バレンシア州(Valenciana)のグルメと言えば、バレンシア発祥のパエリア(Paella)が知られています。
サン・セバスティアン(San Sebastián)のあるバスク州(País Vasco)などに比べ、美食の州としてはあまり知られていませんが、実はミシュラン3つ星を連続して獲得しているレストランもあるんです。
2021年の12月14日には、バレンシア州でミシュランガイド・スペイン&ポルトガル2022年版の祝賀イベント(Gala de la Guía MICHELIN España & Portugal 2022)も開催される予定になっているので、要注目です。
ちなみに、今年の祝賀イベントでは、バレンシア州のスペインワインが提供される予定になっています。
この文章では、ミシュランガイド2021年版の星付きレストランの中から、特に芸術性に優れた料理を提供する、バレンシア州のレストランをご紹介していきたいと思います。
ミシュランの祝賀イベントで腕を振るう有名3つ星シェフのレストラン
キケ・ダコスタ(Quique Dacosta)は、スペインにある11軒の3つ星レストラン(2021年版)のうち、唯一バレンシア州で3つ星に選ばれたレストランです。
キケ・ダコスタがあるのは、アリカンテ県(Alicante)のデニア(Dénia)。地中海に面した港町であるデニアは、バレアレス諸島(Islas Baleares)行き(イビサ島(Ibiza)など)のフェリーの発着地として知られています。
日本ではあまり知名度がないデニアですが、2015年、食文化部門でユネスコの創造都市ネットワークに加入した他、レストランもいっぱいある美食の町なんです。
キケ・ダコスタというレストラン名は、シェフの名前から命名されました。
キケ・ダコスタ氏はエストレマドゥーラ州(Estremaura)生まれ、養子縁組でバレンシア州に移住しました。
1986年、14歳でシェフの道へと進みます。
1988年、エル・ポブレット(El Poblet,現在のキケ・ダコスタ)で働き始め、2002年に初めてミシュランの星を獲得、2012年に3つ星を獲得しました。
2013年には、世界のベストレストラン50(The World's 50 Best Restaurants)の26位に選ばれています。
2020年には、芸術や文化に貢献したということで、スペイン政府から芸術功労賞(Medalla de Oro al Mérito en las Bellas Artes 2020)を授与されました。
現在は、複数のレストランを経営する他、本を出版したり、マンダリン・オリエンタル・リッツ・マドリード(Mandarin Oriental Ritz, Madrid)の美食ディレクターを務めたりするなど、多方面に渡って活躍中です。
キケ・ダコスタの料理のジャンルはコンテンポラリー地中海スタイルで、赤エビなど、地元の海の幸山の幸を素材に取り入れています。
風景や芸術からインスピレーションを受けた料理の数々は美的センスに優れ、食べるのがもったいないと言われるほど。
2021年現在、キケ・ダコスタでは、ファンタジー、アバンギャルド、幻想などをテーマにした「クッキング・ビューティー」(Cocinar Belleza)というテイスティング・メニューを提供中です。
うさぎや蝶、蜂などをモチーフにしたメニューは、ロマンチックでありながら、見た目が甘くなり過ぎず、落ち着いた大人らしいセンスの良さを感じます。
オプションでワインのコースメニューをセットで頼むこともできますが、1,500以上のドリンクの中から自由に選ぶこともできるので、ご自分に合ったワインを探してみるのも良いかもしれません。
キケ・ダコスタの系列店としては、ミシュラン2つ星のエル・ポブレット(El Poblet)やベルモットやシェリー酒が充実した、カジュアルでリーズナブルなメルカト・バル(Mercatbar)などがあります。
キケ・ダコスタとその系列店では、おしゃれな女性のイラストがパッケージにデザインされたオリジナル・クラフト・ビール・ラ・バリアンテ(La Valiente)を販売しているので、お土産として持ち帰るのもいいですね。
女性ならではの感性が光る!バレンシア州の2人の1つ星シェフ
次に、バレンシア州で要注目の女性シェフ2人をご紹介したいと思います。
アリカンテ県エルチェ(Elche)にあるラ・フィンカ(La Finca)は、オーナー兼シェフのスシ・ディアス氏(Susi Díaz)を中心とした家族経営のレストランです。
2人の祖母の影響で、子どものころから料理に興味を持っていたディアス氏は、料理を独学で学び、お店をオープン。1984年にオープンしたラ・フィンカは、2006年からミシュランの星を維持しています。
また、ディアス氏は、テレビやラジオの番組に出演したり、本も出版したり、レストラン以外にも積極的に活動中です。
エルチェの中心部から車で約10分、少し郊外へ向かうと、エルチェの象徴である椰子の木が入り口に立ち並ぶレストランが見えてきます。
地元の魚介類や庭でとれた花などを使い、伝統料理と最新のトレンドをミックスした、オリジナル料理を提供するラ・フィンカ。
アラカルトとコースメニューがあるので、ちょっと雰囲気を味わってみたい方も気軽に利用できますよ。
コースメニューは、Menú Femme(LまたはXL)と前菜2品・食前酒・メインをオプションからチョイスするSU MENUの2種類。
Menú Femmeは、勇敢で知的、エレガントで官能的など、女性を独自解釈して作り上げられたテイスティング・メニューです。
ダリの同名作品を意識したような「メイ・ウエストの唇」(Los labios de mae west)という料理や花や女性の顔をイメージした料理など、乙女心をくすぐるメニューがいっぱいなので、特に女性におすすめのコース料理です。
Menú Femmeには、ソムリエがセレクトしたワインやカバのボトルとのセットメニューもあるので、料理とのマリアージュを楽しんでみるのもいいですね。
ちょっと話が脱線しますが、女性つながりで、ボデガを1軒ご紹介しましょう。
エルチェから車で北に約45分向かった場所にあるボデガス・カサ・コレドール(Bodegas Casa Corredor)では、女性醸造家ラウラ・ラモス氏(Laura Ramos)がワイン造りを行っています。
このボデガはバレンシア州との州境・カスティーリャ=ラ・マンチャ州(Castilla-La Mancha)にあるのですが、もともとはバレンシア州やムルシア州(Murcia)の土着品種でありながら、消滅の危機に瀕していたフォルカジャ(Forcallat)品種のワイン造りを行っていることで知られています。
ボデガス・カサ・コレドールでは、ガイドツアー付きのテイスティングツアーを開催しているので、ラ・フィンカを訪れた際には、おいしいスペインワインを味わいに立ち寄ってみるのもいいかもしれません。
さて、話を元に戻しまして、もう1軒のレストランをご紹介しましょう。
バレンシアにあるラ・サリタ(La Salita)は、ベゴーニャ・ロドリゴ氏(Begoña Rodrigo)が2005年にオープンしたレストランです。
クリエイティブな人が集まるおしゃれエリア・ルサファ地区(Barrio de Ruzafa)にある、 一軒家のようなレストランは、2019年にミシュラン1つ星を獲得しました。
高級レストランは子どもお断りのイメージが強いですが、ラ・サリタはお子様向けメニューもあるので、ファミリーで訪れることもできますよ。
オボ・ラクト・ベジタリアン向けメニュー(Ovo lácteo-vegetariano,卵と乳製品を含むベジタリアンメニュー)もあるので、健康志向の方にもおすすめのレストランです。
地元バレンシア州産のスペインワインを中心に、ワインのラインナップが充実していて、女性好みのカバやシャンパン、ロゼワインも豊富です。
切り株にのったプチトマトの上に蝶が止まったようなメニューや花びら形のメニューなど、遊び心満点の盛り付けは、食欲だけでなく、撮影欲もそそります。
なお、ラ・サリタは平日のみの営業で、土・日はロール・タル・ヌー(L’Hort al Nú)という伝統料理のお店に変身。火曜から土曜の夜には、カクテルが飲めるラ・コクテリア・アル・ヌー(La Coctelería al Nú)というお店もオープンするので、リピーターでも楽しめますよ。
最後に
以上、バレンシア州のアーティスティックな星付きレストランをご紹介してきました。
今回、ミシュランの祝賀イベントが開催されることで、バレンシア州の美食の知名度は今後高まるはずです。
自由に世界を行き来できる時期になったら、グルメを目当てにバレンシア州を訪れてみるのも良いかもしれませんね。