スペインのワイン法について詳しく解説! スペインのワイン法について詳しく解説!

スペインのワイン法について詳しく解説!

スペインワインはワイン法によってその味わいや品質を高水準に保つとともに、消費者のワイン選びにとって重要な情報を提供しています。

今回はスペインのワイン法について少し深掘りするとともに、おすすめの原産地呼称のスペインワインも紹介します。

 

世界から見たスペインのワイン法制定の流れ

ワインは一説によると、8,000年ほど前までその歴史を遡ることができる、と言われています。古代ギリシャのワイン産地、ヒオス島( Khíos)では各地に輸出していたワインの容器に産地や品質を保証する印章が付けられていたことが分かっています。

歴史上初のワインに関する法律は紀元89年、ローマ皇帝のドミティアヌス帝の時代に作られたものです。この法律はワイン造りのために増えすぎたぶどう畑を、減ってしまった食用の作物の栽培にあてるように定めたものでした。

その後、時代は進んで中世以降。ヨーロッパに現在でも名高い銘醸地が生まれたのと同時に、粗悪品や砂糖などが添加されたワインが出回ります。そのため、自国のワインを保護する目的で、史上初となる原産地呼称制度がポルトガルで1756年に誕生しました。そして、スペインでも自国のワインの品質を保持するため、初のワインに関する規制となる特別立法が、18世紀に公布されます。

スペインで原産地呼称を定めた法律が制定されたのはフランスよりも2年早い、1933年のことでした。また、原産地呼称制度に先駆け、産地指定制度が1926年にリオハ(Rioja)で始まっています。

いっぽう、1962年にはEU加盟国に対して統一したワイン法が制定されます。以降、EU加盟国にとって各国のワイン法よりもEUのワイン法が優先されることになります。(スペインは1986年にEUに加盟。)

1988年に原産地呼称の上位区分である特選原産地呼称がスペインに導入され、1991年にはリオハが最上位のD.O.Ca(Denominación de Origen Calificada、デノミナシオン・デ・カリフィカーダ)に認定されました。その後2003年にワイン法は大幅に改訂。また、2009年にEUのワイン法が改定され、スペインの原産地呼称は現在、6つに分類されています。

 

スペインの原産地呼称

スペインの原産地呼称、D.O.C.(Denominación de Origen、デノミナシオン・デ・オリヘン)は以下の6つに分類されています。

 

  1. V.P.(Vinos de Pago、ビノス・デ・パゴ)

単一ぶどう畑限定高級ワイン。特定の村落で、他とは際立った違いのあるテロワールを持つ畑から生産される個性的な高品質ワインのこと。カスティーリャ・ラ・マンチャ(Castilla-La Mancha)州政府が2000年以降に提唱してきたカテゴリーで、2003年のワイン法改正でスペイン全体の法に採用されました。畑はDO、DOCに認定されていない地域に属していてもよく、もしD.O.C.地域のワインであればVino de Pago Calificado(ヴィノ・デ・パゴ・カリフィカード)と表示されます。

 

  1. D.O.Ca(Denominación de Origen Calificada、デノミナシオン・デ・カリフィカーダ)

特選原産地呼称ワイン。D.O.ワインの中から、厳しい基準で昇格が認められた高品質ワインのこと。1988年に制定されたカテゴリーで、1991年にリオハ、2009年にプリオラート(Priorat)が承認されました。

 

  1. D.O.(Denominación de Origen、デノミナシオン・デ・オリヘン)

原産地呼称ワイン。原産地呼称統制委員会(Consejo Regrador、コンセホ・レグラドール)が設置された地域で、その地域内で栽培された認可品種のぶどうを使い、厳しい基準にのっとって生産されたワインのこと。

 

  1. VCIG(Vino de Calidad con Indicacion Geografica、ヴィノ・デ・カリダ・コン・インディカシオン・ヘオグラフィカ )

地域名称付き高級ワイン。2003年のワイン法で新しくできた分類。特定の地域、地区、村落などで収穫されたぶどうを使い造られたワインで、その地域性を表現したものに対して認められます。このカテゴリーで5年以上実績を積んだ生産地は、D.O.ワインへの昇格を申請する事ができます。

※以上4段階まではD.O.P.(Denominacion de Origen Protegida/デノミナシオン・デ・プロテジア)、原産地呼称保護ワインに分類されます。

 

  1. Vino de la Tierra(ヴィノ・デ・ティエラ)

地方ワイン、またはカントリーワイン。地域名を名乗ったテーブルワインといった位置付けで、ラベル表記は、Vino de la Tierra de の後に、町や郡や地方の名が付きます。一部の名城地域で使用が禁止されているカテゴリーのViñedos de España(ビニェードス・デ・エスパーニャ)はこのカテゴリーに含まれます。

 

  1. Vino de Mesa(ヴィノ・デ・メサ)

テーブルワイン。格付けされていない畑で生産されたワインや、異なる地方のワインを混ぜて造ったワインで、地域名、品種名、収穫年の表示は許されていません。

 

おすすめの原産地呼称スペインワイン

D.O.Ca.リオハ

ラエルテス・レイ(Laertes Rey

深いルビーレッドの色調。さくらんぼやざくろのような赤系果実のアロマと、絹のような口当たりでひかえめな酸とタンニンのバランスが絶妙です。オーガニック認証を受けた畑で育てられた古代品種が味わえます。

原料はマトゥラナ・ティンタ(Maturana Tinta)で、 リオハの原産地呼称でしか認定されていない赤ぶどう品種です。リオハで栽培されるのぶどうのうち、たった0.5%しか収穫がない、希少品種です。

オーガニックワインもリオハで生産されるワインの10%で、リオハワインのなかでもさらに珍しいワインです。ワイン名はギリシャ神話のトロイア戦争などで語られる英雄、オデュッセウスの父にあたるラエルテス王のことで、農業やぶどう畑に関わる人物です。マトゥラナ・ティンタがリオハの主要品種ではないものの昔から存在していた土着品種ということから、ギリシャ神話英雄の父という、決してメインキャラクターではないものの欠かす事の出来ない存在、といった特徴を重ね合わせたことが、名前の由来となっています。

製造者はリオハの州都、ログローニョ(Logroño)から南25㎞の所にあるボデガス・ラス・セパス(Bodega Las Cepas)です。栽培担当の兄、サンティアゴ(Santiago)、醸造担当の弟アルベルト(Albert)による家族経営のワイナリーで、1995年から有機農業を開始していて2003年以前はぶどうを栽培するのみだったものの、認定を受けていたぶどうを使い代々受け継いだ畑で自然派ワインを造ることを決意しました。

小さい12㎏のかごを使い、ぶどうはすべて手摘み、果実への負荷を最大限減らすことのできる垂直型空気圧式圧搾機を使い、腐敗を防ぎ、香りと味わいを損なわないようにじっくりと時間をかけて果汁を絞り出します。環境への配慮はワイナリー運営の随所にうかがえ、天然コルクで栓をするだけでなく、段ボールもリサイクル品を使っています。自然との共存を理念に、降水量が少なく、害虫が少ない環境であるため、ぶどうの有機栽培に適していることを重視し、オーガニックワイン造りにこだわっています。除草剤や化学合成の農薬は不使用。 合成性フェロモンによる害虫の交尾を撹乱し、殺虫はせず、次世代の産出を防ぐことで害虫対策をしています。

 

D.O.Ca.プリオラート

プリオラート・イドゥス バィ・リャック(Priorat Idus Vall Llach)

濃い真紅の色調。黒系ベリーのアロマと、スミレのような花の香りやスパイシーなニュアンスがあります。柔らかい口当たりに、口に含んだときに続く酸とタンニンが調和し、優雅さが楽しめます。

製造者のセジェール・バィ・リャック(Celler Vall Llach)は90年代始めにプリオラートのポレラ(Porrera)に設立されました。ワイナリーでのすべてのぶどう畑で収量制限をしながらぶどうを育て、常に量よりも質を重視しています。また、生産量の拡大や成長にも制限を設け、各工程の独自性のある統制を徹底しています。それらのこだわりとプリオラート地方のユニークな特徴から、魅力的で特別なワインを提供することを信念としたワイナリーです。

 

D.O.ドミニオ・デ・ヴァルデプーサ(Dominio de Valdepusa)

マルケス・デ・グリニョン プティ・ヴェルド(Marqués de Griñón Petit Verdot

 

深く濃いルビー色で、花や高貴な樽、熟した森の果実、スパイス、シナモン、タバコ、チョコレートなど、複雑なアロマが楽しめるプティ・ベルド100%のワイン。スモーキーでスパイシーな黒系ベリーの味わいを感じ、重厚。ボディはしっかりしていて、ほど良い肉感的なタンニンも感じられます。余韻も長く、深みと充実した凝縮感のある滑らかで繊細な極上ワインです。

ドミニオ・デ・バルデプーサは指定された畑から取れるぶどうだけを使用したワインに限定されて使用できる原産地呼称で、その他のワイン、その他のぶどう畑のものには使用できません。認定されているぶどう栽培面積は40.6148ha。最大収穫量は、カベルネ・ソービニオン(Cabernet Sauvignon)が10,000kg/ha、プティ・ベルドーが12,000kg/ha、シラー(Syrah)で13,000kg/haと定められています。そのほか、最大搾汁率や最低熟成期間など、厳しい規定が定められています。また、ぶどう栽培、ワイン製造に関してはマルケス・デ・グリニョン侯爵のみに限定されています。

 

まとめ

スペインのワイン法について少し深掘りするとともに、おすすめの原産地呼称のスペインワインも紹介しました。ワイン法について知ると、ワイン選びがさらに楽しくなるはずです。この記事がみなさんのワイン選びの参考になれば幸いです。

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