ワインの酸化と酸化熟成を楽しむおすすめのシェリー酒について ワインの酸化と酸化熟成を楽しむおすすめのシェリー酒について

ワインの酸化と酸化熟成を楽しむおすすめのシェリー酒について

ワインは抜栓し、すぐには飲みきれないことがあるかと思います。その場合、気になるのがワインの酸化です。 

「ワインは開けたらすぐに飲むきるべき!」と言われることがあります。いっぽう、

「ワインは少し置いておいた方が美味しくなる」と言われることもあるでしょう。一体、これはどちらが正解なのか、と頭を悩ませることもあるかと思います。ただし、これはどちらも正解、なのです。なぜかというと、ワインと酸化の関係は非常に複雑だから、なのです。

今回はワインと酸化について解説し、酸化熟成を楽しむおすすめのシェリー酒もあわせて紹介します。


酸化とは

買ってきたお惣菜やお菓子などを途中まで食べ、しばらく保管してから再び食べたらなんだか味や匂いが変わってしまっている、と感じた経験はないでしょうか?このような時、食品や飲料中の成分が「酸化」してしまっている、と考えられます。

酸化とは一般的に、物質中の電子が酸素と結びついて奪われ、別の物質に変化する化学反応のことをいいます。ただ、食品や飲料の電子が無くなる、といっても、イメージしにくいはずです。しかし、実際に酸化はさまざまな目に見える形で、私たちの身の回りにおこっています。

例えば、りんごを切ってしばらく置いておくと、果肉が茶色く変色しますが、これは酸化によるものです。また、釘が錆びたり、ゴム製の靴底が長年保管しておくとボロボロになったりするのも酸化が関係しています。

このような例を挙げると、酸化はただ食品や飲料の劣化を起こすというイメージしか持たれないかもしれません。しかし、紅茶や烏龍茶は酸化を利用することによって茶葉に良い香りを与えて作られるという例からもわかるよう、酸化は必ずしも悪い影響だけをもたらすわけではないのです。


ワインが酸化するとどうなるのか

ワインは酸化することによって大きな影響を受ける飲み物です。すでに述べたことからもわかるように、酸化はワインにとって悪い影響だけでなく、良い影響も与えます。

酸化がワインに与える悪い影響は、果実味や香りが失われ、味が平坦になることなどが挙げられます。また、酸化によってワインの色も変化します。そのため、赤ワインは酸化により色が薄くなり、白ワインは褐色に変化するのです。

いっぽう、酸化がワインに与える良い影響は、華やかな香りが生まれる、味に丸みが生まれる、などが挙げられます。

一般的に、スペインワインでは「Vino(ビノ)」、フランスでは「Vin de Table(ヴァン・ド・ターブル)」などに分類されるテーブルワインはできるだけ酸化を避け、早飲みすることが望ましいとされます。また、瓶内熟成によって造られるワインも酸化するとその特徴である芳香が失われるため、できるだけ空気に触れないようにして飲むべきなのです。

 

デキャンタージュとは

デキャンタージュはデキャンタと呼ばれるガラス容器にワインを移し替える手法です。ワインをほどよく酸化させることにより渋みの強いワインの味をまろやかにしたり、茹で卵や硫黄のような還元臭を無くして本来の果実の香りを引き出したりする効果があります。また、デキャンタージュにはワイン中に浮遊する澱を取り除く目的もあります。

ただし、ピノ・ノワール(Pinot noir)などの繊細な香りが特徴のワインでは香りが飛んでしまうため、デキャンタージュには不向きです。このようなワインを適度に酸化させるためにはグラスに注ぎ、軽く回すスワリングをおこなうべきでしょう。また、白ワインやカヴァなどのスパークリングワインもデキャンタージュには向きません。

 

酸化熟成による味わいの変化とシェリー酒の酸化熟成

ワインは木樽に入れ、熟成させる樽熟成がおこなわれることがあります。樽熟成の効果は樽の香りをワインに移すこと、と思われがちですが、樽熟成は実は、酸化による熟成も大きな目的のひとつなのです。

木樽はステンレスタンクなどと違い、適度に空気を通します。そのため、木樽に入れられたワインは適度に酸素に触れ、酸化するのです。

酸化熟成はワインに旨味やまろやかさを与え、色を安定させる効果があります。この酸化熟成を有効活用し、造られるワインとして代表的なものにスペインワインのシェリー酒(Sherry)が挙げられます。

シェリー酒の酸化熟成について説明するため、まずはシェリー酒がどのように造られるのか、解説していきます。

シェリー酒はアルコール度数が11〜12.5%ほどの辛口白ワインをベースにして造られます。そのため、まずはぶどうを圧搾し、果汁を搾り取ってアルコール発酵させます。そうしてできた辛口白ワインはブランデーを添加して酒精強化され、樽に入れられます。その際、ワインを満杯にはせずに樽の上部にあえて隙間を作ります。するとワインが空気に触れ、フロール(Flor)と呼ばれる産膜酵母が生まれるのです。フロールはワインが酸化するのを防ぐと同時に、シェリー酒独特の風味を与える効果があります。

シェリー酒のうち、フィノ (Fino)はフロールを残した、酸化熟成を行わないタイプの造りの辛口シェリーです。また、フィノと同じ製法のシェリーで、サンルーカル・デ・バラメーダ(Sanlúcar de Barrameda)で造られたものはマンサニーリャ(Manzanilla)と呼ばれます。

フロールはアルコール度数を17%にまで酒精強化すると消えてしまいます。すると、ワインは空気に触れることになり、酸化熟成されていきます。酸化熟成された酒精強化ワインは色合いが濃くなり、琥珀色からマホガニー色に変わります。また、香りはナッツなどのニュアンスを帯び、フルボディのオロロソ(Oloroso)になるのです。また、アモンティリャード(Amontillado)はフィノを酸化熟成させたフィノとオロロソの中間くらいのタイプのシェリーです。パロ・コルタド(Palo Cortado)もフィノを酸化熟成させて造られ、アモンティリャードの香りと、オロロソのボディとコクを兼ね備えています。

ちなみに、極甘口のシェリーはモスカテル(Moscatel)やペドロ・ヒメネス(Pedro Ximenez)

などの品種のぶどうを干して造られ、フロールを生成させないために酸化によって濃い色調をしています。

 

酸化熟成を楽しむおすすめのシェリー酒

『1822 オロロソ』

『1822 オロロソ(1822 Oloroso)』はまったりとした味わいと樽の香りが特徴のオロロソです。

深い琥珀色で酸化熟成による独特の芳醇な香り、ローストしたナッツを思わせるほのかなアロマが香り豊かです。香ばしいキャラメルや枯れ葉のニュアンスもあります。コクと力強さ、まったりとした味わい、余韻が長く樽の風味を感じさせる辛口シェリー酒です。

赤身肉料理やジビエとの相性が良く、ビーフシチューやゼラチン質の牛テール、ほほ肉とのペアリングもおすすめです。また、きのこ料理や熟成チーズとの相性も抜群です。

アルグエソ社はサンルーカル・デ・バラメーダで長い伝統を誇るワイナリーです。創業以来200年もの間、同じ樽を修復しながら使用し、豊かな味わいと香りが特徴のシェリー酒を造っています。

 

『1822 アモンティリャード』

『1822 アモンティリヤード(1822 Amontillado)』は強い後味が特徴のアモンティリヤードです。

トパーズのような色調、口当たりは滑らかで、長い余韻があります。深みと複雑さのある豊かな味わいで非常にバランスが良く、強い後味が特徴です。フロールの下での熟成と酸化熟成の2つの熟成により、濃厚な香ばしいナッツのアロマに、スパイシーさときのこのような野性味のある芳醇なニュアンスが生まれていますほのかに楽しめます。

マグロのグリルやきのこのソテー、ナッツを和えたブロッコリーなどとのペアリングがおすすめです。

 

まとめ

ワインと酸化について解説し、酸化熟成を楽しむおすすめのシェリー酒もあわせて紹介しました。

ワインと酸化の関係は非常に奥深く、複雑です。しかしだからこそ、ワインは面白く、魅惑的な飲み物なのかもしれません。

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