オリーブオイルはイタリアンの流行と共にメジャーになったので、オリーブオイルといえばイタリア産、というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
ですが、世界的にはスペイン産オリーブオイルも大きな位置を占めています。
この記事では、オリーブオイルの種類や作り方をご紹介すると共に、スペイン産オリーブオイルの魅力に迫ってみたいと思います。
オリーブオイルとは?
オリーブオイルを選ぶ時、エクストラバージンオリーブオイルの方がなんとなく高級そうで身体に良さそうだから、という漠然としたイメージで購入している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
IOC(国際オリーブ理事会, International Olive Council)では、下の図のような区分でオリーブオイルを定義しています。
バージンオリーブオイル(Virgin olive oil)
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オリーブの実を機械などで絞っただけで、オリーブの洗浄、デキャンテーション、遠心分離、ろ過以外に手を加えていないオイル(「一番搾り」とも呼ばれる)
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エクストラバージンオリーブオイル
Extra virgin olive oil |
遊離脂肪酸が100gあたり0.8g以下
(酸度0.8%以下) |
バージンオリーブオイル
Virgin olive oil |
遊離脂肪酸が100gあたり2g以下
(酸度2%以下) |
オーディナリーバージンオリーブオイル
Ordinary virgin olive oil |
遊離脂肪酸が100gあたり3.3g以下
(酸度3.3%以下) |
ランパンテバージンオリーブオイル
Lampante virgin olive oil |
遊離脂肪酸が100gあたり3.3g以上
(酸度3.3%以上) ランパンテとは「ランプ用」の油という意味で、このままでは食用には適さない |
オリーブポマースオイル(Olive pomace oil )
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オリーブを絞ったポマース(搾りかす)から溶剤などを使って抽出したオイル
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未精製(クルード)オリーブポマースオイル
Crude olive pomace oil |
精製または工業製品に使うことを目的とした
ポマースオイル このままでは食用には適さない |
精製(リファインド)オリーブポマースオイル
Refined olive pomace oil |
未精製オリーブポマースオイルを精製したオイル
遊離脂肪酸が100gあたり0.3g以下 (酸度0.3%以下) |
オリーブポマースオイル
Olive pomace oil |
精製オリーブポマースオイルとバージンオリーブオイル をブレンドしたオイル
遊離脂肪酸が100gあたり1g以下 (酸度1%以下) |
IOCに比べるとJAS(日本農林規格)の定義はかなりゆるく、エクストラバージンオリーブオイルに関する規定はありません。
食 用 オ リ ー ブ 油
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オリーブの果肉から採れた油で、食用に適するよう処理されたもの
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オリーブ油 |
酸価2.0以下(酸度に換算すると1.006%以下) |
精製オリーブ油 | 酸価0.6以下(酸度に換算すると0.3018%以下) |
ご紹介した2つの定義は、オリーブオイルの品質に関する取り決めなので、味に関しては触れられていません。
そのため、以前はIOCの基準としては問題がなくても、実際に食べると風味の物足りないオリーブオイルも存在していました。
現在ではオリーブオイル鑑定士(スペインではCatador,カタドール)が味や香りを判定する官能検査が加えられているため、数値は正常でも品質が良くない製品は、エクストラバージンオリーブオイルと認められなくなりました。
日本はIOCに加盟していないため、官能検査は義務化されていません。
ですが、日本で販売されるオリーブオイルの質の向上を図るため、日本オリーブオイルソムリエ協会がオリーブオイルソムリエを育てたり、国際オリーブオイルコンテストを開催したりするなど独自の取り組みを行っています。
オリーブオイルの作り方
オリーブオイルは下の図のような工程で作られます。
①収穫 |
機械でオリーブの木を揺すり、オリーブの実を葉や枝がついた状態で、下に敷いたネットへ降り落とします。熊手のような形の長い棒などで手摘みする場合もあります。 |
②洗浄 |
搾油工場に運ばれたオリーブの実は、葉や枝を取り除き、水洗いされます。
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③粉砕・攪拌(かくはん) |
オリーブの実を機械や石臼でペースト状にすりつぶした後、巨大なブレンダーでペーストを練り、オイルの香り成分を引き出します。攪拌する時の温度が27度未満の場合、「コールドプレス(Cold-press,スペイン語ではエンフリオ,En frío)」と呼ばれます。 |
④抽出 |
圧搾機や連続式の遠心分離機(デキャンタ,Decanter)を使って、オイルを抽出し、搾りかすや水分と分けます。次に垂直型の遠心分離機にオイルを入れ、わずかに残った水分や浮遊物を取り除きます。 |
⑤貯蔵 |
完成したオイルは、15~18度に温度が保たれ、光も遮るステンレスタンクに、瓶詰めされる直前まで貯蔵されます。 |
⑥ろ過 |
瓶詰めする前に、フィルターのついた機械を使って、澱(おり)を取り除きます。バージンオリーブオイルは、ろ過しないで、瓶詰めすることもあります。そのオイルは、「未精製オイル(クルードオイル)」(Crude oil ,スペイン語ではエンラマ,En rama)」と呼ばれます。 |
⑦瓶詰め |
熱や直射日光、空気などを遮る、ガラス、プラスチック、金属製の容器に瓶詰めすれば完成です。 |
オリーブは、摘んだ瞬間からどんどん質が落ちていくので、できれば12時間以内に抽出まで行うのがベストです。多くのメーカーは、少なくとも収穫から72時間以内にオイルを絞ることを目標にしています。
スペイン産オリーブオイルについて
スペイン産のオリーブオイルは、価格がリーズナブルな割に高品質なのが特徴です。
スペインは、オリーブオイルの生産量・輸出量共に世界一で、アンダルシア州(Andalucía)のハエン(Jaén)では世界中の生産量の25%を製造しています。
スペイン産オリーブオイルの生産地として知られているのは、リェイダ(またはレリダ,Lérida)を中心とした北部のカタルーニャ地方(Cataluña)とハエンを中心とする南部のアンダルシア地方です。
特に、アンダルシア地方は、ローマ帝国が支配していた時代から、オリーブの一大産地として知られていました。
原産地呼称制度(PDO,Protected Designation of Origin)や有機栽培認証を他の国に先駆けて導入したスペイン。現在、原産地呼称を受けている地域は、29ヶ所にのぼります。
原産地呼称の認証を受けるには、その地域で生産される特定のオリーブの品種を材料として使い、決められた製造方法でオリーブオイルを作らなければなりません。
スペイン産オリーブの品種
スペインでは200種類以上のオリーブが栽培されています。
全般的に、北部のオリーブオイルは味が軽めで、南部のオリーブオイルは味が濃厚な傾向にあります。
では、スペインで栽培される代表的なオリーブの品種をご紹介しましょう。
ピクアル(Picual)
スペインで最も栽培されている品種です。
アンダルシア州のハエンを中心に、コルドバ(Córdoba)やグラナダ(Granada)、カスティーリャ・ラ・マンチャ州(Castilla-La Mancha)などでも栽培されています。
重さ2.5~3.5gの黒オリーブで、少し緑がかったオイルは風味が強く、フルーティーかつ多少苦みのある味が特徴です。
高温でも酸化しにくいので、魚のフライなどの調理に向いています。
コルニカブラ(Cornicabra)
スペインで2番目に多く栽培されている品種です。「ヤギの角」のような形をしていることから、この名前がつきました。
カスティーリャ・ラ・マンチャ州原産。
先がとがった卵型で、重さは3~3.5g。強い芳香とフルーティーで濃厚な味が特徴で、かすかに苦みも感じられます。
他の品種のオリーブオイルとブレンドして使われることも多いです。
オヒブランカ(Hojiblanca)
アンダルシア州原産。オヒブランカは、スペイン語で「白い葉」を意味します。
卵型で、重さは2~4g。オリーブオイルの原料だけでなく、食用(テーブルオリーブ, Table olive)としても使われています。
野菜のような香味が特徴で、甘さの中にわずかに苦みやコショウのようなピリッとした味わいも感じられます。
アルベキーナ(Arbequina)
カタルーニャ州のタラゴナ(Tarragona)とリェイダ原産。
18世紀、リェイダの南・ガリゲス地方(Les Garrigues)にあるアルベカ(Arbeca)の町をメディナセリ(Medinaceli)公爵が統治した時に持ち込んだ品種なので、この名がつきました。
重さ1~2gの小粒のオリーブで、アーモンドやバナナのようなフルーティーな香りとマイルドな口当たりが特徴。苦みや辛みはあまり感じられません。
おすすめのスペイン産オリーブオイル
どのオリーブオイルを選べば良いのかわからないけれど、おいしいスペイン産オリーブオイルを味わってみたい!と思われる方は、国際オリーブオイルコンテストで賞をとったオリーブオイルを選んでみてください。
https://olivejapan.com/contest/2020-winners
今回は国際オリーブオイルコンテスト受賞オイルの中で、特におすすめのオリーブオイルをご紹介したいと思います。
オレウム・アルティス 500ml(Oleum Artis(aceite de oliva vigen extra))
オレウム・アルティスを製造するパゴス・デ・ファミリア マルケス・デ・グリニョン(Pagos de Familia Marqués de Griñón)は、スペインで初めてビノ・デ・パゴ(Vino de Pago, 単一ぶどう畑限定高級ワイン)に認定された、1989年創業のボデガです。
イタリアでは名の知れた、マルコ・ムゲッリ博士の技術指導を受けた後、2003年にオリーブオイルの販売を開始しました。
マルケス・デ・グリニョンでは、オリーブの栽培に最新のデジタル技術(気象システムや自動的に水量を調整する灌漑(かんがい)システムなど)を導入し、最先端の設備で搾油しているので、高品質なエクストラバージンオリーブオイルを生産することができます。
ラテン語で「オイルの芸術」を意味するオレウム・アルティスは、国際オリーブオイルコンテストで2020年に金賞、2019年はミディアムテイスト部門で最優秀賞を受賞しています。
アルベキーナ種とピクアル種、コルニカブラ種のエクストラバージンオリーブオイルを、その年の生育状況を見ながら、絶妙なバランスでブレンドするオレウム・アルティス。
酸度は最大で0.14%と、新鮮さが際立っています。
刈りたての芝やグリーントマトのようなフレッシュな香り、ナッツのようなまろやかな味わい、適度な苦みや辛みが特徴で、抗酸化作用の高いポリフェノールもたっぷり含まれているので、健康志向の方にもおすすめのオイルです。
料理に使うのはもちろん、トーストしたパンにそのまま垂らすだけでも、充分においしさを味わえますよ。
スペイン産オリーブオイルを使った簡単おつまみ
スペイン産オリーブオイルを購入したら、ワインのお供におつまみを作ってみてはいかがですか。
ポルボ・ア・フェイラ(Polbo á feira)と
プルポ・ア・ラ・ガジェガ(Pulpo a la Gallega)
たこ(Pulpo)を使ったガリシア地方の伝統料理です。
たこを熱湯に2~3回つけたり上げたりして柔らかくなったら、料理ばさみで足の部分を適当な大きさにカット(大体1cmくらい)します。
「プルポ・ア・ラ・ガジェガ」は更にゆでたジャガイモを切り、たこの下に並べます。
そこに塩とパプリカパウダーをまぶし、オリーブオイルを垂らせば出来上がりです。
白ワインと一緒に召し上がれ。
エスカリバーダ(Escalivada)
カタルーニャ地方の家庭料理です。
ガスコンロに乗せた網などで、パプリカやナス丸ごとを転がしながら満遍なく焼いて、黒焦げにします。
しばらく蒸らしてから、黒い部分をむき、種やへたをとります。
縦にカットし、オリーブオイルや塩などお好みの調味料を振りかけたら完成です。
調味料の代わりに、ロメスコ(Romesco,パプリカやオリーブオイルなどを使ったソース)をかけて食べるのもおすすめです。
まとめ
2000年以降、バルが一般的になったこともあり、スペイン料理を食べる機会も増えつつあります。
ご家庭で手軽に作れるスペイン料理もありますので、家で料理される際には、ぜひスペイン産のオリーブオイルを使ってみてください。