人の歴史と共に長く愛されてきたりんごのお酒・シードルとは? 人の歴史と共に長く愛されてきたりんごのお酒・シードルとは?

人の歴史と共に長く愛されてきたりんごのお酒・シードルとは?

りんご果汁を発酵させて造るシードルはアルコールとは思えないフルーティな香りと爽やかな味わいで女性やアルコールが苦手な方を中心に人気があります。

しかし、その造り方や歴史についてはまだまだあまり知られていないのではないでしょうか。

今回は長い歴史の中で人々に愛されてきたりんごのお酒、[シードル]について解説するとともに、おすすめのスペイン産シードル 『バルべラン20(べインテ)マンサナス』を紹介します。

シードルとはどんなお酒?

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世界で一番古い歴史がある果物と言われているりんご。そのりんごを使うシードルの歴史もワインの歴史と同じくらい古く、欧米では紀元前からシードル醸造を行なっていたとされます。

紀元前1世紀にローマ帝国が誕生し、りんごの栽培技術がローマにもたらされると20種類以上のりんご栽培に成功したと考えられています。その後大きな農園で圧搾機が使われるようになり、りんごや他の果物をつぶしてお酒を造るようになったのではないか、と推察されています。この時代の果実酒は”シセラ(Cisera)”と呼ばれ、この名称がシードルの語源だとされているのです。

フランスのブルターニュ地方やノルマンディ地方では11世紀からシードルが造られ、産地として現在でも有名ですが、フランスにシードルの製法を伝えたのはスペインです。スペインでは9世紀に、前述したシセラ、という単語をりんごのお酒を意味する言葉として使っていた記録が残っているそうです。

ちなみにシードル(Cidre)はフランス語の名称で、現在スペイン語ではシドラ(Sidra)と呼ばれます。

シードルには発泡性のものと泡のないものがあります。また、甘口のイメージが強いかもしれませんが、甘口、中辛口、辛口に分類され、ワインと同じように食事とともに楽しむことができるお酒です。色合いも白っぽく透明なもの、赤みがかったものなどさまざま。ビタミンやミネラルが豊富で、ポリフェノールも含まれているので健康にも良いと考えられています。 

シードルの造り方

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シードル造りはまずはりんごの収穫から始まります。シードルの材料となるりんごは一般的な食用のものに比べ、サイズが小さめで酸味が強いのが特徴です。種類によっては少し苦味があるものもあります。また、単一の品種のりんごだけが材料に使われることもありますし、複数の品種のりんごを組み合わせてシードルにすることもあります。

収穫されたりんごは丹念に選別され、洗浄されます。洗われたりんごはミキサーやハンマークラッシャーなどの機械によって皮ごと粉々に砕かれます。りんごの果皮にはポリフェノールや天然酵母など、さまざまな成分が含まれるため、果皮は剥きません。

なお、収穫したりんごをしばらく外気にさらして熟成させてから破砕したり、地面に落ちたりんごをしばらく放置して熟成させてから使ったりする製法もあります。また、日本でシードルを造る場合、りんごの洗浄は必須のようですが、海外ではあえて洗浄を行わない場合もあります。

粉々になったりんごは搾汁機にかけられ、果汁を絞り出します。ちなみに、砕かれたりんごを搾汁する前に数時間放置し酸化させ、色と香りを出すキュバージュ(Cuvage)という製法もあります。

搾汁機には垂直方向にプレスする伝統的なバスケットプレスやステンレス製の筒の中に入ったゴム袋を膨張させ、壁にりんごを押し付けて圧搾するメンブランタイプ、スクリュープレスやベルトプレスのものなどさまざまな種類があり、種類によって搾られた果汁の味や香りにそれぞれ違いが出るようです。搾汁はその圧力や時間によっても結果に差が出るため、それぞれのメーカーが最も力を入れるポイントの1つです。

果汁を絞った後は発酵の段階に入ります。伝統的な醸造法ではタンクもしくは樽に果汁を入れ、果皮についた天然の酵母によってじっくり自然発酵させます。発酵が進むと茶褐色になったりんごの果肉が浮き出てくるので、別のタンクに果汁だけを移し替え、二次発酵させると果汁中の糖分がアルコールと炭酸ガスに変わり、シードルとなります。この製法では発酵と熟成に最低でも3ヶ月が必要になります。

しかし天然酵母による発酵は雑菌の繁殖で失敗する可能性もあります。そのため、現代的な醸造法ではタンクに入れた果汁を発酵が進まないように冷やし、あらためて培養した酵母を添加して発酵させます。

その場合、タンクに入れる前の果汁の糖度や比重、PH値などを測定し、綿密に計算を行った上で酸度調整や亜硫酸塩の添加などを行います。そしてペクチナーゼという酵素を添加してペクチンやタンパク質を沈殿させ、澄んだ果汁が上澄みとなるようにします。その上澄みを別のタンクに静かに移し替え、酵母を添加するのです。

酵母の添加後、温度によって差は出ますが1〜2日後には炭酸ガスが発生して泡が出てきます。発酵が全体の3分の1ほど進んだら、発酵助剤を加えます。

その後2〜4週間程度で一次発酵が終わるのですが、比重測定やアルコール分析を行って発酵が終わるタイミングを見計らいます。その後、しばらくの間落ち着かせ、滓引き(おりびき)を行います。滓引きとはタンクに入ったアルコール飲料をしばらくの期間放置し、滓を沈殿させ取り除く作業のことを指します。

滓引きし、澄んだシードルのベースを別タンクに入れ、糖や酵母をさらに加え瓶詰めし、温度管理した上で瓶内で二次発酵させます。その後1ヶ月ほどで発酵は終わり、炭酸が出ます。そしてさらに3〜6ヶ月ほど熟成させ、出荷となります。

ちなみに、酵母を添加する醸造法でもタンクの中で二次発酵させる醸造法もありますし、二次発酵なしで炭酸ガスを加えて造られることもあります。

シードルは発酵期間が長いほど辛口となり、短いと分解されない糖分が残るため甘口となります。また、発酵期間が長い方がアルコール度数は高くなります。

スペイン産アイスシードルのさきがけ

『バルベラン20(べインテ)マンサナス』

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はスペインのシードルの本場、カンタブリア海( Mar Cantábrico)沿岸にあるアストゥリアス(Asturias)州の山間部の町、サリエゴ(Sariego)の1998年設立のジャガール・ヴァルヴェラン醸造所(Llagares Valverán)によるスペイン初のアイスシードルです。

品名の「バルベラン」は畑区分名であり、「20(べインテ)マンサナス」は375mlのシードルに約20個分のりんご(Manzanas)が使われていることを表しています。

サリエゴの気候は冬の寒暖差が少なく、夏は暑いものの30℃を超えることはめったになく、四季それぞれで安定した気温が保たれるため、りんごの栽培に最適です。原産地呼称制度により、アストゥリアス原産のりんご果汁のみを使用したシードルにのみ名乗ることを許された「シードラ・デ・アストゥリアス(DO Sidra Asturias)」であるヴァルヴェラン20マンサナス。使用されているりんごの品種はラシャオ(Raxao)が25%、フエンテス(Fuentes)が10%、ベルディアロナ(Verdialona)30%、コジャオス(Collaos)10%、樹齢20〜22年のドゥロナ・デ・トレサリ(Durona de Tresali)25%の全部で5種類です。

10〜11月に熟したリンゴを手摘みで丁寧に収穫してすぐに洗浄し、切断機によってスライスされたりんごをさらに空気圧縮機によって種を潰さないようにして果汁を抽出。出てきた果汁をスティールタンクに入れてマイナス20℃に管理して果汁を冷凍し、水分と果汁を分離させ、濃縮果汁を作ります。摘出された濃縮果汁は土着酵母によって10〜12ヶ月かけてじっくりと一次発酵させます。その後別のスティールタンクに移し、シュール・リー(SurLie/滓引きをせずに熟成させること)しながら12ヶ月もの間じっくりと二次発酵させます。

透明感と輝きのあるイエローゴールドの色合い、香りはドライフルーツや桃のような高い糖度の甘いアロマで、ほのかにオレンジピールのような柑橘系の爽やかさと甘苦さのニュアンス。口当たりは滑らかで、蜂蜜のようなしっとりとした甘さが口に広がり、味わいはりんごの酸味と甘味のバランスが楽しめます。味わいと香りの余韻は長く続き、優しい酸味がアクセントとなりりんごらしいジューシーさも感じさせてくれます。フレッシュであると同時にコクもある甘口のアイスシードルです。

飲み頃の温度は4〜7℃。フォアグラのポワレやローストポークのハニーアップルチャツネ 、フレッシュアップルの薄焼きピッツア、シナモンフォカッチャや白カビタイプのチーズによく合います。

まとめ

りんごのお酒、シードル についてと、おすすめのスペイン産シードル、バルベラン20(べインテ)マンサナスについて紹介しました。

甘く、香りの良いりんごの季節はこれから。りんごがおいしくなる秋からのシーズンに、もっとシードルに親しんでみませんか?きっとその魅力に夢中になるはずです。

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