ワインエキスパートという資格をご存知でしょうか?
「ソムリエなら知っているけれどワインエキスパートは聞いたことがない」という方も多いかもしれません。しかし、ワインエキスパートはソムリエにも匹敵するほどの格のある資格なのです。
この記事ではワインエキスパートについて、概要や合格率、独学での対策方法などについて解説します。ワイン関連のプロを目指すわけではないけれど、スペインワイン に詳しくなりたい、という方にも役立つ情報となっていますのでどうぞ最後までご一読下さい。
ワインエキスパートとは
ワインエキスパートは一般社団法人日本ソムリエ協会が1996年から認定している資格です。正式名称をJ.S.A.(Japan Sommelier Association)ワインエキスパートといいます。
ワインエキスパートは酒類だけでなく、飲料や食全般の専門的知識やテイスティング能力を有している人に与えられる資格です。主な対象者は愛好家で、プロフェッショナルな資格ではありません。
プロ向けの資格であるソムリエの試験は受験するために2年から3年の関連職種での実務経験があり、しかも現職であることが求められます。いっぽう、ワインエキスパートでは満20歳以上の成人であればプロ、アマ問わず、誰でも受験可能です。しかし、ワインエキスパートがソムリエに比べて簡単に取得できる資格というわけではありません。試験の形式や難易度、合格率はほぼ同じです。また、試験準備のためのテキストも一緒のものを使います。
つまり、ソムリエとワインエキスパートはプロかアマかの違いはあれど、同格となる資格なのです。そのため、ワインの関連職に就いている人がソムリエと同等の知識やテイスティングの能力を持っているものの実務経験が足りない場合に、ワインエキスパートの試験を受けてキャリアに活かす、ということもあるのです。
ワインエキスパートの試験概要
ワインエキスパートの試験は夏から秋にかけ、年に1回行われます。
一次試験はパソコンを使って行われる70分のCBT試験です。世界のワイン産地に関する問題を中心に、ワインや日本酒、そのほかの飲料に関する必須知識などを筆記試験による選択問題で問われます。
二次試験は一次試験を合格した人のみが受験することができます。二次試験はスティルワイン4種、スティルワイン以外のアルコール飲料1種をテイスティングして特徴や素性を答える試験です。スティルワイン4種に関しては外観や香り、味わいについて解答用紙に記載された選択肢から選んでコメントを作成しなければなりません。生産国やぶどう品種、ヴィンテージなどについても選択肢から選んで回答する必要があります。
試験会場
一次試験は日本ソムリエ協会が指定する全国47都道府県の会場で受験可能です。
二次試験は札幌・盛岡・仙台・東京・長野・金沢・名古屋・京都・大阪・神戸・岡山・広島・高松・福岡・鹿児島・沖縄です。
受験費用
ワインエキスパート資格試験にかかる受験費用は以下のようになります。
一次試験から
一般:一次試験1回受験 29,600円、一次試験2回受験 34,440円
日本ソムリエ協会会員:一次試験1回受験 20,380円、一次試験2回受験 25,220円
二次試験から
一般:14,210円
日本ソムリエ協会会員:7,300円
ワインエキスパート資格試験の受験者数と合格率
ワインエキスパートの資格試験の受験者数と合格率は以下のようになっています。
年 |
受験者数 |
合格者数 |
合格率 |
2021年 |
3,490人 |
1,420人 |
40.7% |
2020年 |
3,213人 |
1,391人 |
44.3% |
2019年 |
3,249人 |
1,436人 |
44.2% |
2018年 |
3,214人 |
1,054人 |
32.8% |
2017年 |
3,174人 |
1,051人 |
33.1% |
引用:https://www.sommelier.jp/exam/pdf/qualifiedholders.pdf
ワインエキスパートは独学で合格可能?
合格率や試験内容など、ここまで述べてきた内容からもお分かりのとおりワインエキスパートは簡単に取得できる資格ではありません。「ワインが好きでふだんからワインを頻繁に飲んでいる」といったような、愛好家のレベルの知識だけで試験に臨んでも合格は難しいでしょう。
いっぽうで、ワインスクールに通わず、独学で試験対策し、見事ワインエキスパートとなる方も少なくありません。
ワインエキスパート合格のための独学での対策方法
ここからはワインエキスパート資格試験の対策方法を解説していきます。
一次試験対策
一次試験は「日本ソムリエ協会 教本 J.S.A.ソムリエ J.S.A.ワインエキスパート」の内容が出題範囲となります。この教本はワインエキスパート資格試験の受験申し込みをすると日本ソムリエ協会から送付されてきます。
2021年からは一次試験の出題傾向が少し変わって暗記問題が減り、教本を読み込むことで初めて得られるような知識がないと解けない問題が増えました。そのため、できるだけ早く教本を手に入れられるよう、ワインエキスパート試験の申し込みが開始する3月には申し込みをすることをおすすめします。
この教本の内容は毎年変わり、ワインの生産量国別ランキングなど、覚えるべきデータも当然のことながら年ごとに違います。そのため、ワインエキスパートの試験対策には必ず、その年の教本を使って勉強する必要があります。
一次試験対策におすすめの参考書と問題集
一次試験は教本の内容を覚えることができれば合格することができます。しかし、教本は非常に分厚く、文章が羅列されていて表の引用も少ないため、勉強がしやすい、とは言えません。そのため、一次試験対策として教本や問題集を利用することをおすすめします。
一次試験対策におすすめの参考書と問題集は以下のとおりです。
杉山明日香 著
こちらの参考書は出題傾向の低い内容などを省き、教本の内容をわかりやすくまとめています。また、重要な箇所を赤文字で示しているため、要領良く暗記することができます。また、色付きのワイン地図は視覚的に覚えやすいので必見です。
ワインエキスパートの一次試験は全部で120問が出題されます。120問もの問題に対応するためにはできるだけ数多くの問題を解いておくことが必要になります。
ワイン受験.comはワインスクール講師の山崎和夫さん制作の問題集サイトで、なんと約10万問もの問題が網羅されています。また、実際のCBT試験のように毎回異なる問題がランダムに出題されているため、一次試験対策にはぴったりです。
こちらのサイトは有料で、1年間の利用料が4,800円です。たしかに価格は低いとは言えませんが、複数の問題集を用意するよりはこのサイトを利用し、繰り返し問題を解く方がコストパフォーマンス的にも優れているのではないでしょうか。
二次試験対策
テイスティング能力が問われる二次試験の対策はできるだけ早く、受験予定の1年ほど前から行うことが理想的だとされています。テイスティング能力は短期間で向上することが難しく、反復練習を重ねることが重要です。思いついたときに時々やるのではなく、1回30分の練習を週2,3回ほどを目安として行うと良いでしょう。
また、テイスティングを行う際には必ず3種類ほどのワインを比べて練習するようにしましょう。1種類だけのワインのテイスティングを繰り返しても特徴を覚えることはできません。さらに、テイスティングをする際にはラベルを見ず、ブラインド・テイスティングを行うようにして下さい。ラベルを見ながらのテイスティングは答えを見ながら問題集を解いているようなものです。
忙しい方にはワインスクールがおすすめ
仕事や家事などで試験対策の時間がとりにくい方にはワインスクールの利用をおすすめします。ワインスクールでは試験合格のノウハウを把握したプロの講師が講義を行うため、要領良く試験対策することができるのです。ワインテイスティング講座では複数のワインを1回に味わえ、品種やヴィンテージの味わいのポイントやコメントの正しい記述法などを学ぶことができます。独学でワインエキスパート資格試験に挑む方も、単発でのワインテイスティング講座を受講すると安心でしょう。
ただし、ワインスクールでは全15回ほどの講座を受講した場合はトータルで10〜15万程度の費用がかかるようです。
まとめ
ワインエキスパートについて、概要や合格率、独学での対策方法などについて解説しました。
ワインエキスパートの資格を取るとワインに対する見識が広がり、新たなワインの楽しみ方を堪能することができます。ソムリエを目指すわけではないけれど、スペインワインに対する造詣を深めたい、という方にもおすすめの資格です。新しいことに挑戦したい、という方にもぴったりですので、ぜひこの機会にワインエキスパートに挑戦してみてはいかがでしょうか?