ワインのアルコール度数は均一ではなく、種類によって4〜5%ほどの開きがあります。原料は全てぶどうのはずなのに、どうしてそのような違いが生まれるのでしょうか?改めてその理由を紐解いてみると、ワインという飲み物の奥深さにも触れることができるのです。
この記事ではワインによってアルコール度数や味わいが違う理由を解説し、アルコール度数や味わいがユニークなシェリー(Sherry)について紹介します。
ワインのアルコール度数の違いはなぜ生まれる?
ワインのアルコール度数の平均は10〜13.5%ほどです。ただ、なかには10%以下のアルコール度数の低いもの、あるいは13.5%〜15%以上と高いものも存在します。このようなワインのアルコール度数の違いはなぜ生まれるのでしょうか?
ワインは潰したぶどう中の糖分を酵母が分解することによりアルコールが生成されてできる飲料です。そのため、ぶどう中の糖分が多ければ多いほどよりアルコール度数が高くなります。ですから、ぶどうの糖度の高低差でワインのアルコール度数の違いが生まれると言えるのです。
ぶどうの糖度の違いは以下のような要因で生まれます。
ぶどうの品種
ぶどうは品種によって糖度の高低差があり、糖度の高いぶどうの品種からできるワインはアルコール度数が高くなる傾向があります。
ぶどうの収穫時期
ぶどうの糖度は収穫時期によって変わります。一般的にぶどうをできるだけ遅めに、つまり、熟した状態で収穫すれば同じ品種のぶどうでもより糖度の高いものが収穫できます。
ぶどうの産地
ぶどうの糖度は育った土地の日照時間や気候にも左右されます。例えば、温暖で日照時間の長い土地のぶどうと冷涼で日照時間が少なめの土地では、同じぶどうの品種でも前者のぶどうは成分が凝縮し、より糖度が高くなるのです。
ぶどうの処理
ぶどうを天日干ししたり、ぶどうを凍らせることによって、水分を蒸発させ、ぶどうの糖分濃度を上げ、甘口ワインを造る方法も存在します。
ワインのアルコール度数は発酵方法によっても違いが生まれる
ワインのアルコール度数は発酵方法によっても違いが生まれます。発酵方法がアルコール度数を左右するということは赤ワインと白ワインの例がわかりやすいでしょう。赤ワインは一般的にぶどう中の糖をすべて発酵させるのに対し、多くの白ワインではある程度糖が残った状態で発酵を止める方法を取ります。そのため、赤ワインは白ワインよりもアルコール度数が高くなる傾向があるのです。
ワインのアルコール度数を高める酒精強化とは?
酒精強化とはワインの醸造途中にブランデーなどのアルコールを添加し、アルコール度数を高める手法です。代表的な酒精強化ワインに、シェリー(Sherry)やポートワイン(Port Wine)があります。
ワインの味の違いはなぜ生まれる?
ワインは赤ワイン、白ワイン、ロゼワインと種類があり、辛口、甘口などの味の違いがあるのはもちろん、非常に複雑な味わいの違いを楽しむのがワインの醍醐味でもあります。
ワインの味の違いは以下のような要因で生まれます。
ぶどうの品種
ぶどうの品種の違いによって、ワインの味はかなり大きく異なります。主なワイン用ぶどうを使ったワインのそれぞれの味の特徴を紹介します。
カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)
赤ワイン用の黒ぶどう品種で世界最大の栽培面積を誇ります。粒が小さく、皮が厚めで種が大きいので果肉はほんの少ししかありません。ワインにするとタンニンが強く骨格がしっかりした味になります。また、黒系果実の凝縮感のある味わいと強めの酸も特徴です。
メルロー(Merlot)
カベルネ・ソーヴィニヨンの次に栽培面積の多い黒ぶどう品種です。カベルネ・ソーヴィニヨンよりもタンニンと酸が穏やかで、ガッチリとしたストラクチャーを感じさせる味わいです。
ピノ・ノワール(Pinot Noir)
ブルゴーニュ(Bourgogne)ワインの原材料として有名なピノ・ノワールは果皮が薄く、病気にも弱い品種としても広く知られています。酸とタンニンのバランスが良く、優雅で官能的な味わいになるのが特徴ですが、産地によって味に違いが出やすい品種でもあります。
シラー(Syrah)
力強いフルーティさとタンニン、ブラックペッパーのような香りが特徴です。ワインに骨格と味の濃さ、熟成能力を与えるためブレンド用品種として重宝されます。
テンプラニーリョ(Tempranillo )
スペインワインの代表品種、テンプラニーリョで造る赤ワインは繊細で控えめな味わいで酸が高めです。長期熟成によって香りとタンニンの豊かなワインになりますが、近年は柔らかなミディアムボディタイプのものも人気です。
シャルドネ(Chardonnay)
世界中で作られている国際的白ワイン用ぶどう品種です。栽培される土地の気候や土壌によって味が変わりやすく、温暖な気候の中ではトロピカルで甘い香りとなることで知られ、カリフォルニアなどのシャルドネはしっかりとした果実味とコクのあるワインになります。いっぽう、冷涼な気候では酸味がキリッとしたワインになります。
ソーヴィニヨン・ブラン(Sauvignon blanc)
シャルドネとともに非常に有名な白ワイン用ぶどう品種です。柑橘系の爽やかさとハーブのフレッシュな香りが特徴で、温暖な気候では南国のフルーツのような香りになり、冷涼な気候で育つとハーブ系アロマが強くなり、酸味のある辛口のワインとなります。
ヴェルデホ(Verdejo)
ヴェルデホはスペインワインで人気の白ワイン用ぶどう品種です。鮮烈な果実味とシャープな酸味、柑橘系とハーブのアロマも特徴です。また、ほんのりとした苦さも味わえます。
ぶどうの産地
前項目でも少し触れたように、ぶどうの糖度だけでなく酸味などの味の違いはぶどうが育った産地によっても表れます。また、海辺の産地で育ったぶどうはミネラル感のある味わいに育つ傾向もあります。
醸造方法
ワインの味は醸造方法によっても違いが出ます。
例えば赤ワインの醸造には果汁と共に果肉、果皮や種を漬け込む“醸し”という工程があり、この醸しの時間により、味わいや色合いの違いが出ます。また、醸しの後にはワインをタンク下部から抜き取るのですがこの際に圧をかけすぎず、ワイン自らの重さで引き抜かれた場合、繊細な味わいが保たれるとされています。
白ワインの場合であれば、主発酵の後に行われるマロラクティック発酵をするかしないかで味に大きな違いが現れます。マロラクティック発酵をした白ワインは酸味が柔らかになり、風味に深みが生まれます。逆に、ぶどうの味をそのままに活かしたい場合はマロラクティック発酵を行わず造られます。
熟成タンクの種類
ワインの熟成に使われるタンクの種類によってもワインの味に違いが出ます。木樽を使った場合はワインの味はより複雑になり、ステンレスタンクが使われるとフレッシュでぶどうの果実味が生かされたワインに仕上がります。
熟成の期間
ワインの味は熟成の期間によっても違いが生まれます。一般的に、熟成期間が長いほど、ワインの味はより複雑さと深みを増すと言われています。
アルコール度数や味わいがユニークなシェリー
天日干しのモスカテルを200年ものの樽で長期熟成した天然の極甘口シェリー『1822 モスカテル(Moscatel)』
モスカテル種の特徴である華やかで甘いアロマのシェリーです。甘いモスカテルを1~2週間天日干ししてから発酵させることにより、極甘口に仕上げています。最低でも10年以上の熟成期間を経ていますが、新鮮さのある香りと柔らかさのある飲みやすい味わいが特徴です。濃い目のトパーズのような色味に、ねっとりとした舌触り。ジャスミンのように豊かな花の香りと、フルーツコンポートのようなニュアンスがあり、余韻にはちょっぴり柑橘を感じることができるでしょう。
1822モスカテルの造り手はアンダルシア州(Andalucía)サンルーカル・デ・バラメダ(Sanlúcar de Barrameda)のワイナリー『エレデロス・デ・アルグエソ(Herederos de Argüeso)』です。このワイナリーでは創業から200年ほどの間、修理と修復を重ねながら古い樽を使い続けています。
まとめ
ワインによってアルコール度数や味わいが違う理由を解説しました。アルコール度数や味わいの違いの裏にあるワインの奥深さについても知っていただけたのではないでしょうか。