スペインには、600種類を超えるぶどうを植えられているとされています。しかし、ワイン醸造用として正式に登録されているのは140種類。さらにワイン生産全体の80%は、わずか20種類のぶどうから生産されています。
この数字からもスペイン国内でいかに多くの土着品種が埋もれていることが分かりますね。
今回は、スペイン秘境の地に自生する稀少なぶどう品種「ファンガルシア」を絶滅の危機から救ったワイナリーと彼らの造りだす唯一無二なワインの魅力についてご紹介します。
秘境の地!アリベス・デル・デュエロ国立自然公園
スペイン北西部カスティージャ・イ・レオン州サモラ県、サラマンカ県の間にあるアリベス・デル・デュエロ自然公園内には、スペインとポルトガルの国境となるデュエロ川の渓谷があります。険しい絶壁と深い谷がおおよそ100km続くその景色は、まさに圧巻。壮大な自然に囲まれたデュエロ川の峡谷周辺の村々は、国立自然公園に指定されています。
そんな秘境の地、アリベス・デル・デュエロに自生する土着品種の一つにファンガルシアがあります。一度は絶滅の危機に瀕した黒ぶどうでしたが、そのポテンシャルは大変高く、いまではこの地域における代表品種となりました。
ファン・ガルシア(Juan Garcia)について
ファン・ガルシアはスペインの赤ワイン用に造られている珍しい黒ぶどう品種です。主にアリベス・デル・デュエロ川峡谷で栽培されています。
急な傾斜の多い地域であることから、フィロキセラやベト病などの病害にさらされることなく生き残ることができたために、樹齢100年以上のぶどうの樹も残っています。
早熟で強い生命力を持ち、とてもバランスが良く、熟成に適しています。さらに、ファンガルシアからできる赤ワインは、滑らかで個性的、繊細なアロマと複雑味を持つエレガントに仕上がります。
このように繊細さと独特な個性をあわせ持つ黒ぶどう品種ファン・ガルシアのワインは、まさに唯一無二。この地域でしか味わえない赤ワインとして、スペイン国内だけでなく世界的にも高い評価を受けています。
D.O.アリベス(D.O.Arribes)
サモラ県とサラマンカ県に属するD.O.アリベスには、現在47の街と村があり、おおよそ1300ヘクタールのぶどう畑があります。中世時代から行われているぶどう栽培でしたが、ワインの品質が認められたのはここ最近で、D.O.アリベスとして原産地呼称に認定されたのは2007年のことです。
この地域は、主に大西洋の影響を受けた大陸気候ですが、ドゥエロ川の斜面においては地中海性気候の特徴も併せ持つユニークな気候を持っています。
石ころのごつごつした黒鉛を含む砂混じりの土壌で、粘板岩でミネラルを豊富に含みます。降水量は500〜600mmで日照時間は年間約2,600時間。このような恵まれた土地で育つぶどうは、完全に熟成してから収穫することができるため、フレッシュで自然な酸味、高い濃度のポリフェノールにコンポートや熟した果実の豊かなアロマを特徴とします。
また、「原産地指定呼称アリベス」をラベリングされているワインには、カスティーリャ・イ・レオン州政府の厳しい規制を守っていることを証明し、収穫からボトリングにおけるまで、そのワインの品質を保証することを意味します。
ファン・ガルシアのおすすめ赤ワイン
【商品情報】
商品名 |
アバデンゴ クリアンサ(Abadengo Crianza) |
生産者 |
ボデガ・リベラ・デ・ペラサス(Bodegas Ribera de Pelazas) |
おすすめ料理 |
赤身肉のグリル(薪や炭火焼き)、子羊の香草焼き、カジョス、スモークチーズなど |
生産国 |
スペイン |
地域 |
D.O.アリベス |
ぶどう品種 |
ファン・ガルシア100%(樹齢70年以上) |
度数 |
14% |
ボディ |
フルボディ |
飲み頃の温度 |
16~18℃ |
容量 |
750ml |
今回は、そんな稀少ぶどう品種ファン・ガルシアを100%使用したおすすめの赤ワイン「アバデンゴ クリアンサ(Abadengo Crianza)」をご紹介します。
ワイン名である"アバデンゴ(Abadengo)”とは、スペイン語で"修道院”を意味します。サマランカ県にある広大な地域の名前ですが、中世に修道院が所在地だったことが地域の由来となっています。
味わいの特徴
色は輝く濃いチェリーレッド。樹齢70年以上の稀少土着品種ファン・ガルシア種のみを使用しています。
凝縮された赤系果実、さくらんぼのリキュール、刺激的なバルサミコや、コーヒーキャンディのアロマを感じます。
森の落ち葉や土を感じるニュアンスなどファン・ガルシア特有の香りと、その他の大胆な香りとが融合した複雑味のある香りが楽しめるワインとなっています。
口に含むと、ワイルドベリーやブラックチェリーなど野生の黒系果実やドライ・フルーツの風味が広がり、樽由来の滑らかなタンニンと酸との素晴らしいバランスを感じられます。
ワイルドさとエレガントさを兼ね備えたファン・ガルシア100%は、他にはない癖になる味わいです。
生産者について
ボデガ・リベラ・デ・ペラサス(Bodegas Ribera de Pelazas)の設立は、1997年と比較的若いワイナリーです。
サマランカ県にあるアリベス・デル・ドゥエロ国立自然公園の中心部に位置しており、15ヘクタールのぶどう畑を持ちます。自然に恵まれたこの土地ではテロワール・土壌・気候など、ワイン造りに恵まれた環境が整っています。
ワイナリーのこだわり
ボデガ・リベラ・デ・ペラサスでは、この地域に自生するぶどう品種に力を入れており、なかでも土着品種「ファン・ガルシア」や「ブルニャル」といった100年以上の歴史を持つ絶滅危機品種を蘇らせることに成功しました。
ワイナリーでは「アリベス土着品種でこの地域の伝統と経験、そしてアリベス・デリ・ドュエロの自然環境を活かした濃厚で熟した果実感、粘板岩質に由来するミネラル感のある複雑で繊細なワインを生み出すこと」をコンセプトとしています。
断崖の滝、段々畑に囲まれた粘土岩の畑で栽培されているぶどうには、人工的な加工を一切せず、優良なぶどう株のみを選出からフレンチオークでの熟成に至るまで全過程において丁寧に行っています。ぶどうの収穫には、すべて手作業で行うことにこだわっているため、収穫量は1ヘクタール辺りわずか2,400kgに抑えられています。
このようなボデガ・リベラ・デ・ペラサスのこだわりがつまったワインは、コンセプト通り、ファン・ガルシアの繊細さや濃厚な果実味に綺麗なミネラル感など、ぶどう本来のポテンシャルを最大限に引き出し、最高の状態で提供されています。
スペインワインの世界で最もエキサイティングなワイン10に選出
ボデガ・リベラ・デ・ペラサスの専門性と独自性が世界的にも認められ、設立から10年後の2007年には、イギリスのワインガイドブック「WINER REPORTER 2007」でスペインで最も優れたワイン2位に選ばれました。
その後、2009年には世界的に有名な評論雑誌のデカンター誌が「スペインワインの世界で最もエキサイティングなワイン10」に選出されるなど、設立から間もないワイナリーですが各国からさまざまな賞を受賞しており、その実力は折り紙付きです。
まとめ
今回は、秘境の地に自生する珍しいぶどう品種ファンガルシアの魅力やそのポテンシャルを最大限に引き出している地元ワイナリー「ボデガ・リベラ・デ・ペラサス」をご紹介しました。
彼らの持つ技術とこの地域の土着品種だからこそできる個性あふれる唯一無二のワインは、世界中のワイン愛好家を魅了します。
ぜひ、ボデガ・リベラ・デ・ペラサスが造るアバデンゴ クリアンサから自然の壮大さを感じてみてくださいね。