ワインボトルの栓といえばかつて、コルクが主流でした。しかし、近年はスクリューキャップやガラス栓なども使われていて、ワインの栓も多様性の時代、といったところでしょうか。
今回はさまざまなタイプのワインの栓のなかから蝋キャップとガラス栓について、それぞれの歴史と利点、開け方について解説し、ガラス栓のおすすめスペインワインもあわせて紹介していきます。
蝋キャップの歴史や利点
蝋キャップとは、コルクで栓をしたワインやウィスキー、ブランデーなどの瓶口を溶かした蝋で覆っているタイプのキャップです。原料はミツバチが巣を作るときに分泌する蜜蝋を精製したもので、人が口にしても問題なく、ワインの品質にも影響しません。
蝋がワインの保存に用いられてきた歴史は非常に長く、ワイン発祥の地とされるジョージア（Georgia）では紀元前6000年前からワインの貯蔵に使っていたアンフォラ(Anfora)やクウェヴリ(Qvevri)を蜜蝋でコーティングしていました。
17世紀から18世紀、ワインはコルクで栓をされ、その上から蝋と布で覆って瓶口の縁に取り付けた紐で押さえていた、という記録があります。また、18世紀の家庭では瓶などの容器の口を覆うために蝋や樹脂などを含ませた羊皮紙や紙を使うのは一般的だったようです。
いっぽう、手紙の封筒や文書の封印に溶かした蝋で封印する、封蝋（シーリングワックス）は11世紀のヨーロッパの貴族たちの間で広く使われていました。封蝋は未開封である証明や差出人や家系を示す紋章を押し、差出人の証明の意味がありました。現在では封蝋は用いられ、条約締結書などの最重要書類に用いられます。
また、ワインの蝋キャップは19世紀以降、コルクの保護のためと酸化防止のために広く用いられてきました。ただ、蝋キャップは機密性が高いため、適度な酸化によってワインを熟成させるためには用いるべきではない、との考え方も普及しました。そして近年になってからは蜜蝋キャップの多くが装飾目的で使われています。しかし、自然派ワインの生産者など、一部の生産者は蝋キャップが自然素材であるとともに機密性が良いことに再注目し、酸化防止の目的で使用しています。蝋キャップはコルクにしっかりと密着します。いっぽう、一般的なアルミやプラスチックのキャップシールはコルクとの間に隙間ができてしまいます。そのため、蝋キャップはアルミやプラスチックなどのキャップシールに比べると格段に空気を通しにくく、ワインの酸化防止とコルクの乾燥防止に役立つのです。
ガラス栓の歴史や利点
ワインの栓にはガラスが用いられることもあります。
ガラス栓の発祥は一説では紀元前1500年まで遡ることができるとされています。しかし、広く使われるようになったのは、19世紀半ばのことだと言われています。ただ、ガラス線は通常、香水やデキャンタ、薬瓶など、繰り返し使用されるボトルに多用されてきました。いっぽう、ワインなど、一回きりしか使われない容器にはあまり使われてこなかった、という背景もあります。
古い時代から、ガラス栓にはシンプルなデザインで実用的なものから、装飾として精緻な彫刻が施され、華やかなものまで存在していました。ボトルネック内に入る部分は機密性を高めるため削られたり、薄いコルクが使われたりします。
近年、ガラス栓は天然コルクの代替え品として再び注目されつつあります。なぜなら、天然コルクは劣化や破損のリスクがあるからです。また、環境問題への意識の高いヨーロッパ諸国などではコルクの原料となるコルク樫の伐採を防ぐためにガラス栓をつかうワイナリーがあります。また、ガラス栓には汚染したコルクなどで起こるワインの劣化である、ブショネが起きにくいという利点もあります。また、気密性が非常に高いので、香りをしっかりと楽しむフレッシュタイプのワインに非常に向いているのもガラス栓の最大の特徴のひとつでしょう。
蝋キャップの開け方
蝋キャップは近年、広く普及しているわけではないため、開けるとなると、難しそうと思われる方も多いようです。しかし、実際に開けてみるとかなり簡単です。ふだんコルク栓を開けるときのようにソムリエナイフのスクリューを刺し、抜栓すれば良いのです。ただ、いくつかポイントがあるので、開け方の流れを説明していきましょう。
- 最初にスクリューの先を蝋キャップの中心に少し穴が開くくらいしっかりと差し込みます。蝋キャップはツルツルで滑りやすいものが多く、少し削るようにして、少し力を入れて差し込む必要があるかもしれません。蝋キャップに穴を開けるためにはスクリューを寝かせて先を差し込み、押し込んでからスクリューをまっすぐに立てます。
- 蝋にスクリューが刺さったら、ゆっくりとハンドルを回し、コルクの奥へねじ込んでいきます。
- 瓶口にソムリエナイフのフックを固定し、テコの原理で柄の部分を持ち上げてコルクを抜きます。
- コルクが瓶口から上がってくるにつれ、蝋キャップにヒビが入り、ボロボロと剥がれてくるので蝋の破片を取り除きましょう。このとき、一気にコルクを抜いてしまうとボトルの中に破片が入ってしまうためコルクの引き上げはゆっくりと行いましょう。
- コルクが抜けた後は瓶口の周りや内側についた蝋を清潔な布で拭き取ります。瓶口の外側についたままの蝋はワインを注ぐ時に接触しなければついたままで良いでしょう。
- 蝋の破片が瓶の中に落ちてしまった場合はワインをデキャンタなどに移し、取り除きます。
ガラス栓の開け方
ガラス栓は道具をほとんど使わずに開けられます。ワインオープナーなどの道具を使うとかえってガラスが割れることがあるので注意が必要です。
ガラス栓の開け方を説明していきましょう。
- ボトルの口のフォイルを切り取ります。
- 親指でガラス栓を下から上に押し上げて抜栓します。
ガラス栓のおすすめスペインワイン
青りんごやハーブ、グレープフルーツのようなみずみずしく爽やかなアロマをガラス栓がしっかりと閉じ込めてくれています。トロピカルなイメージのフルーティなニュアンスと、たっぷりとした果実味と絶妙な酸味が最高に魅力的。花のような優雅な余韻もお楽しみください。スペインならではの品種、ゴデージョ100%の辛口白ワインです。
造り手はリベラ・デル・ドゥエロ(D.O. Ribera del Duero)の代表的なワイナリー、パゴ・デ・ロス・カペジャーネス社（Pago de los Capellanes）。初の白ワイン醸造に挑戦するプロジェクトをたちあげ、それに際して原産地呼称地のひとつ、ガリシア地方のバルデオラス （Valdeorras）が醸造場所として選ばれました。険しい起伏の谷間、独特な気候、豊かなミネラル分が含まれた土壌を持つ地域で育まれるゴデージョは、唯一無二の表現力を持っています。完成まで何年もの試行錯誤を重ね、時代を超えて愛される手造りの白ワインを届けてくれています。
まとめ
さまざまなタイプのワインの栓のなかから蝋キャップとガラス栓について、それぞれの歴史と利点、開け方について解説し、ガラス栓のおすすめスペインワインもあわせて紹介しました。
赤や白、ぶどう品種や産地など、ワインのこだわりポイントはいくつもありますが、ワインの栓についても注目していくと、さらにワインが楽しめるようになるかもしれません。ワインを買う際にワインの栓にもぜひ、注目してくださいね。
