スペイン産生ハムとは?その歴史と魅力をご紹介します スペイン産生ハムとは?その歴史と魅力をご紹介します

スペイン産生ハムとは?その歴史と魅力をご紹介します

生ハムといえば、肉製品なのでタンパク質、というイメージがありますが、実は生ハムは発酵食品で、ヨーグルトや納豆の仲間なんです。

今回は、スペイン産生ハムの代名詞のようなハモン・イベリコとハモン・セラーノの違いやハモン・イベリコの有名産地、スペイン産生ハムとワインの合わせ方などをご紹介します。

この記事を読んだら、スペイン産生ハムを食べたくなってしまうかもしれません。


スペイン産生ハムの歴史

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紀元前1100年、フェニキア人(Phoenicia)によって豚がスペインに持ち込まれ、長期保存用として、生ハムが作られるようになります。

その後、ローマ人が、ヨーロッパ中にスペイン産生ハムを広めました。

中世から、サンマルティンの日(Día de San Martín ,11月11日)のころには、飼っている豚を屠殺(とさつ)するマタンサ(Matanza del cerdo)という行事が行われてきました。Cerdo (セルド)はスペイン語で「豚」を意味します。

冬の寒い間は農作物の収穫作業ができないため、農民たちは豚を解体して生ハムやソーセージなどの保存食を作り、それを春まで食いつないでいたのです。

現在は、食品の保存技術が進歩したことや衛生上の規制が厳しくなったことから、この行事は減りつつあります。

イスラム教の支配下からキリスト教国家へと移行したレコンキスタ(1492年)以降は、豚肉を食べることは、キリスト教徒の証のようになりました。(イスラム教徒やユダヤ教徒は、豚肉を宗教上の理由で、食べなかったため)

スペイン産生ハムは、エストレマドゥーラ州(Extremadura)カセレス県(Cáceres)ユステ(Yuste)で晩年を過ごした、美食家で知られる神聖ローマ帝国のカール五世(Karl V=スペイン国王カルロス一世, Carlos I)の好物でもあったそうです。

現在、スペインは熟成生ハムの生産量・消費量共に世界一です(日本の場合、熟成生ハムではなく、調味液で味付けするか、調味液を注入した生ハムが一般的)。また、EU内での豚肉の生産量は第2位です(1位はドイツ)。

スペイン産生ハムの種類

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スペイン産生ハムには、大きく分けて、ハモン・セラーノとハモン・イベリコの2種類があります。

スペインの生ハム生産量の約9割がハモン・セラーノで、残りの約1割がハモン・イベリコです。


ハモン・セラーノ(Jamón Serrano)

スペイン語で「山のハム」という意味の、スペインではポピュラーな生ハムです。

ハモンは、豚の後ろ脚(もも肉)部分を指します。

ハモン・セラーノは、白豚(セルド・ブランコ, Cerdo blanco)を主な原料とした生ハムです。

豚の種類としては、ランドレース種(Landrace)、デュロック種(Duroc)、ラージ・ホワイト種(大ヨークシャー, Large White)を掛け合わせた品種が一般的です。3種類の豚を交配しているため、日本では「三元豚」とも呼ばれています。

デンマーク原産のランドレース種は、繁殖能力に優れています。デュロック種は、ピンク色の肉と霜降りが入りやすいのが特徴です。ラージ・ホワイト種は、赤身と脂肪のバランスが良く、ハムやベーコンなどの加工に向いています。

ランドレース種とラージ・ホワイト種は白豚で、デュロック種は赤豚です。

ハモン・セラーノ輸出協会では、ハモン・セラーノの熟成期間を最低でも9ヶ月、平均12ヶ月と定めています。

ハモン・セラーノは、イタリアの「プロシュート・ディ・パルマ(Prosciutto di Parma)」、中国の「金華ハム(金華火腿)」と共に、世界三大ハムに選ばれています。


ハモン・イベリコ(Jamón Ibérico)

ハモン・イベリコは、イベリア半島の自生品種であるイベリコ種から作られる生ハムです。濃い赤色と脂肪の混入率が高いのが特徴です。

ハモンは豚の後ろ脚(もも肉)部分を指しますが、ハモン・イベリコでは、前脚(ウデ肉=パレタ, Paleta)も材料として使います。前脚は後ろ脚よりも脂肪が少なく、熟成期間も短めです。

イベリコ種は、黒い皮膚の色や毛の硬さが特徴の品種です。紀元前3500年ころにイベリア半島にいたイノシシを先祖として、様々な豚との交配を経て生まれた品種で、大航海時代(15~17世紀)にはアジアからの豚の血も混じったのだとか。

ヨーロッパでは珍しい放牧豚で、樫の木(エンシーノ, Encino)が生える放牧地(デエサ,Dehesa)で放牧(モンタネーラ, Montanera) させて育てます。樫の実(どんぐり=ベジョータ, Bellota)は、ナッツのような味がするそうです。

ハモン・イベリコの生産地は、樫の木が生育するイベリコ半島の中部から南にかけての地域に限られています。

ハモン・イベリコの生産は、スペイン王室に献上するために、15~16 世紀ころ、現在のサラマンカ県(Salamanca)カンデラリオ地域(Candelario)で始まったといわれています。

ハモン・イベリコの種類は、


 ベジョータ(Bellota)

放牧地でどんぐりの実や自生植物を食べて育った、純血のイベリコ種(イベリコ・プーロ, Ibérico puro)またはイベリコ種75%以上の交配種で、ナッツの香りがするのが特徴。現在、ベジョータを輸入しているのは、カナダ・アメリカ・日本だけです。


 セボ・デ・カンポ(Cebo de Campo)

放牧地または農場で、どんぐりの実や自生植物以外に、飼料も食べて育った純血のイベリコ種またはイベリコ種75%以上の交配種。


 セボ(Cebo)

どんぐりを食べずに「飼料」で育った、純血のイベリコ種またはイベリコ種75%以上の交配種。セボは、「えさ」を意味するスペイン語です。ナッツの香りがしない生ハムで、日本に輸入されるのはこのタイプが多いです。ピエンソ(Pienso)とも呼ばれています。

の3種類に大きく分けることができます。

交配種はデュロック種との掛け合わせで、純粋なイベリコ種より育ちが早いのが特徴です。

ハモン・イベリコの熟成期間は2~3年で、ハモン・セラーノの約2倍の時間をかけます。


ハモン・イベリコの産地 

生ハム産地 おいしい オリーブオイル

 

ハモン・イベリコの産地として保護原産地呼称(DOP)を受けている場所は4ヶ所あります。


ギフエロ(Guijuelo) 

カスティーリャ・イ・レオン州(Castilla y León)サラマンカ県(Salamanca)ギフエロは、

ハモン・イベリコの産地として初めて原産地呼称を受けました。

スペイン最大の生ハムの町として知られ、この地域には生ハムや腸詰製品を扱う企業が、約150社集まっています。

4ヶ所の中では最も北に位置するギフエロ。標高が高く、冬が長いため、少ない塩の量で熟成することができます。そのため、この地域のハモン・イベリコは、味がまろやかで脂肪が多いのが特徴です。

ギフエロは、ハモン・イベリコ産地の中で唯一、スライスされた後の製品もDOPを受けています。

ハモン(前脚)の製造期間は最低24ヶ月で、DOPの生産地の中で最も長くなっています。

DOPを受けたハモン・イベリコのえさは、すべてグルテンフリーなので、小麦アレルギーの方なども安心して食べることができますよ。


デエサ・デ・エストレマドゥーラ(Dehesa de Extremadura)

デエサ・デ・エストレマドゥーラでは、エストレマドゥーラ州の州内で育ったイベリコ種のみをハモン・イベリコとして生産しています。

スペインでは最も人気のハムです。

特に、カセレス県モンタンチェス(Montánchez)のハモン・イベリコは一流といわれています。

デエサ・デ・エストレマドゥーラのハモン・イベリコは、オレイン酸の豊富さと芳醇な香り、繊維が少ない質感、わずかな辛みを感じる甘さなどが特徴です。


ハブーゴ(Jabugo)  

アンダルシア州(Andalucía)ウエルバ県(Huelva)ハブーゴ村を中心とした、31の自治体で作られるハモン・イベリコです。

ハブーゴは海の近くのエリアで、晩秋から早春にかけては大西洋からの嵐が吹き、夏の日中の気温が高いのが特徴です。

繊細な甘さの中にちょっとしょっぱさを感じる味は、ワインのつまみにぴったりです。


ロス・ペドロチェス (Los Pedroches)

アンダルシア州(Andalucía)コルドバ県(Córdoba)ロス・ペドロチェスは、2006年に保護原産地呼称認定を受けました。

ハモン・イベリコは、ロス・ペドロチェス渓谷内の32の町と村で作られています。

控えめな塩気と甘み、霜降り状の脂などが特徴です。


スペイン産生ハムを使った名物料理

オレイン酸が豊富な生ハムは、食べる1時間前くらいに常温に戻しておくと、脂が溶け出して、よりおいしくいただくことができます。

原木の生ハムは、スライスの仕方によって、おいしさが変化します。スペインでは、生ハム切り職人・コルタドール(Cortador)が、原木の状態を把握しながら、生ハムを最もおいしい状態にスライスします。

ハモン・イベリコはそのまま食べるのがベストですが、生ハムは様々な料理の材料としても使われています。


カチョポ(Cachopo)

スペイン料理 おいしい

 

牛肉と牛肉の間に生ハムをはさんで、衣をつけて揚げた、アストゥリアス地方(Asturias)の名物料理。


ピスト・マンチェゴ(Pisto Manchego)

ピスト・マンチェゴ ラタトゥユ おいしい スペイン料理

 

トマト、ピーマン、ズッキーニなどの野菜と生ハムを炒めてから煮て、その上に目玉焼きなどをのせた「スペイン風ラタトゥイユ(Ratatouille)」。


ナバーラ風マス(トゥルーチャ・ア・ラ・ナバーラ,Trucha a la Navarra)

ハーブなどを入れたワインに漬けておいた魚のマスを縦に開き、間に生ハムをはさんでから小麦粉をまぶして、オリーブオイルで揚げ焼きした料理。


サルモレーホ(Salmorejo)

サルモレホ おいしい スペイン料理 トマトスープ

 

ガスパチョ(Gazpacho)に似た、コルドバ(Córdoba)名物のトマトの冷製スープ。ガスパチョとは違い、刻んだ生ハムやフランスパンが入っていて、腹持ちの良いスープです。

他に、生ハムとコリン(Colin)という、ミニ堅焼きパンを合わせて食べる、シンプルな食べ方などもあります。

 

・ワイナリーで・・・

オリーブオイル スペイン 生ハム チーズ

 

弊社お取引のワイナリー「マルケス・デ・グリニョン( Marqués de Griñon)」を訪れた際に「ローズマリー」と「オリーブオイル(オレウム・アルティス Oleum Artis/ オリーブジャパンで毎年金賞以上)」がかかったものが出てきて絶品でした!


スペイン産生ハムとワインとのマッチング

生ハムワイン チーズ おいしい 高級 どんぐり

 

肉(特に赤身の肉)といえば赤ワインを組み合わせるイメージがありますが、産地、味わい、品格でワインを合わせる方法もあります。


産地で合わせる方法としては、


それぞれの産地の地酒」と。


味わいで合わせる方法としては、


軽い食材に軽いワイン

・塩分が濃いものに甘口ワイン


品格で合わせる方法としては、

熟成が長い高級食材には、同じく熟成期間が長い高級なワインを合わせる(例えば、長期熟成のハモン・イベリコに、DOCa(特選原産地呼称ワイン)であるリオハやプリオラートの長期熟成の赤ワインを組み合わせる)

などが考えられます。

メロンまたはいちじくと生ハムの組み合わせは、ドライまたはミディアムボディの白にぴったりですし、生ハムとシェリー酒(特にマンサニージャやフィノ,Manzanilla/ Fino Sherry)もベストマッチです。

組み合わせは無限大なので、意外な組み合わせも楽しんでみてください。


まとめ

スペイン産生ハムは、同じ産地ということもあり、スペインワインに良く合います。

気軽に食べられる真空パックタイプは、晩酌のお供にしてみてはいかがでしょうか。

思い切って原木生ハムを購入して、お家でバーベキュー代わりにパーティーするのもありかもしれません。

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