スペインの新酒ワイン解禁日について スペインの新酒ワイン解禁日について

スペインの新酒ワイン解禁日について

新酒というと、日本酒の新酒を思い浮かべる方は少なくないでしょう。しかし、ワインにも新酒は存在します。そして、スペインワイン好きな方でその解禁日を楽しみにしている、という方もいらっしゃることでしょう。

今回はワインの新酒解禁について、世界の新酒解禁日やスペインの新酒解禁の特徴などとともに解説していきます。スペインのワイン文化を深掘りするためにも非常に耳寄りな情報となっていますので、どうぞ最後までご一読いただければ幸いです。

 


ワインの新酒解禁とは?


新酒解禁について説明する前に、まずはワインの新酒とは何かについておさらいしておきましょう。

ワインの新酒はその年に収穫したぶどうで造ったワインのことを指します。ぶどうの収穫時期は北半球ではおおよそ9月から10月です。その後、ぶどうを圧搾してワインに仕込み、醸造が終わったワインを熟成させないタイプのものを年内に新酒として飲みます。新酒は、その年の収穫に感謝し、実りを祝うために造られてきました。そして、現在では新酒が出来上がり、リリースされることを解禁、と呼ぶのです。

日本を含む、世界中で有名な新酒として広く知られているものにボージョレ・ヌーヴォー(Beaujolais nouveau)があります。ヌーヴォーとはフランス語で「新しい」という意味で、フランスのブルゴーニュ地方(Bourgogne)ボージョレ地区で造られる新酒がボージョレ・ヌーヴォーなのです。

 

世界での新酒解禁日

ここからは、世界各国の新酒解禁日を紹介していきましょう。

 

フランスの新酒解禁日

フランスでは新酒の解禁日はかつて、11月11日の「聖マルティヌスの日」でした。しかし現在ではワイン法で11月第3木曜日の午前0時と定められています。そのため、ボージョレ・ヌーヴォーを含むフランス全土の新酒は同じ日に解禁となります。また、ボジョレー地区以外の場所では、新酒はヴァン・ヌーボー(Vin Nouveau)と呼ばれ、赤以外に白やロゼもあります。

 

イタリアの新酒解禁日

イタリアの新酒はヴィーノ・ノヴェッロ(Vino Novello)と呼ばれます。ヴィーノはイタリア語で「ワイン」、ノヴェッロには「新しい、出来立ての」という意味です。

ヴィーノ・ノヴェッロの解禁日はかつては11月6日でしたが、2012年から新DOP、IGPというワイン法によって10月30日0時1分と定められています。イタリアでは全20州でワインが造られ、ヴィーノ・ノヴェッロに対しては産地や品種に規定がありません。そのため、ヴィーノ・ノヴェッロには軽い新酒らしいものから重めのものまで、赤、白、ロゼと、さまざまなタイプの新酒が存在します。

イタリアでは新酒の解禁のお供には焼き栗(Castagne)が定番です。毎年行われている新酒祭では焼き栗とヴィーノ・ノヴェッロを楽しむことができます。

 

ドイツの新酒解禁日

ドイツでは新酒はデア・ノイエ(Der Neue)と呼ばれています。デア・ノイエはドイツ語で「新物」という意味です。ドイツの新酒解禁日は11月1日です。

デア・ノイエの歴史は古く、その起源を9世紀の初代神聖ローマ皇帝、カール大帝が定めた法律にまで遡ることができます。カール大帝は醸造所が期間限定で経営する居酒屋(シュトラウスヴィルトシャフト/Steausswirtschaft)に、新酒が出来上がると道に目印となるぶどうの葉などを吊るすように命じたのです。そして、人々が目印のある居酒屋に新酒を飲みに行くようになりました。

現在のデア・ノイエはワイン法で地理的表示保護ワインとして、指定地域内のぶどう品種を使用して造られます。ドイツは冷涼なため、デア・ノイエは白ワインが主流です。なかでもミュラー・トゥルガウ(Muller Thurgau)種から造られる、爽やかで軽い甘みを感じる味わいのものが大半となっています。ただし、近年は温暖化の影響もあり、赤ワインのデア・ノイエも増えてきています。

 

オーストリアの新酒解禁

オーストリアは首都ウィーンに毎年11月11日に解禁される新酒「ホイリゲ(Heurige)」が有名です。ホイリゲには農家が営む店や居酒屋、または1年目未満の新酒、という意味があります。ホイリゲは白がメインですが、赤も造られます。おもなホイリゲはブレンドの辛口微発泡白ワインで、フレッシュでフルーティーな味わいです。

オーストリアでは新酒の用意ができると、目印として居酒屋が軒先に松の小枝を吊り下げる光景を目にすることができます。

 

スペインの新酒解禁日

スペインでは新酒は「ビノ・ヌエボ(Vino Nuevo)」と呼びます。スペイン語でビノは「ワイン」、ヌエボは「新しい」を意味します。スペインの新酒解禁日は11月11日です。

スペインのワイン法にはビノ・ヌエボに関する規定はありませんが、ガルナッチャ(Garnacha)やテンプラニーリョ(Tempranillo))などの黒ぶどうを使ったタンニン控えめのフレッシュな赤ワインが主流です。

 

オーストラリアの新酒解禁日

南半球のオーストラリアでは2月から3月にぶどうは収穫時期となります。そして5月に世界で最も早い新酒の解禁を迎えます。オーストラリアの新酒はシャルドネ(Chardonnay)を使った辛口タイプやモスカート(Muscat)を使った甘口のフルーティなものまでさまざまです。

 

チリの新酒解禁日

同じく南半球のチリでは3月から4月にぶどうは収穫時期となります。そして、6月に新酒の解禁を迎えます。チリの新酒も赤や白だけでなく、スパークリングワインなどもあります。

 

日本の新酒解禁日

日本ワインでは唯一、新酒の解禁日が定められているのは「山梨ヌーヴォー」で解禁日は2008年から11月3日と定められています。これは、日本で絶大な人気を誇るボジョレー・ヌーボーによりも2週間早い解禁日です。

山梨ヌーヴォーの白ワインは山梨県産の甲州という、日本生まれのワイン用品種として国際的に認められたぶどうが使われます。いっぽう、赤ワインは国産の赤ワインで生産量が最も多い、山梨県産のマスカット・ベーリーAが使われます。

甲州のワインは甘口から辛口、スパークリングワインまでさまざまなスタイルのものが造られます。マスカット・ベーリーAはイチゴやキャンディーのような甘い香りと味わいで、タンニンが控えめでフルーティーな味わいが特徴です。

 

スペインのワイン新酒解禁の特徴


スペインの新酒解禁日は11月11日「聖マルティンの日(Día de San Martín)」、つまり、かつてのフランスの解禁日と同じです。ただ、聖マルティンの収穫祭は地方により12月に行われる場合もあり、ビノ・ヌエボの解禁日は12月の第1週前後とも言われます。聖マルティンの日は収穫祭の日、そして、日本の「立冬」にあたる日でもあり、昔から新酒とともにさまざまな行事が各地で開催されます。

また、聖マルティヌスの日は、スペインのマタンサ(Matanza)の日でもあります。マタンサとは冬に向けての豚肉の保存食準備の日です。

スペインを含むヨーロッパ各地では古くから、農作物の収穫がない冬場の食糧のため、豚をつぶして加工肉にする習慣があります。スペインの農村部では現在でもマタンサにチョリソー(Chorizo)、フエット(Fuet/白カビタイプのサラミ)、モルシージャ(Morcilla/豚の血を使ったブラッドソーセージ)、サルチチョン(Salchichon/サラミ)、カニャ・デ・ロモ(Caña de lomo/熟成ソーセージ)、ハモン(Jamón)などの加工肉を作り、新酒などとともに振る舞う祭りを各地で開催します。そして、バルやレストランのメニューには必須のこれら加工肉はマタンサのシーズンに作られるのです。

 

まとめ

ワインの新酒解禁について、世界の新酒解禁日やスペインの新酒解禁の特徴などとともに解説しました。

ワインの新酒はぶどうの味や香りをフレッシュに味わうことができます。ぜひ、スペインワインの新酒も味わう機会を持っていただけたらと思います。

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