日本ワインとは?代表的な産地やぶどう品種などを解説 日本ワインとは?代表的な産地やぶどう品種などを解説

日本ワインとは?代表的な産地やぶどう品種などを解説

日本ワインというとみなさんはどのようなワインのことだと思われるでしょうか?

世界ではスペインワインのD.O.(Denominación de Origen、デミナシオン・デ・オリヘン/原産地呼称制度)、フランスのAOP(Appellation D’origine Protégée、アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ/原産地名称保護法)などのルールによってワインを定義付け、その品質を守ってきた歴史があります。その点、日本では長年、そのようなルールがなく、ワイン造りに関しては世界的に見ると後進国、としてとらえられてきた、という経緯があります。

しかし近年、日本でも世界的なコンクールで優秀な成績を収めるワインも登場。カジュアルなテーブルワインから本格派のワインまで、さまざまな美味しいワインが造られているのです。

今回は日本ワインについて、国産ワインとの違いや代表的な産地、ラベル表示や代表的なぶどう品種なども含め解説していきます。

日本ワインと国産ワインの違い

2015年、国税庁が日本で初のワイン法となる「果実酒等の製法品質表示基準」が制定され、2018年から施行されるまで、日本ワインを定義するルールがありませんでした。それまでは「日本ワイン」と表示されていても、海外から輸入したぶどうや濃縮果汁を使った商品であるケースも存在していたのです。

「果実酒等の製法品質表示基準」では、「日本ワインとは国産ぶどうのみを原料とし、日本国内で製造された果実酒」との基準を設けました。以降、「日本ワイン」は100%国産のぶどうを使って国内で造られた果実酒、「国産ワイン」は海外から輸入したぶどうや濃縮果汁を使って国内で造られた果実酒および甘味果実酒を指すようになりました。

日本ワインの産地

南北に長い日本列島にある北海道から沖縄までの47都道府県のうち、ほとんどの都道府県にワイナリーがあります。そのなかで、日本ワインの生産量とワイナリー数、ともに最も多いのが山梨県です。次いで、長野県、北海道、山形県、岩手県、と続いています。これらの産地はワイン用ぶどう栽培に適した、朝晩の大きな寒暖差と冷涼な気候という条件を満たしているのです。

上位3道県のそれぞれの産地の特徴を説明します。

山梨県

山梨県は日本ワイン発祥の地と呼ばれ、1870年ごろからワイン醸造を行っていた記録が残っています。ワイナリー数は約90カ所あり、日本ワインの生産量は全国の約30%を占める日本ワインを代表する産地です。朝晩の寒暖差が特に大きく、生食用ぶどうの産地としても知られる甲府盆地に数多くのワイナリーが集中しています。

2013年、ワインでは日本で初めて、地理的表示として認められたのが山梨です。地理的表示制度(GI)とはその土地の生産物を財産とし、産地の表示を法的に認める制度です。山梨のGIが認定されたことをきっかけに、それまでテーブルワインとして認識されていた日本ワインが世界に通用するワインとして知られるようになりました。

長野県

全国の約24%の日本ワイン生産量があります。降雨量が少なく朝晩の寒暖差は大きく、多種多様なワイン用ぶどう品種が栽培されています。

2021年にワインの地理的表示として「長野」が指定されました。

北海道

梅雨がない北海道は年間通して湿気が少なく、しかも寒暖差も大きいのでワイン用ぶどう栽培には非常に適した産地です。ドイツやフランス北部など、ヨーロッパ北部の白ぶどう品種を多く栽培し、日本のほかの産地では栽培が難しいとされるピノ・ノワールの栽培にも成功しています。

2018年に山梨県に次いで2番目に、ワインの地理的表示として「北海道」が指定されました。

参照:「国内製造ワインの概況(平成30年度調査分)

日本ワインのラベル表示

「果実酒等の製法品質表示基準」が定まって以降、日本ワインのラベル表示には以下のような項目が設けられるようになりました。

日本ワインについて

「日本ワイン」と表示できます(表ラベルは任意、裏ラベルは義務)。

ワインの産地名

その地域のぶどうを85%以上使用するとともに、醸造地がぶどうの産地内にある場合に表示できます。

ぶどう収穫地名

その地域で収穫されたぶどうを85%以上使用した場合表示できます(GI Yamanashiの場合は山梨県産100%)。

醸造地名

地名の中にワイナリーがある場合表示できます。ただし、ぶどうの収穫地ではないことを示す必要があります。

ぶどうの品種名

  • 単一品種

85%以上使用で表示できます(GI Yamanashiの甲州種の場合は100%)。

  • 2品種

合計で85%以上使用している場合、使用割合の多い順に表示できます。

  • 3品種以上

合計で85%以上使用している場合、使用割合の大きい順に使用割合と合わせて表示できます。

ぶどうの収穫年

同一収穫年のぶどうを85%以上使用した場合表示できます。

日本ワインの代表的なぶどう品種

日本ワインで使用される代表的なぶどうの品種を紹介します。

甲州

甲州は日本で最も多くワインの原料に使われている白ぶどう品種で、生食もされます。多くの白ぶどうは果皮が黄緑色ですが、甲州は薄い赤紫色です。香りは全体的に控えめで、スパイス香が特徴。かつてはすっきりと仕上げるのが主流でしたが、渋みやコクを引き出した製法なども流行、さまざまなスタイルに仕上がる品種としても注目されています。

甲州は日本で1300年ほどの長きにわたり栽培されてきたと考えられています。近年の研究で、ヴィテス・ヴィニフェラ種(Vitis Vinifera)と中国の野生種であるヴィティス・ダヴィーディ種(Vitis avidii)の交雑種であることが判明しました。

マスカット・ベーリーA

マスカット・ベーリーAは日本で最も多く赤ワインの原料に使われている黒ぶどう品種です。キャンディのような甘い香りが特徴で、樽なしや樽熟成、ロゼやスパークリングなど、さまざまなスタイルのワインになります。

「日本のワインの父」とも呼ばれる、新潟県の岩の原葡萄園創始者の川上善兵衛が発明した品種として知られています。ヴィティス・ラブルスカ種(Vitis Labrusca)のベーリー(Bai-ley)とヴィティス・ヴィニフェラ種のマスカット・ハンブルグ(Muscat Hamburgh)を交配してできた品種で、生食用と醸造用の兼用品種です。耐病性と耐湿性、耐寒性にすぐれ、山梨県を中心に、東北から九州まで広範囲で栽培されています。

ナイアガラ

1872年にアメリカでコンコード種とキャサディ種を交雑して生み出された白ぶどう品種です。前述の川上善兵衛が1893年ごろに初めて日本に導入しました。近年は北海道での作付けが最大となっています。

黄緑色の果皮に20度を超える糖度の高さ、甘味の強い果肉、豊富な果汁と豊潤な香りが特徴。マスカットや洋梨、パイナップルのような甘く華やかな果実香のするワインに仕上がります。

コンコード 

古くからアメリカ大陸に自生していたラブルスカ種の中から、1849年にアメリカで選抜育成されて生まれました。日本では明治時代から栽培され、長野県が主な産地として有名です。

いちごのような甘い香り、豊かな果実味が特徴で、極甘口から辛口までの幅広いスタイルの赤ワインに仕上がります。日本ではそのほとんどがワイン用に使われますが、アメリカなどではジュースやジャム、ゼリーなどの原料にも使われます。

デラウェア

アメリカのオハイオ州(Ohio)デラウェア(Delaware)で発見されたぶどうで、ヴィティス・ラブルスカ種の一種で、アメリカ系品種とヨーロッパ系品種の交雑種と考えられています。日本では1872年ごろから山梨県で栽培され始め、山形県、山梨県、大阪府などで広く栽培されています。

赤紫の果皮と20度ほどの糖度の高さが特徴で、種無しのものが多く出回り、昭和30年代頃は生食用として人気を誇りました。その見た目から赤ワイン用に見えますが、デラウェアは白ワインの原料に使われます。独特の香りとすっきりした酸が特徴で、近年はスパークリングワインの原料に用いられることが増えました。

まとめ

日本ワインについて、国産ワインとの違いや代表的な産地、ラベル表示や代表的なぶどう品種なども含め解説しました。

日本ワインとスペインワインを飲み比べ、その違いやそれぞれの特徴を知る、という楽しみ方をしても良いかもしれませんね。

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