ぶどう生育と畑の1年の流れを紹介します ぶどう生育と畑の1年の流れを紹介します

ぶどう生育と畑の1年の流れを紹介します

ワインの味わいを決める要素として、最も重要だと言っても過言ではない、ぶどう。今回はワインの原料となるぶどうの生育と畑の1年の流れを解説するとともに、ワイナリーツアーにおすすめの季節と、特殊なぶどう栽培をおこなっている世界の島、こだわりの農法でぶどうを栽培しているワイナリーを紹介します。

 

ぶどう畑の1年

ぶどう栽培のスケジュールはその土地の気候やぶどう品種、栽培方法などによって多少の差はありますが、おおまかな1年の流れは以下のようになっています。

休眠期(12月〜3月)

ぶどうは気温が下がる冬季に休眠期に入ります。休眠期とは木の樹液の流れが止まり、成長や活動が休止する期間のことを指します。

休眠期にはぶどう栽培にとって非常に重要な「剪定」をおこないます。剪定は枝を切り、樹形を整える作業のことを指します。休眠期には樹液の流れが止まっているので、枝を切っても樹液が流れ出て、ぶどうに必要な養分が流れ出てしまうことがありません。そのため、休眠期に剪定をするのです。

剪定には次に出てくる芽の量を調節し、ぶどうの収量と品質を適切なものにする目的があります。また、剪定することによりぶどうの枝が成長する方向をコントロールし、作業しやすくする効果もあります。

休眠期には厳寒地では凍害のリスクがあるため、ぶどうの樹を雪の中に埋めることもあります。また、土壌の通気性や通水性を高めるため、畑の固まった土壌を天地返しする「耕転」の作業をおこなうこともあります。

 

萌芽・展葉・開花・結実期(3月〜6月)

気温が10度以上、日本であれば桜が咲く時期にぶどうは新芽が出る、萌芽の時期に入ります。萌芽した後に気温が下がるとせっかく出た芽が霜で凍る、遅霜の被害にあうこともあります。遅霜の対策として、ワラを燃やしたり、蝋燭を燃やしたりするワイナリーもあります。

芽がたくさん出てくると、今度は「芽かき」の作業に入ります。芽かきとは余分な芽を取り除く作業で、その後伸びる新梢の数を制限し、木の中の養分をコントロールすることと、ぶどうの房を均等に育てる目的でおこなわれます。

萌芽から70日ほど経つと、ぶどうは白い花を咲かせる「開花」の時期に入ります。そしてその後1週間ほどすると花がぶどうの実となるのです。開花の前には余分な蕾を取り除く「摘穂」の作業をして結実する数を制限し、実の品質を保ちます。

 

ヴェレゾン・成熟期(7月〜9月)

結実した実は夏の日差しのもと大きくなり、成熟していきます。そして、ぶどうの果皮が色づく、「ヴェレゾン(Véraison)」の時期に入ります。ヴェレゾンは気温、寒暖差、日照量、降雨量など様々な要素によって左右されます。

ぶどうの成熟期には結実した房を取り除き、残った房の品質を高める「摘房」や、葉を取り除いて日照量や風通しをコントロールし、病害予防をする「除葉」などの作業をおこないます。

 

収穫期(9月〜12月)

早いところでは9月頃からぶどうの収穫期を迎えます。一般的に、白ワインの原料となる白ぶどうは赤ワインの原料となる黒ぶどうより早く収穫期に入ります。収穫されるぶどうの糖度や酸度、色づきなどがワインの出来具合を大きく左右するため、収穫時期の判断はワイン造りにとって非常に重要な要素のひとつです。収穫されたぶどうは痛まないよう速やかに醸造所に運ばれます。

 

ワイナリーツアーにおすすめの時期

ワイナリーツアーにおすすめの時期はぶどう畑に新緑が溢れる5月から、ぶどうが収穫され、新酒が出る10月ごろです。また、スペインなどのヨーロッパの各地では9月前後に数々のワイン祭りが開催されます。ヨーロッパでワイン祭りとワイナリーツアーを両方楽しむなら、秋ごろもおすすめでしょう。

 

特殊なぶどう栽培をおこなっている世界の島

島は周囲の土地と隔絶した環境になりやすく、特殊な方法で農業がおこなわれるケースがあります。ここでは特殊なぶどう栽培をおこなっている島を紹介します。

 

カナリア諸島

アフリカ大陸の北西沿岸に位置する、スペイン領カナリア諸島(Islas Canarias)では15世紀に植民者たちが持ち込んだことをきっかけに、ぶどう栽培の歴史が始まりました。その後、火山環境に適応したぶどうが生き残ったこと、そして、世界的に蔓延したフィロキセラの影響を受けなかったことが原因となり、他では見られない特殊なぶどう栽培が現在にまでおこなわれているのです。

カナリア諸島のぶどう栽培が特殊である要素として、まずは他には見られない固有品種が多く存在することがあげられます。白ぶどうはBermefuela、黒ぶどうのListán negro、Listán rosado、Malvasía rosadaがカナリア諸島の固有品種で、現在でもワイン用に栽培されているのです。また、他にも島ごとに珍しい固有品種があります。

また、カナリア諸島のテネリフェ島(Tenerife)では非常に珍しい、コルドン・トレンサード(Cordón Trenzado)と呼ばれる方法で編み込み仕立てでぶどうを栽培します。コルドン・トレンサードはぶどうの古い枝と新しい枝を一緒に編み込み、地形の登り坂に向かって枝を伸ばす栽培方法です。この栽培方法をすると、枝の長さは平均して8m、長いものであれば20mにも達することがあります。

コルドン・トレンサードには農地を2つの用途に使えるという利点があります。ぶどうの収穫後に編み込んだ枝を解体してあらたな空間を作り、その空間でパパス(Papas/カナリア諸島の小型のジャガイモ)を栽培することができるのです。

 

サントリーニ島

エーゲ海に浮かぶギリシャ領の島、サントリーニ島(Santorini)ではぶどうを海からの強風と砂から守るため、木を低く仕立て、枝をぐるぐると巻いたかご状のクルーラ仕立て(Kouloula)で栽培します。また、サントリーニ島のぶどう畑では一切の感慨がおこなわれず、ぶどうの根が地下30〜40mほども伸びます。クルーラ仕立てで育ったぶどうは収量は少なくなりますが、凝縮したミネラル感が豊富なワインぶどうが育つとされています。

 

こだわりの農法でぶどうを作るワイナリーを紹介

こだわりの農法でぶどうを作るワイナリーは各国さまざま存在しますが、今回はスペインワインのワイナリーから厳選して紹介します。

 

エウダルド・マッサナ・ノヤ(Eudald Massana Noya)

 

エウダルド・マッサナ・ノヤはカタルーニャ地方で18世半ばからぶどう栽培をおこなっているワイナリーで、1917年からあらたな農法とカヴァ(Cava)造りを始めました。現オーナーのエウダルド氏は9代目にあたります。

約30haのぶどう畑を所有しているエウダルド・マッサナ・ノヤはビオディナミ農法でぶどうを栽培しています。ビオディナミ農法は化学肥料や農薬、除草剤を一切使わず、天体の運行に合わせ、自然にあるものを材料にした調剤を使って作物の生命力を高める農法です。

また、エウダルド・マッサナ・ノヤはぶどうに光合成を効率良くおこなわせるため、実と葉のバランスを取ることを重視し、摘房、徐葉をしています。また、循環型農法をおこない、持続可能性にも力を入れています。

 

アグスティ・トレジョ・マタ(Agustí Torelló Mata)

アグスティ・トレジョ・マタは1950年創業のカヴァ専門ワイナリーです。オーガニック農法でぶどうを育てていて、一部はヴィーガン、つまり、一切の動物性、または動物を犠牲によって成り立つ肥料や資材を用いない形での栽培をしています。また、ぶどうの収穫はすべて手摘みでおこなっています。

 

まとめ

ワインの原料となるぶどうの生育と畑の1年の流れを解説するとともに、ワイナリーツアーにおすすめの季節と、特殊なぶどう栽培をおこなっている世界の島、こだわりの農法でぶどうを栽培しているワイナリーを紹介しました。

ぶどうがどのように成長し、育てられているのかを知ると、ワインに対する考え方も少し変わってくるのではないでしょうか?お気に入りのスペインワインの原料となるぶどうの背景に想いを馳せてみながら味わってみる、という楽しみ方もおすすめです。

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