ワイングラスにはなぜ色々な種類がある?ワイングラスとワインの関係 ワイングラスにはなぜ色々な種類がある?ワイングラスとワインの関係

ワイングラスにはなぜ色々な種類がある?ワイングラスとワインの関係

ワインの味はグラスの形状によって大きく印象が変わると言われています。それではなぜ、グラスの形状でワインの味が変化するのでしょうか?

人が味を感じる仕組みやワイングラスの種類、ワイングラスを選ぶコツなどを解説し、ワイングラスとワインの関係について探っていきます。

再評価された「味覚地図」

「味覚地図」という言葉を耳にされたことがあるでしょうか。甘味・塩味・酸味・苦味を感じる舌の部分を図で表したものです。味覚地図では舌の先の部分で甘味、舌の先に近い両脇の部分で塩味、舌の奥に近い両脇の部分で酸味、舌の奥で苦味、舌の中央で旨味を感じるとされ、1894年のドイツの論文で発表されてから一気に定説として広がりを見せました。多くのソムリエやワインのプロフェッショナルも味覚地図を頼りに味わいの分析を行い、有名なワイングラスメーカー「リーデル」も味覚地図の理論をもとにグラスの形状設計を行っています。

しかし、その後の科学の発展により、人間は舌表面や軟口蓋、頬の内側に存在する「味蕾」で味を構成する化学物質を感知することによって味を感じることが明らかになります。そして、その味蕾一つひとつは全ての味を感知することもわかり、味覚地図は1990年ごろにいったん否定されるようになります。そして、「舌全体で味の基本となる5味、甘味・塩味・酸味・苦味・旨味を感じる」という説が一般的になりました。

ただ、2010年に発表されたある論文によると舌全体に5味を感じる箇所はあるものの、苦味以外は味覚地図を立証する実験結果が出たそうです。そして苦味は薄い場合には舌の先端で強く感じ、濃い場合は舌の奥の縁の部分で強く感じる結果となりました。また、旨味を強く感じる部位は酸味や苦味を感じる部位とほぼ同じだと言われています。

味覚地図の理論に則ると、苦味やタンニン、酸味をじっくりと感じたい場合には舌の奥の縁にワインが導かれるような形状のグラスを選び、酸味が強いワインを飲む場合には舌の縁に当たらないよう、飲み口からワインが細く口に流れ込むグラスにすると良いとされます。また、甘味をじっくりと感じたい場合には舌の先端にワインが当たるような形状のグラスが適しているのです。

ワインの味を変化させる重要な要素「温度」

ワインが舌のどの部位に触れるかで味の印象が変わることはここまででおわかりいただけたのではないでしょうか。

ワインの微妙な味わいを変えるのは、舌の部位の他にもあと1つ大切な要素があります。それは、温度です。ワインは温度によってもかなり大きく味が変化します。温度が高ければ甘みやアルコールをより強く感じ、温度が低ければ酸味や渋みをより強く感じられるのです。そのため、それぞれの適温で飲み切れるよう、ワインの種類ごとにグラスの大きさなどが違うのです。

ワイングラスの種類

ワイングラスの種類を紹介する前に、ワイングラスの部位ごとの名称を説明します。

リム

ワインを飲むときに口につけるグラスの縁の部分です。リムは薄ければ薄いほどワインの口当たりがよくなります。


ボウル

ワインが注がれる部分です。このボウルの形状によって、ワインの流れの早さや香りの立ち方が変化します。


ステム

ボウルを支える脚の部分で持ち手となる部分です。ボウルを直接持つことによってワインに熱が加わらないようにする役目もあります。最近ではこのステムのないワイングラスも多く見かけられます。

プレート

ステムとボウルを支える土台の部分です。お手入れの際に力加減を誤るととれてしまうやすいので注意しましょう。

ここからは多様な種類の中から主要となる5種のワイングラスを選んで紹介していきます。

赤ワイン用グラス

・ボルドー型

スコルニワイン  ワイングラス

カベルネ・ソーヴィニヨン種など、ボルドースタイル系のワインを飲むのに適しているワイングラスです。ボルドースタイルのワインは強いボディ、しっかりとして重厚なタンニンと味を特徴とするものが一般的です。このようなタイプのワインを口内に長く留めておくと、舌が疲れて味覚が麻痺し、味わい・印象ともに重苦しくなることがあります。


ボルドーグラスはボウルが卵型でリムが大きめなため口径差(ボウルの最大系と最小形の差)は小さく縦長、ボウル全体は大きめに作られています。傾斜が緩やかなため、グラスを傾けたときにワインの流れが速く、口に入ったときには舌の真ん中あたりに落ちやすい形状になっています。そのため、ワインを飲み込むのにもあまり時間がかからず、どっしりとした味のワインにすっきりとした印象を与える作用が働きます。口径差が小さいためワインの口内での広がりはやや控えめ。そのため、タンニンがまろやかになるのです。また、縦長なボウルはワインの香りが上に立ちやすく、ボルドースタイルのワインの力強い香りを爽やかに感じさせる効果もあります。


・ブルゴーニュ型

スコルニワイン  ワイングラス

ピノノワール種など、ブルゴーニュスタイル系のワインを飲むのに適しているワイングラスです。ブルゴーニュスタイルのワインはボルドーに比べるとタンニンが少なめでやや繊細。このようなワインが口内を素早く通り過ぎてしまうと繊細な味わいをとらえきれず、印象が弱くなってしまいます。


ブルゴーニュグラスはボウルが膨らんだカーブを持ちリムがすぼまっているため口径差が大きく、ワインの流れは緩やか。しかもリムに返しがついているため、舌先辺りにワインが落ちやすくなっています。そのため、ワインの口内での広がり方は大きくなり、飲み込むまでの時間は長くなり、繊細な味わいと酸をしっかりと味わうことができるのです。また、丸みのあるボウルはワインの香りを閉じ込めやすくする効果があり、繊細で複雑な香りをじっくりと楽しむことができます。

ブルゴーニュ型はエイジングが進み、繊細さを増したボルドースタイルのワインにも向いているとも言われています。

白ワイン用グラス

・万能型

スコルニワイン  ワイングラス

どんなワインの味もニュートラルに楽しませてくれるグラスで、特に白ワインにおすすめですが赤ワインでもその果実味や酸味、タンニンを味わうことができます。チューリップ型でほどよくすぼまったリムが特徴で、テイスティンググラスかそれよりも少し大きめなものがこの万能型にあたります。キャンティグラスと呼ばれるグラスはこちらの万能型にあたります。

スパークリングワインも泡立ちは楽しめないものの、十分に味わうことができます。

・モンラッシェ型

スコルニワイン  ワイングラス

ブルゴーニュ地方のグラン・クリュ(特級畑)のひとつであるモンラッシェは辛口白ワイン・シャルドネの最高峰として知られています。奥行きある味と豊富なミネラル、控えめな酸が絶妙なモンラッシェのようなワインを飲むのに適したこのグラスは、ボウル部分が大きく膨らんだ形と広めのリムが特徴です。カーブが緩やかでリムが広いのでワインはゆっくりと口内に広く行き渡たり、酸味をしっかりと感じさせます。モンラッシェ型は白ワインの華やかな香りを存分に引き出す効果があり、白ワイン用に1つだけグラスを用意するならモンラッシェ型、という意見もあるようです。

・フルート型

スコルニワイン  ワイングラス

シャンパーニュグラス、の名で親しまれている、スパークリングワイン用のこちらのグラスは細長い形状が特徴。ワインが空気に触れる面積が小さいため、炭酸を抜けにくくする効果があります。また、細長い形状はきめ細やかな泡が立ちのぼる様子をきれいに見せてくれ、立食パーティなどでもテーブルの上で場所を取ることもありません。

ただ、しっかりとした味わいのシャンパーニュには香りと味わいをじっくり楽しむため、フルート型ではなくボルドー型やブルゴーニュ型などを選ぶこともあります。

1つだけワイングラスを用意するとしたら?

「まだワイングラスを持っていない」という場合、1つだけグラスを用意するとしたらどの種類を選べば良いのでしょうか?

一般的には、赤ワイン用ではなく万能型を選ぶと良いと言われています。ただし、小ぶりな万能型は白ワインやデイリーワインの赤を飲むときにはバランスの良い味を届けてくれるのですが、しっかりしたボディの赤ワインを飲む機会が多い場合にはもう少し大きめのグラス、たとえば少し小さめのボルドー型などを選ぶと良いでしょう。

また、もし2種類用意する場合は少し小さめなボルドー型とブルゴーニュ型の2種類をおすすめします。この場合、ボルドー型では白ワインやスパークリングワイン、ボルドータイプなどの赤ワイン、ブルゴーニュではモンラッシェなどの高級白ワイン、ブルゴーニュタイプなどの赤ワインを飲む時に使います。

ワイングラスを選ぶコツとは

ワイングラスにはカッティングが施されたもの、色がついたものなど、多種多様な種類のものがあります。凝ったデザインのグラスにももちろんそれぞれ良さはありますが、ワイングラスにはワインの品質を目で見てチェックする役目もあるので、基本的には無色透明なシンプルなものを選ぶようにしましょう。

また、ステム部分の持ちやすさも重要です。細めで、手に合う長さのあるものがおすすめです。そして最も重要なのがリムの薄さです。リムの薄さ次第でワインの温度や口当たりがかなり変わってきます。ただし、リムが薄ければ薄いほどワインをダイレクトに感じることができるのですが、割れやすくもなるため取り扱いには注意が必要です。

まとめ

ワイングラスは古代ローマから使われてきたと言われていますが、現在のようなワイングラスの原型およそ50年前にできたとされています。それまではリムが広がったラッパ型が一般的だったのですが、大容量で口当たりの良いものを追求して完成したリーデル社の洋梨型のグラスで飲むワインの美味しさが評判となり、「ワインの個性を引き出すためのグラスづくり」の歴史がスタートしたのです。

ワインを楽しむだけでなく、ワイングラスとの組み合わせも考えていくとその楽しみは無数と思われるほどに膨らんでいくことでしょう。

まずは汎用性の高い1脚を選び、ワイングラスとワインのペアリングの世界に一歩足を踏み込んでみてはいかがでしょうか。

関連記事