スペインワイン好きであればカヴァ(Cava)とシャンパン(Champagne)は同じ製法で造られることを知っている方は多いかもしれません。しかし、シャンパンとスパークリングワイン(Sparkling wine)の違いをはっきりと説明できるか、というとちょっと言葉に詰まる、ということはありませんか?
今回の記事ではスパークリングワインとシャンパンの違いについて説明するとともに、世界各地のスパークリングワインについて説明していきます。
スパークリングワインとシャンパンの違いとは?
結論から言うと、シャンパンはスパークリングワインの一種です。
スパークリングワインは一般的に、3気圧以上の炭酸ガスを含んだワインの総称のことです。3気圧以下のものは弱発泡性ワイン、と呼ばれ、なかでも0.5〜1気圧のものは微発泡性ワインと呼ばれます。
また、シャンパンはフランスのワイン産地の北限、シャンパーニュ(Champagne)地方で造られ、しかもフランスのAOC Appellation d’Origine Contrôlée(アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ/原産地統制呼称制度)で規定された条件を満たしたスパークリングワインのみが名乗ることができる名称です。
シャンパンを名乗るための条件は以下の通りです。- シャンパーニュ地方のマルヌ(Marne)県、オーブ(Aube)県、オート=マルヌ(Haute-Marne)県、エーヌ(Aisne)県、アルデンヌ(Ardennes)県の5県319の市町村で造られていること。
- ピノ・ノワール(Pinot noir)、ムニエ(Meunier)、シャルドネ(Chardonnay) の3種類、もしくはいずれかを使っていること。
- シャンパーニュ製法で造られていること。シャンパーニュ製法とは瓶詰めしたワインに酵母と糖を入れ密閉し、瓶内二次発酵させる方法です。
シャンパン以外のスパークリングワイン
シャンパン以外にも、世界各地には以下のようにさまざまなスパークリングワインがあります。
フランス
ヴァン・ムスー(Vin Mousseux)フランスではタンク内での二次発酵か瓶内二次発酵、またはガスを詰めたものかに関わらず、スパークリングワイン全般をヴァン・ムスーと呼びます。ヴァンはワイン、ムスーは泡という意味です。
クレマン(Crémant)シャンパーニュ地方以外で定められたフランスの特定の地域で、瓶内二次発酵で造られたスパークリングワインです。1975年にAOCを取得しました。シャンパンが5〜6気圧であるのに対し、クレマンは3.5気圧と優しい泡が特徴。クレマンとは泡が半分取り除かれた、という意味です。
クレマンを名乗れる産地は以下の通りです。
- クレマン・タルザス(Crémant D’alsace)
フランス北東部、ドイツ国境にあるアルザス地方の産地です。
- クレマン・ド・ブルゴーニュ (Crémant Bourgogne)
フランス東部のブルゴーニュ地方の産地です。
- クレマン・デュ・ジュラ(Crémant Jura)
フランス東部、スイス国境にあるジュラ地方の産地です。
- クレマン・ド・ボルドー(Crémant Bordeaux)
フランス南西部のボルドー地方の産地です。
- クレマン・ド・ロワール(Crémant Loire)
フランスの中央部を流れるロワール川流域の産地です。
- クレマン・ド・リムー(Crémant de Limoux)
フランスの南東部、地中海に面したランドック・ルーション地方(Languedoc-Roussillon)の産地です。
- クレマン・ド・ディー(Crémant de Die)
フランス南東部のローヌ川(Le Rhone)流域の産地です。
- クレマン・ド・サヴォワ(Crémant de Savoie)
フランス中南部、イタリアとスイス国境に接したアルプスの麓に位置するサヴォワ地方の産地です。
イタリア
スプマンテ(Spumante)
スプマンテはイタリアのスパークリングワイン全般を指す言葉です。Spumaはイタリア語で泡、の意味。
プロセッコ(Prosecco)
イタリア北東部、ヴェネト(Veneto)州トレヴィーゾ(Treviso)県周辺で主に造られるスパークリングワインです。プロセッコに使用が認められているぶどう品種は、85%以上のグレラと最大15%までのグレラ・ルンガ(Glera Lunga)、ヴェルヴィゾ(Verviso)、ペレラ(Perara)、ビアンチェッタ(Bianchetta)などの土着品種。また、シャルドネ(Chardonnay)やピノ・ノワール(Pinot Noir)などもブレンドすることが認められています。
プロセッコは大きな密閉式タンクで二次発酵させるシャルマ(Charomat)方式で造られます。シャルマ方式は瓶内二次発酵に比べると一度に大量生産できるため、コストの削減が可能です。
フランチャコルタ(Fraciacorta)
北イタリアのロンバルディア(Lombardia)州東部のフランチャコルタ地域内で造られるスパークリングワインです。使用が認められている品種はシャルドネ、ピノ・ネーロ(Pinot Nero)、ピノ・ビアンコ(Pinot Bianco)、エルバマット(Erbamat)の4種類。二次発酵の方法はシャンパンと同じ、瓶内二次発酵です。
ランブルスコ(Lambrusco)
ロンバルディア州マントヴァーノ(Mantovano)とエミリア・ロマーニャ(Emilia-Romagna)州レッジオ・エミーリアナ(reiggio Emilla)とモデナ(Modena)という地域で造られる、1〜2.5気圧の天然微発泡ワインです。実に100以上もの亜種のあるランブルスコ種を使って造られ、甘口から辛口まで幅広いバリエーションがりあります。ランブルスコは発泡性のワインには珍しい赤が主体ですが、ロゼや白もあります。田舎方式(メトード・リュラル、Méthode Rurale)という、発酵途中のワインを瓶に入れ、発酵を続ける方式やシャルマ方式で造られます。
ドイツ
シャウムヴァイン(Schaumwein)
シャウムヴァインはドイツのスパークリングワイン全般を指す言葉です。Schaumはドイツ語で泡、の意味。
ゼクト(Sekt)
ブレンドするワインに生産国や生産年などの規定がなく、3,5気圧以上、アルコール度数10%以上のスパークリングワインが名乗れる名称です。
ゼクトで認められている製法は以下の通りです。
シャンパンやクレマンなどと同じ工程の瓶内二次発酵。
一部簡略化された瓶内二次発酵。
スペイン
エスプモーソ(Esupumoso)
エスプモーソはスペインのスパークリングワイン全般を指す言葉です。Esupumeはスペイン語で泡、の意味。
カヴァ(Cava)
シャンパンと同じ製法で造られるスペインのスパークリングワインです。カヴァの名称を名乗るためには地理的産地の規定はなく、製法のみが定められています。そのため、生産地は主にカタルーニャ(Catalunya)ですがリオハ(Rioja)、アラゴン(Aragon)、ヴァレンシア(Valencia)、バスク(Basque)など広範囲に分布しています。Cavaはカタルーニャ語でセラーの意味で、ワインの熟成に洞窟(Cave)が使われていたことが由来しています。
カヴァで使用が認められているぶどう品種は以下の9種類です。
白ぶどう
- チャレッロ(Xallero)
- マカベオ(Macabeo)
- パレリャーダ(Parellada)
- シャルドネ
- スビラ・パレン(Subirat Parent)
黒ぶどう
- ガルナッチャ(Garnacha)
- モナストレル(Monastrell)
- トレパ(Trepat)
- ピノ・ノワール
カヴァは手間やコストのかかる瓶内二次発酵で造られるものの、シャンパンに比べると非常にお求め安い価格になっています。クオリティをそのままに、美味しいスパークリングワインをお手頃に飲みたいという時にはカヴァがおすすめです。
おすすめのカヴァ
アグスティ・トレジョ・マタ ブルット・ナトゥレ グラン・レセルバ(Agustí Torelló Mata Brut Nature Gran Reserva)
カタルーニャのペネデス(Penedés)にある、1950年創業の家族経営のボデガ(Bodega)アグスティ・トレジョ・マタによるヴィーガンの辛口カヴァです。使用されている品種はマカベオ、パルディージョ、チャレッロ。36ヶ月の長期瓶内熟成により、穏やかできめ細やかな泡を楽しむことができるカヴァです。バターや焼きたてのパンなどのイースト香、ドライフルーツのテイストも感じられます。キレのある辛口で、長く続く余韻も特徴。
まとめ
スパークリングワインとシャンパンの違いについて説明するとともに、世界各地のスパークリングワインについて説明しました。シャンパンやカヴァ以外にも、さまざまスパークリングワインがあることがおわかりいただけたのではないでしょうか。スペインワインを楽しみつつ、さまざまなスパークリングワインにも挑戦していただければと思います。