ソムリエ・ワインエキスパート試験を受験する方なら、ご存じのように二次試験のメインは、テイスティング実技試験です。
これまで筆記の対策はしてきてワインの知識はあるけど、実際のテイスティング表現には自信がないという方も多いのではないでしょうか?はっきり言いますと、二次試験はワインの知識だけでは受かりません。
しかし、二次試験のテイスティングは傾向を知って、対策さえすれば、初心者でも通過することができますのでご安心ください。
本記事では、ソムリエ・エキスパート二次試験を独学で突破するコツやテイステイングコメントのポイントを踏まえた勉強方法についてご紹介します。
ソムリエ・ワインエキスパート二次試験について
ソムリエ・ワインエキスパート試験とは、一般社団法人日本ソムリエ協会が主催する年一回の試験のことで、すべての試験に合格するとJ.S.A.ソムリエ/J.S.A.ワインエキスパート呼称資格に認定され、ソムリやワインエキスパートの象徴となるソムリエバッジをもらうことができます。
ソムリエ・ワインエキスパートの一次試験を突破した受験者だけが、二次試験を受験することができます。二次試験では、ソムリエ・ワインエキスパート試験、ともにブランドワインテイスティングによる実技試験が行われます。この二次試験に合格すると三次試験に進むことができ、ワインエキスパートは二次試験が最終試験となるため、合格すると見事、JSAワインエキスパートに認定されます。
ソムリエ・ワインエキスパート二次試験の概要についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
(ソムリエ二次試験概要の記事リンクを貼ることができればこちらにお願いします)
過去5年間に出題されたワイン
J.S.A.ソムリエ/J.S.A.ワインエキスパート呼称資格認定試験で出題される二次試験のブラインドテイスティングとは、一切の情報を与えられていない状態で、自身の持つ嗅覚と味覚や視覚から、ワインの品種・産地・ヴィンテージ・香り・味わい等を、適切に見極めることができるかを判断するための実技テストです。
これだけを聞くと、ブラインドテイスティングはかなり難しいのでは?と感じてしまう人も多いかもしれませんが、二次試験で出題されるワインの傾向はある程度、決まっています。
ブラインドテイスティングに出題されやすいワインの傾向を把握した上で、二次試験の対策を行っていれば問題なく通過できる試験となっていますのでご安心ください。
二次試験を受験する前には最低でも過去5年間に出題されたワインの生産国・ビンテージ・ぶどう品種とアルコールの銘柄を確認しておくことをおすすめします。
ソムリエ二次試験
ソムリエ二次試験のブラインドテイスティングでは、ワインとその他アルコールで計5種類が出題される傾向にあります。
【ソムリエ二次試験|出題された品種・銘柄】
種類 |
ぶどう品種/銘柄 |
生産国 |
ビンテージ |
|
2021年 |
赤ワイン |
メルロー |
アメリカ |
2017年 |
白ワイン |
シャルドネ |
フランス |
2019年 |
|
白ワイン |
サンジョベーゼ |
イタリア |
2018年 |
|
その他 |
ラム |
|||
その他 |
ヴェルモット |
|||
2020年 |
赤ワイン |
ネッビオーロ |
イタリア |
2017年 |
白ワイン |
シャルドネ |
日本 |
2016年 |
|
白ワイン |
ソーヴィニヨン・ブラン |
フランス |
2018年 |
|
その他 |
ホワイトポート |
|||
その他 |
ウォッカ |
|||
2019年 |
赤ワイン |
カベルネ・ソーヴィニヨン |
アメリカ |
2016年 |
赤ワイン |
テンプラニーリョ |
スペイン |
2014年 |
|
白ワイン |
アリゴテ |
フランス |
2018年 |
|
その他 |
梅酒 |
|||
その他 |
ジン |
|||
2018年 |
赤ワイン |
シラーズ |
オーストラリア |
2016年 |
白ワイン |
トロンテス |
アルゼンチン |
2016年 |
|
白ワイン |
リースリング |
フランス |
2016年 |
|
その他 |
カヴァルドス |
|||
その他 |
マデイラ |
|||
2017年 |
赤ワイン |
カベルネ・ソーヴィニヨン |
オーストラリア |
2014年 |
赤ワイン |
サンジョヴェーゼ |
イタリア |
2014年 |
|
白ワイン |
甲州 |
日本 |
2016年 |
|
その他 |
オー・ド・ヴィー・ド・キルシュ |
|||
その他 |
ドランブイ |
|||
2016年 |
赤ワイン |
シラーズ |
オーストラリア |
2014年 |
白ワイン |
シャルドネ |
フランス |
2014年 |
|
白ワイン |
マスカット・ベリーA |
日本 |
2013年 |
|
その他 |
マデイラ |
|||
その他 |
バ・アルマニャック |
ワインエキスパート二次試験
ワインエキスパート二次試験のブラインドテイスティングでもソムリエ試験と同様に計5種のブラインドテイスティングが出題されますが、その他アルコールは1種類となり、ワインが4種出題される傾向にあります。
【ワインエキスパート二次試験|出題された品種・銘柄】
種類 |
品種/銘柄 |
生産国 |
ビンテージ |
|
2021年 |
赤ワイン |
テンプラニーリョ |
スペイン |
2017年 |
赤ワイン |
カベルネ・ソーヴィニヨン |
チリ |
2018年 |
|
白ワイン |
ヴィオニエ |
フランス |
2019年 |
|
白ワイン |
リースリング |
フランス |
2019年 |
|
その他 |
テキーラ |
|||
2020年 |
赤ワイン |
ピノ・ノワール |
ニュージーランド |
2018年 |
赤ワイン |
カベルネ・フラン |
フランス |
2018年 |
|
白ワイン |
シャルドネ |
フランス |
2018年 |
|
白ワイン |
トロンテス |
アルゼンチン |
2019年 |
|
その他 |
ラム |
|||
2019年 |
赤ワイン |
カベルネ・ソーヴィニヨン |
オーストラリア |
2015年 |
赤ワイン |
サンジョベーゼ |
イタリア |
2015年 |
|
白ワイン |
甲州 |
日本 |
2017年 |
|
白ワイン |
ソーヴィニヨン・ブラン |
ニュージーランド |
2018年 |
|
その他 |
紹興酒 |
|||
2018年 |
赤ワイン |
グルナッシュ |
フランス |
2013年 |
赤ワイン |
メルロ |
日本 |
2014年 |
|
白ワイン |
リースリング |
ドイツ |
2016年 |
|
白ワイン |
シャルドネ |
オーストラリア |
2015年 |
|
その他 |
ベネディクション |
|||
2017年 |
赤ワイン |
マルベック |
アルゼンチン |
2015年 |
赤ワイン |
ガメイ |
フランス |
2014年 |
|
白ワイン |
ミュスカデ |
フランス |
2016年 |
|
白ワイン |
ソーヴィニヨン・ブラン |
チリ |
2015年 |
|
その他 |
サンブーカ |
|||
2016年 |
赤ワイン |
シラーズ |
オーストラリア |
2014年 |
赤ワイン |
テンプラニーリョ |
スペイン |
2013年 |
|
白ワイン |
シャルドネ |
アメリカ |
2013年 |
|
白ワイン |
リースリング |
フランス |
2013年 |
|
その他 |
泡盛 |
ソムリエ・ワインエキスパート二次試験の出題傾向
過去5年間を見てみると一見ランダムのように感じますが、毎年シャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨンといった白赤どちらも、基本ぶどう品種が1種類以上は出題されています。
赤白それぞれ出題ぶどう品種の多い順にまとめましたので、参考にしてください。
【白ワイン】
- シャルドネ
- ソーヴィニヨン・ブラン
- リースリング
- 甲州
【赤ワイン】
- シラー/シラーズ
- ピノ・ノワール
- カベルネ・ソーヴィニヨン
- メルロー
生産国は、フランス、イタリア、スペインといった旧世界から1〜2種類。日本、オーストラリア、チリ、ニュージーランドといったニューワールドから1〜2種類とミックスして出題される傾向にあり、収穫年は出題年の5年以内のワインが出題されています。
ソムリエ・ワインエキスパート二次試験対策3つのポイント
独学一発合格を目指す方におすすめしたいソムリエ・ワインエキスパート二次試験対策のポイントは3つあります。
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それぞれについて解説していきます。
まずは、毎年出題されている基本ぶどう品種のティスティングコメントを覚えることからはじめましょう。
特徴とは、香り・外観・味わい・評価・適正温度・適正なグラスといった試験に出題される内容です。これらの特徴は、日本ソムリエ協会の基準で覚えることが大切ですので、ソムリエ教本のテイスティング部分や過去の二次試験模範解答を参考にしてください。
基本ぶどう品種とは、白であればシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリングの3つ、赤であれば、シラー/シラーズ、ピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨンの3つ。これらの中から毎年1〜3種類が出題されています。
また、これら基本ぶどう品種の特徴を覚えた後に、ヴィオニエ、トロンテス、マルベック、テンプラニーリョなどといった応用編の品種もテイスティングしていくと、基本軸ができているので、シャルドネよりも香りが華やか、といった風に覚えやすくなるのでおすすめです。
実際のソムリエ試験では、大量に準備しなければいけないという観点からも過去に高級ワインは出題されたことはありません。2,000〜4,000円前後の単一品種ものが中心ですので、実際の練習にも同じ単価のものを選びましょう。
また、グラスが変わると味わいも微妙に変わってしまうため、実際の試験と同様にテイスティンググラスで行うことがおすすめです。
テイスティングを練習する際は、頭だけで考えるのではなく、ティスティングシートを用いることが大切です!
オーストラリアのシラーズを例に挙げると、澄んだ輝きのあるガーネットカラー、粘性が強く、成熟度が高い、アタックは強く、余韻は短い、タンニンが力強く、酸味はやさしい。香りには、ブルーベリー、カシス、スミレ、タバコ、カカオにヴァニラも感じる。といった風に、香りや味わい、外観の正しい特徴を実際のテイスティングシートから選択し、頭に記憶していきます。
次回、品種が分からなくても同じような香りを感じた時に正しい表現を選べるようになっていくので、正解を導きやすくなります。ワインをテイスティングする際には、毎回テイスティングシートを使用して評価を行っていくことをおすすめします。ソムリエ試験に出題されているテイスティングシートは「ソムリエ二次試験 模範解答」などで検索すればいくつか出てきますので、そちらをコピーして使用すると良いでしょう。
ブラインドティスティング練習の裏技
ブラインドティスティングに慣れることもしておくことも重要です。ぶどう品種が分かってテイスティングするのと、全く分からない状態でテイスティングするのとでは、感覚が異なります。
とはいえ、一人でブラインドテイスティングの環境を作ることは難しいですし、レストランやワイン業界などに勤めていない限り、毎日テイスティングできないですよね。そこで一つおすすめしたい裏技があります。(かなり個人的な裏技にはなりますので必ず通用するわけではないということを先に言及しておきます。)
ワインバーなどにいるソムリエさんもほぼ間違いなく全員が、この二次試験を通過していて、ブラインドテイスティングを練習してきた経験があります。つまり、ブラインドテイスティングを準備する大変さも分かってくれる方が多いです。
経験上の話になりますが、行きつけのワインバーで「二次試験の対策をしているのでブラインドテイスティングをしてくれませんか?」と言えば、結構な確率でブラインドテイスティングに協力してくれました。もちろん単一品種ではない可能性がありますが、その日あるグラスワインを赤白3〜4種類ほどをテイスティンググラスに入れて出してくれました。何よりもプロのソムリエさんのテイスティングコメントを聞くことができ、大変勉強になりますので、行きつけのワインバーがある場合には挑戦してみるといいかもしれません。
ただ、この方法は、あくまでもソムリエさんとの関係やお店にもよりますので、参考までにお伝えしておきます。
まとめ
今回は、自身の経験からソムリエ・ワインエキスパート試験の傾向と対策、テイスティングのポイントについてまとめました。
二次試験の対策として重要なのは、ワインの外観や香り、味わいと正しいテイスティングの表現と一致させ、記憶していくことです。ブラインドテイスティングで生産国やぶどう品種を当てることも大切ですが、それよりも重要なのは、テイスティングコメントを大きく外さないことです。
ソムリエ・ワインエキスパートの二次試験では、ぶどう品種の得点よりも、香りや味わい評価部分の配点の方が高いため、正確なテイスティングコメントを選ぶことができていれば、合格できるようになっているからです。外観や香り、味わいの表現には練習が必要ですので、今回ご紹介した3つのポイントをぜひ実践してみてくださいね。