ワインに果物やスパイスで味付けする飲み物はスペインワインであればサングリアが良く知られていますが、寒い季節にはワインを温めて作るホットワインがおすすめです。
今回はワインを温めて作るホットワインや、シェリーを使う温かいカクテルなどの作り方を紹介します。
ホットワインとは
ホットワインはワインにスパイスや果物、砂糖などを入れ、温かくした飲み物です。ヨーロッパでは古くから親しまれ、ドイツではグリューワイン( Glühwein)、フランスではヴァン・ショー(Vin chaud)、北欧諸国ではグロッグもしくはグレッグ(Gløgg)英語ではマルドワイン(Mulled wine)と呼ばれます。
赤ワインから作られるものが大半ですが、アルザス(Alsace)などの白ワインの産地では白ワインに砂糖やレモンの薄切りなどを加えるヴァン・ショー・ブラン(vin chaud blanc)が作られています。また、近年ではロゼワインで作るホットワインも世界的に人気が出てきています。
ホットワインはドイツ、フランスなどではクリスマスには欠かせない飲み物で、クリスマス前の4週間に各地で開かれるクリスマスマーケットの名物となっています。マーケットによっては持ち帰り可能な陶器製のマグカップで提供しているところもあり、デザインもそれぞれオリジナリティに富んでいてお土産品としても人気です。
ワインを鍋に入れ、火にかけて温めるのが一般的な作り方ですが、カフェではエスプレッソ・マシーンのミルクを温める機能でワインを温めて提供します。ワインを温めることで若干飛んでしまったアルコールを補うため、ラム酒などを足して作ることもあります。
ドイツやオーストリアなどでは大晦日にラム酒を使ったホットワイン、フォイヤーツァンゲンボウレ(Feuerzangenbowle)を飲む習慣があります。フォイヤーツァンゲンボウレの作り方は少し独特です。鍋に赤ワイン、果物、スパイスを入れ温め、鍋に台を乗せ、その上にコーン型の砂糖のかたまりを乗せます。砂糖にラム酒を染み込ませ、火をつけると砂糖が溶け出し、下のワインに落ちたら出来上がり。焦げた砂糖がキャラメル状になり、グリューワインよりもさらにコクの深い味わいが楽しめます。寒い冬の夜に砂糖が青い光とともに燃える様子が幻想的で、年末を彩る風物詩の1つになっています。
ホットワインやシェリーを使った温かいカクテルの作り方
ここからは赤、白、ロゼワインを使ったホットワインの作り方と、ワインを使った温かいカクテルの作り方を紹介します。
グリューワイン
味付けをするのでワインはお求めやすいもので十分ですがドイツのレシピでは軽めでドライなピノ・ノワール(Pinot noir)などがおすすめとされています。ワインの甘さに合わせて砂糖やはちみつの量を調節して下さい。果物はできればオーガニックのものを選び、皮ごと使うのがおすすめです。砂糖のかわりに黒糖やジャムで作っても良いですし、生姜を入れても良いでしょう。
【材料】
- 赤ワイン・・・1本(750ml)
- オレンジ・・・1個
- りんご・・・1個
- シナモンスティック・・・1本
- クローブ・・・3粒
- スターアニス・・・1,2粒(無しでも可)
- 砂糖もしくははちみつ・・・大さじ3ほど
【作り方】
- オレンジは輪切り、りんごはイチョウ切りにします。
- ワインと砂糖もしくははちみつ、スパイス類を鍋に入れ、弱火にかけます。
- 人肌程度になるまで温めたらオレンジとりんごを入れひと混ぜして少し温め、火を止めます。お好みでラム酒や甘味を足して下さい。
ヴァン・ショー・ブラン
甘口の白ワインで作る、甘くフルーティなホットワインです。スパイスも控えめで飲みやすく、体も心も温めてくれます。
【材料】
- 白ワイン(甘口)・・・1本(750ml)
- 水・・・150ml
- 砂糖・・・80g
- オレンジ・・・1/3個
- レモン・・・1/3個
- スターアニス・・・1粒
- クローブ・・・1粒
- シナモンスティック・・・1本
- ナツメグ・・・お好みで適量
【作り方】
- オレンジとレモンは皮をむき、薄切りにします。
- 鍋にワインと水を入れ、1の果物とスパイスを加えます。
- 弱火にかけ、沸騰しないように気をつけて10分ほど温めます。
- 砂糖を入れ、さらに5分ほど火にかけてできあがり。
ロゼワインのホットワイン
色味のきれいなロゼワインにいちごを入れたホットワインは見た目もかわいらしく仕上がります。ロゼワインのホットワインはスパイスを控えめにし、よりジューシーでフルーティに仕上げるのがポイントです。
【材料】
- ロゼワイン(辛口)・・・1本(750ml)
- はちみつ・・・50g
- レモン・・・薄切り5枚
- りんご・・・くし切りスライス10枚
- スターアニス・・・4、5粒
- いちご・・・スライス5個分
【作り方】
- いちご以外の材料を全て鍋に入れ火にかけ、表面がふつふつと沸騰する直前まで温め、火を止めます。
- 耐熱グラスなどに移し、いちごを入れて出来上がり。
ホット・シェリー
スペインワインの中では少し異色の存在のシェリー(Sherry)。シェリーも温めることで味わいが変わり、体を温めてくれ、冷やした時とまた違った楽しみ方ができます。
ここではモスカテル(Moscatel)など、甘口のシェリーを温め、シナモンやレモンピールの香りを効かせたカクテルのレシピを紹介しますが、オロロソ(Orroroso)などの辛口で作るのもおすすめです。砂糖はシェリーの甘さやお好みに合わせて調節して下さい。
【材料】
- シェリー(甘口)・・・60ml
- レモンジュース・・・10ml
- 水・・・40ml
- パームシュガー・・・10ml
- シナモンスティック・・・1本
- レモンの皮(ツイスト状)・・・適量
【作り方】
- マティーニグラスなどのグラスを温めます。
- レモンの皮以外の全ての材料を沸騰させないように温め、良く混ぜます。
- 2を温めたグラスに注ぎます。
- レモンの皮を添えて出来上がり。
ワッセル
ワッセル(Wassail)はシェリーやシードル 、焼きりんごなどを使ったちょっと贅沢な温かいカクテルです。イングランドの習慣に起源を持つとされていますが、スペインワインのシェリーで作っても非常に魅力ある飲み物になるはずです。
イングランドには古くから、大勢でテーブルを囲み、隣の人に挨拶のキスをしながら1つのグラスを回しのみする習慣があります。そのような時に唱えるのが「ワッセル(健康に)!」という挨拶でした。
また、クリスマスの時期に「ワッセルボウル(Wassail bowl)」と呼ばれる大きな盃をもって家々を訪ね、温かいお酒を注いでもらう中世イングランドの習慣がワッセルの起源だとする説もあります。ワッセルボウルの習慣がアメリカ大陸に伝わり、エッグノック(Eggnock)などの温かいカクテルとともにこのワッセルも生まれた、と言われています。
ここではシェリーを使うレシピを紹介しますが、ワインを使っても良いですし、エールを使わずにシードルやサイダーなどで補っても良いでしょう。卵を飲み物に入れるのに抵抗がある場合は省いても構いませんが卵のまろやかさは一度慣れるとクセになります。
【材料】
- りんご(「ふじ」など、歯応えの良い甘い品種)・・・5、6個
- 黒砂糖・・・カップ1
- シードル(甘さ控えめ)・・・カップ4
- エールビール・・・カップ3
- シェリー(オロロソがおすすめ)・・・カップ2
- シナモンスティック・・・1本
- ナツメグ(挽いたもの)・・・小さじ1
- 生姜(すりおろし)・・・小さじ1
- クローブ・・・2粒
- オールスパイス・・・4粒(なければナツメグやクローブを増やして代用可)
- 卵・・・6個(お好みで)
- 飾り・・・りんごの薄切り(適量)とシナモンスティック(人数分)
【作り方】
- オーブンを180度に余熱します。
- まず、焼きりんごを作ります。りんごは芯をくり抜いて耐熱皿に置き、黒砂糖をスプーンですくって芯の部分に入れます。耐熱皿の底に5mmくらいの水(分量外)を入れ、オーブンで45分ほど焼きます。りんごから出た汁はそのまま取っておきます。
- 大きめの鍋にシードル 、エール、シェリー酒を入れ、沸騰させないように弱火で火にかけます。
- お茶用パックにシナモンスティックとクローブ、オールスパイスを入れ、鍋に入れます。生姜とナツメグも入れます。
- 卵を入れる場合は次の手順へ。入れない場合は11まで進んで下さい。
- 卵黄と卵白を別々のボウルに入れます。
- 卵黄を泡立て器で泡だてます。卵白もツノがたつまで泡だてます。
- 卵白を卵黄に入れて混ぜます。
- 卵にカップ1/2の3を、全体を泡だてながらゆっくりと注ぎます。
- 9を鍋に戻します。
- りんごと汁を鍋に入れます。
- グラスに分け、薄切りのりんごとシナモンスティックを添えて出来上がり。
ノンアルコール・ホットワイン風ドリンク
アルコールが飲めない方やお子さま向けにノンアルコールのホットワイン風ドリンクのレシピを紹介します。ワインを沸騰させればほとんどアルコールは飛びますが、完全にはなくなりません。グレープジュースを温めて作るこのドリンクもワインで作るのと遜色ない美味しさを再現できます。
【材料】
- グレープジュース・・・400ml
- 砂糖・・・小さじ2
- みかん(輪切り)・・・1個
- りんご・・・1/4個
- シナモンスティック・・・1本
- スターアニス・・・1粒
- クローブ・・・5粒
- カルダモン・・・1粒
【作り方】
- りんごを一口大に切り、砂糖以外の材料を全て鍋に入れ、中火にかけ、沸騰したら弱火にして15分ほどコトコト煮込みます。
- 味見をして砂糖で味を調節したら出来上がり。
まとめ
ワインを温めて作るホットワインや、シェリーを使う温かいカクテルなどの作り方を紹介しました。
スペインワインやシェリーでホットワインや温かいカクテルを作り、心も体も温かくしてこの冬を過ごしてみてはいかがでしょうか?