土着品種チャレロにゲヴェルツトラミネールの果皮を加えた無添加の個性派オレンジワイン
スペインワインを一躍有名にしたスパークリングワイン「カバ(Cava)」の産地として有名な「ペネデス(Penedès)」で、2人の女性醸造家が活躍するワイナリーがあります。
ワイナリーの名前はパレス・バルタ(Parés Baltà)。1790年から続く家族経営のワイナリーで、数十年にわたって有機農法を実践し、10年以上にわたりビオディナミ農法を実践してきた生産者です。
今回は、ペネデス(Penedès)の土着品種、チャレロに、圧搾したゲヴェルツトラミネールの果皮を加えて造られたオレンジワイン、マテリア・プリマ オレンジ (Materia Prima Orange)をご紹介します。
2人の女性醸造家
パレス・バルタ(Parés Baltà)は地中海沿岸とバルセロナから30kmほどの場所にある家族経営のワイナリーで、現在は2人の女性醸造家がワイン造りを担っています。
3代目であるジョアンとジョゼップのクシネ兄弟は、祖父と父から受け継いだワイン造りに真摯に向き合い、高品質なオーガニックワイン、ビオディナミワインを造り続けてきました。
1990年代初頭、ジョゼップは薬剤師であるマルタと、ジョアンは化学エンジニアであったマリア・エレナと結婚します。2人の妻は「伝統と革新を融合させたより良いワイン」を造るため、醸造学を学ぶことを決意し、タラゴナの大学へ進学します。
醸造学を修めたマリア・エレナとマルタはワイナリーに加わり、大きな変化をもたらしました。
これまでワイナリーでは行ってこなかったグリーン・ハーベスト(間引き)などの新しい技術の導入や、粘土製のアンフォラでワインを造るなどの伝統的で古い製法も取り入れたのです。彼女らの指揮の下でパレス・バルタが生産するワインの幅は大きく広がっていきます。
2人がワイナリーに加わった当初からオーガニックの認証は受けていましたが、マルタはビオディナミ農法にも挑戦したいと思うようになります。薬剤師から転身してワインメーカーとなった彼女は、当初ビオディナミに対して懐疑的だったと言います。しかし、ワイン造りに深く携わるうちに考えが変わり、現在はビオディナミ農法についての講師をするほど、この考えを大切に、ワイン造りを行っています。
ワインの世界を学びながら兄弟を支え、リード・ワインメーカーとなったマリア・エレナとマルタは、以後20年以上にわたりパレス・バルタのワイン造りを牽引しています。
ビオディナミ農法
ビオディナミ農法は、オーストリアやドイツで活動した思想家、ルドルフ・シュタイナーが1924年に提唱した有機農法の一種です。
化学肥料や除草剤を使用せずに育てられたブドウを使い、ブドウ畑をひとつの生命体として捉え、自然と宇宙のリズムに基づき栽培する方法です。パレス・バルタでは、ルドルフ・シュタイナーが提唱した5つの柱に基づいてビオディナミ農法を実践しています。
l 生態系の生物多様性を促進する
土壌の健康と肥沃度に良い影響を与え、生態系のバランスを保つことに貢献します。
l 自然と宇宙のリズム
植物の栽培において宇宙のリズムを考慮することが非常に重要であると考え、ブドウの木の剪定は樹液が根の部分に集まるときに行います。こうすることでブドウの木を長持ちさせ、バランスよく実をつけることができると考えられています。
l 土地に対する意識と愛情
土壌と環境のバランス、生物の多様性を強化するために、除草剤や殺虫剤などの農薬は一切使用しません。
l ビオディナミ製剤の応用
ビオディナミ製剤は、植物と動物の2つの部分から構成されたものを使用します。
ビオディナミの提唱者であるルドルフ・シュタイナーの考え方は、植物と動物の臓器の力を組み合わせることで、土壌自体が人の手を介さずに良くなっていくと提唱しています。
l 自然観察
自然を丹念に観察することで自然が必要とするものに気づくことができ、最高の実を結ぶのを助けることができると信じています。
パレス・バルタでは、ブドウの木の生命力を最大限に引き出すためにバイオダイナミック農法を採用し、羊やヤギといった動物を畑仕事に取り入れています。また、花の受粉を助け、より持続可能な世界を造るためにミツバチも利用しています。
奥が深いナチュールワインについて、詳しく知りたい方はこちらの記事で詳しく解説しています。
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マテリア・プリマ オレンジ
【商品情報】
商品名 |
マテリア・プリマ オレンジ (Materia Prima Orange) |
生産者 |
マテリア・プリマ(Materia Prima) |
地域 |
カタルーニャ州(Cataluña) |
ビンテージ |
2022 |
生産国 |
スペイン |
ブドウ品種 |
チャレロ(Xarel・lo)100%、ゲヴェルツトラミネール(果皮のみ) |
認証・規格 |
ユーロリーフ、EU有機認証有 |
おすすめ料理 |
キャロットラペ、クラゲの冷菜、赤貝のお造り、からすみ、ミモレットなど |
発酵容器 |
ステンレススティールタンク |
発酵期間 |
17日間 |
発酵温度 |
15 ~16℃ |
度数 |
12% |
テイスト |
ドライ |
飲み頃の温度 |
10∼12℃ |
容量 |
750ml |
マテリア・プリマ オレンジ(Materia Prima Orange)について
マテリア・プリマ オレンジ (Materia Prima Orange)は、ペネデスの生産者、パレス・バルタのナチュラルワインプロジェクト、マテリア・プリマ (Materia Prima)によって生まれました。マテリア・プリマ (Materia Prima)は、全ての工程において極力人の手を介さず、自然にワイン造りを行うプロジェクトです。
土着品種のチャレロに、ゲヴェルツトラミネールの果皮を4週間ほどスキンコンタクトするといった、独自の製法で複雑な芳香と風味を表現しています。
有機農法で栽培されたチャレロは、ブドウについている野生酵母のみで発酵が進められ、発酵後は清澄や濾過を行わずに瓶詰めされます。酸化防止剤(SO2)無添加で、オーガニックなだけでなくヴィーガンにも対応したワインで、歴史あるワイナリーの伝統と、常に向上し続ける生産者の情熱を味わえる一本です。
パレス・バルタ(PARES BALTA)ナチュラルワイン プロジェクト
パンデミックが本格化した 2020 年半ば、クシネ家はこれまで以上に一緒に集まり、話し合い、将来のプロジェクトについて構想する時間を持ちます。家族経営のクシネ家は長きにわたり有機農業とビオディナミを実践してきた実績があり、SO2を含まない様々なワイン醸造技術を実験しました。
こうして全ての工程でSO2を使用せず、人の介入を最小限に抑えるワイン造りを実践する「ナチュラルワインプロジェクト マテリア・プリマ」が始まったのです。
彼らの目標は常に「誰もが理解し楽しめるクリーン且つ高品質で表現力豊かなワインを造ること」です。マテリア・プリマはまさにそれを実現しています。
味わいの特徴
透明感のある鮮やかなアンバーカラー。アプリコットやパパイヤのような香りから、リンゴや若い黄桃のアロマが続き、ほのかにスパイシーでほろ苦いオレンジピールのニュアンスが現れます。温度が上がってくるとゲヴェルツトラミネールの特徴であるライチやドライマンゴーのような香りが出てきます。マテリア・プリマ オレンジ (Materia Prima Orange)は、オレンジワインならではの程よいタンニンとボディ、複雑さを楽しめるワインです。
おすすめのペアリング
酸味と果実味のバランスが良く、後味に程よいタンニンがあるマテリア・プリマ オレンジ (Materia Prima Orange)には、ルッコラやケール、ゴーヤなど、少し苦味のある野菜が良く合います。サラダや炒め物にして合わせてみてください。
他にも、赤ワインほど強くない渋みが、生春巻きやエビチリなどの中華料理にもマッチします。お肉と合わせるなら、あっさりとした味付けの鶏肉か豚肉が良いでしょう。付け合わせはワインの色に合わせて、シンプルなニンジンのローストやキャロットラペなどがおすすめです。食後のおつまみにはカラスミやミモレットなどが好相性です。
まとめ
今回は、ペネデスの生産者パレス・バルタのナチュラルワインプロジェクト、マテリア・プリマ (Materia Prima)によって生まれたオレンジワイン、マテリア・プリマ オレンジ (Materia Prima Orange)をご紹介しました。
薬剤師であったマルタは、ワイナリーに入社した当時、ワイン醸造の勉強と薬剤師としての仕事を両立させるのはとても大変だったと語っています。2人の女性のワインに傾ける情熱から生まれたオレンジワインを、ぜひ一度味わってみてください。