シネリアが少量入った方が独特の味わいや豊かな風味が出ると考え、むしろ歓迎する生産者もいるのです。いっぽう、よりクリーンで純粋な味わいのワインを作りたい生産者は選果を厳格に行います。


除梗・破砕

エグラパージュ(Égrappage)・フーラージュ(Foulage)

ワインの風味を妨げないようにぶどうの房の果梗(枝の部分)を取り除きます。赤ワインでは種類によっては果梗も果汁とともに発酵させることはありますが、白ワインを造る際には必ずと言っていいほど除梗は行います。水分が成分を薄めてしまううえ、果梗のタンニンが白ワインにとって望ましくないのです。なお、機械摘みで収穫を行う場合、粒だけを振るい落として収穫するため除梗する必要がありません。


破砕とは、果汁を絞りやすいように果粒をつぶし、果醪(かもろみ/ムスト、Must)の状態にすることを意味します。


圧搾・沈殿

プレシュラージュ(Pressurage)・デブルバージュ(Debourbage)

果醪を圧搾機にかけて皮や種子を取り除き、果汁を絞り出します。現在、大半の醸造所で空気圧搾機を使用し、ゆっくりと時間をかけ、種が潰れない程度の低圧で優しく圧搾する方法をとっています。


通常の白ワインでは赤ワインで行うマセラシオン (Macération、皮を果汁に漬け込んで浸透させること)はしませんが、ぶどうの状態が良ければ行う場合があります。その場合は発酵の開始を遅らせるために温度管理を行い、果汁の酸化防止のために亜硫酸塩を添加する必要があります。マセラシオンを行った白ワインはスキンコンタクトワイン( Skin-contact wine)、もしくはオレンジワイン(Orange wine)などと呼ばれます。


圧搾して絞り出した果汁を発酵させないように低温に管理しながら静かに数時間程度おき、果皮、果肉の破片などの不純物を沈殿させ、上澄みの果汁だけを別のタンクや木桶に移します。


有機栽培や循環型農業であるバイオダイナミック農法などで育てられたぶどうを原料にしている場合は澱となる成分を取り除かずに果汁に残すことがあります。これらの農法で育てたぶどうの澱は酵母に害のある化学物質を含まず、酵母に栄養を与え、発酵に良い影響を与えるからです。


主発酵

フェルマンタシオン・アルコリック(Fermentation Alcoolique)

木桶、またはタンクに入れたぶどう果汁がぶどうに付着している野生酵母によって発酵が自然に始まるのを待つか、安定した発酵を行うために乾燥酵母を加えて発酵させます。


主発酵が始まると果汁中の糖類が酵母によって代謝され、アルコールと二酸化炭素に分解されます。通常、白ワインは15℃〜20℃ほどの低温発酵で香りを逃さないように発酵させます。場合によっては25℃を超えて発酵させることもあるようです。発酵の期間は早くて2週間程度、自然発酵させる場合や果汁の糖度が高い場合は数ヶ月かかることがあります。


辛口の白ワインは糖類がなくなるまで発酵を続けます。発酵を途中で人為的に止めるなどすると甘口、中辛口のワインとなります。


補糖されることがありますが、地域や収穫年によって規制があります。補糖はワインの糖度を上げるためではなく、あくまでもアルコール度数を高めるために行うものです。


発酵に使われる容器は、樽を使うと酸素を通すためワインが柔らかくなり、ステンレスタンクを使うと空気を通さないため環境からの影響を受けにくく、よりクリアでクリーンな味わいになる傾向があります。


マロラクティック発酵(MLF、Malo-lactic fermentation)

白ワインでもマロラクティック発酵を行うことがあります。マロラクティック(マロ=リンゴ酸、ラクティック=乳酸)発酵とは、ぶどうに含まれるリンゴ酸が乳酸菌の働きで乳酸と炭酸ガスに分解される発酵のことです。乳酸菌の働きにより、リンゴ酸を乳酸に変え、鋭い酸味をヨーグルトのようなまろやかで深みのある酸味に変えるのです。


白ワインでは酸味が味わいの重要な要素となるため、酸味をそのまま活かしたい場合にはマロラクティック発酵は行いません。


熟成

エルヴァージュ(Élevage)

スコルニワイン 白ワイン

樽でワインを熟成する間にタンクや樽の底にたまった澱を棒で攪拌(バトナージュ、Bâtonnage)して酵母と触れさせ、酵母中のアミノ酸などのうま味成分をワインに移す作業を行います。この工程では酵母由来の酵素の活性作用で味が減少してしまう可能性があるため、厳密な管理が必要です。


近年の傾向ではワインにフレッシュさを残すため、バトナージュの回数を減らす、もしくは行わない生産者が増えています。


澱引き

スーティラージュ(Soutirage)

ワインの熟成中にワインの酒石などの混合物が澱(Lie)となり、沈殿します。その上澄みを別の容器に移し替える澱引きを11月〜翌年の1月にかけて行い、その後数回繰り返します。この作業はタンパク質を安定させ、ワインをクリアにする効果があります。


近年では翌年の春まで澱引きを全く行わずに放置する、シュール・リー(Sur lie)という方法を取る場合があります。surはフランス語で上、lieは澱を意味します。ワインを澱の上で醸造することにより、発酵を終えた酵母がワインと触れている時間を長く取ります。すると多糖類やアミノ酸などのうま味成分が抽出され、ワインに香りやコクが加わるのです。


清澄・濾過

コラージュ(Collage)・フィルトラージュ(Filtrage)

ワインを透明にするため必要に応じて清澄剤を使用します。清澄剤には卵白、タンニン酸、ゼラチン、アイシングラス(魚の浮き袋から抽出されたゼラチン)、牛乳に含まれるカゼイン、ベントナイト(粘土鉱物)シリカゲル、活性炭などが使われます。


清澄にはワインを透明にする他、ワインに含まれるタンニンやフェノール類の量を減らしてワインの触感を柔らかくする効果もあります。


清澄したワインは瓶詰めされる前に濾過器などを使って濾過されます。濾過されずに瓶詰めされることもありますが、赤ワインに比べてよりクリアな色調が求められる白ワインでは清澄はほとんどの場合行われます。


安定化・瓶詰め

スタビリザシオン(Stabilization)・アンブティヤージュ(Embouteillage)

スコルニワイン 白ワイン

白ワインでは酒石などが沈殿するのを防ぐため、瓶詰めの前に冷却装置を使ってワインを安定化する場合があります。ただ、天然の低温セラーで熟成されたものに関しては安定させる必要はありません。


安定化の方法には冷却の他にもメタ酒石酸の添加、電気透析などの方法があります。


最後にワインを瓶詰めします。長時間熟成させる場合には瓶詰めの後にすぐにはラベルを貼らず、瓶の中で熟成させます。


まとめ

スコルニワイン 白ワイン

白ワインの醸造方法を工程ごとに順を追って説明しました。みなさまのワイン選びの参考にして頂けたらと思います。

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