ワイン大国・フランスのワインについて ワイン大国・フランスのワインについて

ワイン大国・フランスのワインについて

イタリアに次いで世界で2番目のワイン生産量を誇るフランス。言わずと知れたワイン大国です。北半球の「ワインベルト」に該当する地域に属しているフランスは、全土にワイン産地があります。気候は全体的に温暖ですが、それぞれの生産地の土壌や気候に合わせてぶどうが栽培されているため、フランスでは多種多様な味のワインが生み出されるのです。

今回は、スペインワインの発展にも大きく関わったフランスワインについて解説していきます。

厳しい認証制度

フランスのワインの品質の高さは土地の豊かさだけではなく、細かく決められた基準も大きく影響しています。フランスのワインを見る際に参考となる規格や認証制度について説明します。

A.O.C

A.O.C(アー・オー・セー)とは、Appellation d'Origine Contrôlée (アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ)の略称で、「原産地管理呼称(原産地呼称統制)」のことを指しています。産地や品種、剪定方法などの栽培法、収穫量や製法などを厳しく規定しています。

産地の詐称やワインの質の劣化が横行したことをきっかけに、1905年から始まった制度で、1935年にできたINAO(Institut National del’Origine et de la Qualité、/国立原産地名称研究所)によって管理されています。

A.O.Cが認めたワインは特定地域で生産され、特定のぶどう品種で造られた高級ワインであることを意味します。A.O.Cに沿ってワインの産地を示す場合“アペラシオン”、と表現することがあります。

A.O.P

A.O.Cと混同しやすいものにA.O.P(アー・オー・ペー)があります。Appéllation d’Origine Protégée(アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ)の略で、フランスのA.O.Cを見本に1992年にEUに誕生した原産地保護呼称で、以降A.O.CはA.O.Pの一部を構成する制度となりました。

A.O.C法によって、かつてはA.O.Cワインに準ずる存在として分類されていたVDQS(Vin Délimité de Qualité Supérieure 、ヴァン・デリミテ・ドゥ・カリテ・シュペリウール)ワインはA.O.Pに該当することとなりました。

I.G.P

I.G.P(イー・ジェー・ペー)はIndication Géographique Protégée(アンディカシオン・ジェオグラフィック・プロテジェ)の略で、生産地域に着目したEUで規定された地理的表示です。A.O.C(AOP)を頂点とし、I.G.Pはその下に位置づけされている規格となります。A.O.Cが産地との強い関連性が求められるのに対し、I.G.Pは社会的評価が高ければ登録が認められます。ぶどうの産地や品種の規定もそれほど厳しくなく、官能審査(人間の感覚を用いた検査)も任意で行います。

フランスではINAOが統括していて、以前はA.O.C法によってVin de Pays(ヴァン・ド・ペイ/地方のワイン)に分類されていたワインはこのI.G.Pに該当します。

Vin de Table

Vin de Table(ヴァン・ド・ダーブル/テーブルワイン)はI.G.Pよりもさらにカジュアルなワインとして位置づけされていて、生産地域の表示のない一般消費用のテーブルワインとして分類されます。

フランスワインの2大生産地

ボルドー

ボルドー(Bordeaux)はフランス南西部に位置する地域で、ジロンド(Gironde)県に属しています。古語の Au bordde l’eau(水のほとり)を意味する地名の通り、ガロンヌ川(Garonne)、ドルドーニュ川(Dordogne)の2つの大河が大西洋に流れこみ、港町として世界にワインを流通させてきました。

4世紀からブルゴーニュと並ぶワインの銘醸地でした。ジロンド県が属するアキテーヌ地域圏(Aquitaine)が英国領となった時代があり、イギリスとの交易でワイン産業が世界的に栄えたという歴史的背景があります。

ボルドーは赤・白・ロゼ・スパークリング、甘口から辛口まで、さまざまな種類のワインを生み出す産地ですが、最も有名なのがメドック地区(Medoc)の長期熟成型の赤ワインでしょう。また、ソーテルヌ地区(Sauternes)の甘口貴腐ワインでも有名です。

どのタイプのワインも、数種類の品種のぶどうをブレンド(アッサンブラージュ、Assemblage)するのがボルドーの最大の特徴です。

ボルドーの赤ワインに使用できるぶどうの主な品種はカベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)、カベルネ・フラン(Cabernet Franc)、マルベック(Malbec)、プティ・ヴェルド(Petit Verdot)、メルロー(Merlot) です。ちなみに、カベルネ・ソーヴィニヨンはボルドー原産のぶどうで、ワイン用ぶどうとして世界一有名だと言えるでしょう。小粒で皮が厚く、種が大きくて果肉は少なめなので、色の濃い、渋みの強いワインになります。

ボルドーの白ワインに使用されるぶどうの主な品種は、ソーヴィニヨン・ブラン (Sauvignon Blanc) 、セミヨン(Sémillon)などです。セミヨンは貴腐ワインの主役となる原料でもあります。

ボルドーの格付け

ボルドーの格付けは、ぶどう畑の所有者(シャトー、château)ごとにあります。ボルドーのトップクラスの格付けワインは世界最高峰とされ、「5大シャトー」と呼ばれます。5大シャトーとは、「ラフィット・ロートシルト(Lafite Rothschild)」「ラトゥールLatour)」「ムートン・ロートシルトMouton Rothschild)」「マルゴーMargaux)」「オー・ブリオンHaut Brion)」で、ワインマニア達の永遠の憧れの存在です。

ブルゴーニュ

ブルゴーニュ(Bourgogne)はフランスの東部、パリ南東部に位置する地域です。ぶどうの栽培地域は北のシャブリ(Chablis)地区、北端のディジョン(Dijon)から南のリヨン(Lyon)まで細長く170kmの地域に集中しています。高級ワインとして知られる「ロマネ・コンティ(Romanée-conti)」や、日本では風物詩となった「ボジョレー・ヌーボー(Beaujeu nouveau)」はブルゴーニュ産のワインです。

ボルドーと同じく4世紀からのワインの銘醸地ですが、その発展には修道院の僧達の貢献が大きく関わっています。フランス革命までほぼ全てのワインが修道院で醸造されてきました。僧達は畑ごとに出来るぶどうの特性が違うことを早くから見抜き、区画整理を行ってきました。この時にテロワール(Terroir)の概念も生まれたと言われています。

ボルドーとは違い、単一品種のぶどうで造られるものが主流で、赤ワインはピノ・ノワール(Pinot Noir)またはボジョレーの原料として知られるガメイ(Gamay)、白ワインにはシャルドネ (Chardonnay)などの品種が使われます。ピノ・ノワールのワインは口当たりが絹のように滑らかで、渋みは柔らかく酸味がしっかりとしています。

ブルゴーニュの格付け

ブルゴーニュでは、格付けは畑ごとに行われます。理由は土地や生産者の個性がそのままワインの味わいに表れやすいからだと言われています。ブルゴーニュの格付けは以下の4つに分類されます。

  • グラン・クリュ(Grands Cru/特級畑)・・・畑の名が表記される。ロマネコンティはピノ・ノワール種のグラン・クリュの名称。
  • ブルミエ・クリュ(Premier Cru/一級畑)・・・村名と畑の名が表記される。
  • 村名アペラシオン・・・村名が銘柄として表記される。
  • 地区アペラシオン・・・「ブルゴーニュ」が銘柄として表記される。

フランスの5大産地

フランスのワインの銘醸地はボルドーとブルゴーニュだけではありません。5大産地とされる産地は以下の通りです。

ロワール

ロワール(Loire)は全長約1,000km、フランス最長のロワール川流域に点在する山地です。地域ごとに土壌や気候に違いがあり、すべてを把握するのが難しい地域でもあります。多くの品種のぶどうから多種多様なワインを造っている地域です。フランスのロゼワインの中で最も知られているロゼ・ダンジュー(Rose d'Anjou )はロワール地方で造られています。

アルザス

アルザス(Alsace)フランス北東部、ドイツとスイスの国境近辺に位置します。標高が高く、激しい寒暖差があり、長い日照時間はアルコール度数が高く凝縮感のあるワインを造る条件となっています。

アルザスで造られるワインの90%が白ワインです。ドイツやアルザスの代表品種である、リースリング(Riesling) などを使った辛口ワインが多く造られていることで知られています。また、アルザスは自然派の生産者が多いことでも知られていて、天然酵母を使ったナチュラルな味わいのワインも数多く生産されています。

コート・デュ・ローヌ

コート・デュ・ローヌ(Cotes du Rhone)はフランス南東部に位置するローヌ川( Le Rhone)流域にある、ボルドーに次ぐ生産量を誇る産地です。南北に長く広がる土地なので、多様なワインが造られています。

北部は濃い赤の、スパイシーさが特徴のシラー(Syrah)の赤ワインが造られ、南部では複数の品種のぶどうをブレンドしてワインを造っています。

南部の産地ではグルナッシュ(Grenache)やシラー、ムールヴェドール(Mourvèdre)などの赤ワイン用品種8種と、クレレット・ブランシュ(Clairette blanche) ブールブーラン(Bourboulenc)や、ルーサンヌ(Roussanne)などの白ワイン用品種5種の使用が認められていて、それらの品種のぶどうをブレンドしてワインを醸造しています。

シャンパーニュ

シャンパーニュ(Champagne)はフランスでは最北の産地で気候は冷涼、日照時間が非常に多く降雨量は平均より少なめです。9世紀よりワイン産地として有名で、王の戴冠式にはシャンパーニュ地方のワインが採用されるなど、威厳を持っていました。

1680年に修道士のドン・ペリニヨン(Dom Pierre Pérignon)が泡を瓶に封じ込める製法を確立させ、複数のヴィンテージのワインをアッサンブラージュする醸造法を生み出します。その後18世紀に瓶詰めのワインが輸送できるようになってからは世界中でシャンパーニュのワインが愛されるようになりました。

シャンパーニュ地方で規定に沿って造られるスパークリングワインだけがシャンパーニュと名乗ることが許されます。スペインワインのカヴァ(Cava)はシャンパーニュからの技術が伝わって発達しました。

ランドック・ルーション

ランドック・ルーション(Languedoc-Roussillon)はスペインとの国境に程近い、地中海に面した地域です。晴れの日が多く「植えれば放っておいてもぶどうが育つ」とまで言われるほど、ぶどう栽培にはぴったりの土地です。低価格帯のワインをメインに生産していて、日本も含む世界各国に大量に輸出を行っています。求めやすい価格ながら一定の品質レベルを持ったワインが高い支持を得ており、フランス最大の生産地となっています。

まとめ

ワイン大国、フランスのワインについて解説しました。スペインワインとフランスワインを比較して味わうのもまた一つの楽しみになるのではないでしょうか。

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