みなさんは白ワインについてどのようなイメージをお持ちでしょうか?
ひとくちに白ワインといっても、さまざまな味、色合い、香りのものが存在します。
白ワインは一般的に、白ぶどうと呼ばれるぶどう品種を原料として造られます。使われるぶどう品種によってできあがる白ワインの味わいや香りなどに違いが生まれるのは当然ですが、醸造方法の違いによっても、バリエーション豊かな白ワインが生まれます。
今回は白ワインの基本的な醸造方法をおさらいし、白ワインでおこなわれる特殊な醸造方法と特殊な醸造方法によってできたおすすめのスペインワインについて解説します。
白ワインの基本的な醸造方法
まず、白ワインの基本的な醸造方法をおさらいしてみましょう。
収穫
白ワインの原料となる白ぶどうを収穫します。
選果
病気や傷のある実を取り除き、健全な果実だけを残します。
ぶどうの房から果梗(かこう。ヘタや柄の部分。)を取り除きます。除梗した果実は破砕、つまり、果皮を破って果汁を出しやすくします。破砕された果実から流れ出る果汁はフリーラン果汁と呼ばれます。フリーラン果汁は白ぶどう本来の果実味が感じられ、フリーラン果汁で造られたワインは非常に果実味があり、みずみずしさが感じられる、爽やかで軽やかな仕上がりになります。
圧搾
フリーラン果汁を抽出したら別容器で保存し、その後圧搾をします。圧搾には圧搾機を使い、ぶどうをプレスして果汁を搾り出します。
発酵
果汁をステンレスタンクや木樽に入れ、アルコール発酵させます。発酵には培養酵母を添加する方法と自然酵母を使う方法があります。白ワインの発酵温度は赤ワインよりも低く、15~20℃くらいに管理されます。
澱引き
アルコール発酵の終わった果汁の沈殿物を取り除く、澱引きをおこないます。澱引きの方法はタンクの下部から沈殿物を抜きだす方法や、酵母や果肉の細胞片などを沈殿させ、上澄みをすくい出す方法など、さまざまあります。
清澄・濾過
白ワインは赤ワインに比べて色が薄く、濁りや沈殿物が目立ちやすいため清澄・濾過をおこなうのが一般的です。清澄にはゼラチンや卵白などの清澄剤が使われ、不純物をかたまりにして次の濾過の工程でしっかりと取り除けるようにします。
清澄の工程の後、ワインをフィルターに通して濾過し、不純物を取り除きます。
瓶詰め
ワインを不純物が入らないように瓶詰めします。瓶詰めされたワインは栓をされ、ボトルにラベリングします。
白ワインでおこなわれる特殊な醸造方法
基本的な醸造のほか、以下のような特殊な醸造方法を取ることにより、特徴ある白ワインを造り出すことができます。
スキンコンタクト
スキンコンタクトとは圧搾をおこなう前に果皮や種などとともに一定期間果汁を漬け込んでおく製法です。赤ワインでは普通におこなわれる工程なのですが、白ワインの場合は果皮や種から渋みや香り、色味をワインに抽出させたい場合におこなわれます。近年流行しているオレンジワインもこのスキンコンタクトを経て造られます。
マロラクティック発酵(MLF、Malo-lactic fermentation)
マロラクティック発酵とはアルコール発酵が終わったワインを乳酸菌発酵させる工程です。マロラクティック発酵させることにより、ぶどうに含まれるリンゴ酸を乳酸と炭酸ガスに分解し、酸味をまろやかにし、バターやナッツのような香りを与えます。マロラクティック発酵は赤ワインではほとんどの場合行われますが、白ワインの場合は複雑な味わいを与えたい場合のみおこなわれます。
マロラクティック発酵はアルコール発酵が終了すると自然に始まります。マロラクティック発酵をさせないためには二酸化硫黄を添加して殺菌したり、温度を低くして乳酸菌を不活化したりする必要があります。
熟成
発酵が終わったワインをステンレスタンクや木樽に移し、熟成させる工程です。ぶどうの味をフレッシュなまま活かしたい場合はタンク、複雑味や豊かな風味を出したい場合は木樽を使って熟成させます。
赤ワインは一般的に熟成することが多く、白ワインはあまり熟成に向かないと考えられています。しかし、一部の高級白ワインは例外で、熟成させるからこその仕上がりが持ち味となります。
バトナージュ(Batonage)
樽やステンレスタンクで熟成中のワインをかき混ぜる作業のことをバトナージュと呼びます。バトナージュすることで熟成中にワインから出てきて底に沈殿していた澱をワインになじませ、酵母からアミノ酸などをワインに混ぜ、旨味などを与えることができます。ワインを混ぜる櫂のような棒がバトン(Baton)と呼ばれていたことからバトナージュと呼ばれるようになりました。
シュール・リー(Sur Lie)
シュール・リーとはフランス語で澱の上という意味で、発酵が終わったワインを澱引きせず、澱を容器に残してそのままワインを熟成させる手法を表します。
シュール・リーをおこなうことにより澱が分解してアミノ酸や多糖類に変化し、ワインに旨味となる成分が溶け込みます。そのためシュール・リーを経たワインはすっきりとしながらもどこかクリーミーで豊かな、深みと複雑さがあり、そこはかとない旨味が感じられるのです。
しかし、シュール・リーは菌の繁殖のリスクがあり、非常に温度管理が難しい製法です。そのため、大変手間がかかり大量生産は難しく、シュール・リーと明記されたワインは非常に貴重なものと考えて良いでしょう。
樽熟成をしたおすすめのスペインワイン
ライモス・インモルタリタリット ブランコ(Raims Immortalitat Blanco)
1413年に修道士たちが粘度と石で作った大樽を使い、礼拝用のワイン醸造を始めたのがその始まりである歴史あるワイナリー、ボデガス・トレ・デル・ベケール(Torre del Veguer)による高級白ワインです。ラベルにはワイナリーとゆかりの深いスペインを代表する芸術家、サルバドール・ダリ(Salvador Dali )の絵「不死の葡萄」があしらわれています。
柑橘系のアロマに、桃やりんごの果実のニュアンス。ヴィーガンで育てられたぶどうを手摘みで丁寧に収穫し、ソフトプレスして得られたフリーラン果汁を使用し、畑の区画ごとに発酵させています。さらに、フレンチオーク樽で最低6ヶ月熟成させていることによりロースト香や甘い香りがほのかに感じられます。
シュール・リーをしたおすすめのスペインワイン
ビニャ・メイン ブランコ(Viña Mein Blanco)
ガリシア州(Galicia)オウレンセ県(Ourense)のD.O.リベイロ(D.O.Ribeiro)のビニャ・メイン エミリオ・ロホ(Viña Mein Emilio rojo)による高級白ワインの2018年ヴィンテージです。天候に恵まれ、非常に出来の良いヴィンテージとなっています。
白い花、りんご、白桃などのアロマ。こだわりの農法で育てられたぶどうを手摘みで丁寧に収穫し、伝統的なブレンドで使用。発酵にはステンレスと木樽、コンクリート樽を使っています。シュール・リーを10ヶ月おこなうことにより、爽やかながら豊かな香りがあり、温度による味や香りの変化も楽しめる1本に仕上がっています。
オシアン(Ossian)
カスティーリャ・イ・レオン州の(Castilla y León)セゴビア(Segovia)のガストロノミーを代表する人物、ホセ・マリア・ルイス(José María Ruiz)氏が自身のレストランの名物料理である”子豚の丸焼き” コチニージョ・デ・セゴビア(Cochinillo de Segovia)に合うワインを造る目的で作られたプロジェクト、アルマ・カラオベハス社による、オシアン・ビデス・イ・ビノ(Ossian Vides y Vino)で作られる最高級白ワインです。伝統的手法で管理された古木(100~200年)のベルデホ種(Verdejo)を100%使用しています。
ベルデホ種の特徴である青りんごのアロマに、南国のフルーツやフレッシュなハーブのニュアンスがあります。熟成感があり、ボリューミーな仕上がり。優しく圧搾した果汁を用い、天然酵母で発酵させ、シュール・リーを9ヶ月間おこなっています。
まとめ
白ワインの基本的な醸造方法をおさらいし、白ワインでおこなわれる特殊な醸造方法と特殊な醸造方法によってできたおすすめのスペインワインについて解説しました。ワインの醸造方法について知ると、ワイン選びがさらに楽しくなるはずです。ぜひ、この記事を参考にお好みに合う白ワインを選んでみてくださいね。