チーズとワイン、肉料理とワイン、などのペアリングは広く知られていますが、チョコレートとワインのペアリングも世界的に人気があります。また、バレンタインデーのプレゼントにチョコレートと一緒にワインがセットで売り出されている商品なども見かけます。
ただ、「甘いお菓子とアルコール」のペアリングに抵抗を感じる、という方も少なくないのではないでしょうか?そこで、今回はチョコレートとワインの相性についてと、チョコレートとワインのペアリングの成功例、チョコレートとワインのペアリングが生まれるまでの歴史、そして、チョコレートとのペアリングにおすすめのスペインワインを紹介します。バレンタインの贈り物にチョコレートとワインをセットで、とお考えの方にとっても参考になる内容となっていますので、ぜひ最後までご一読ください。
チョコレートとワインは相性が良いって本当?
「チョコレートとワインは相性がいい」と耳にしたことがある方は少なくないかもしれません。
ただ、チョコレートもワインはどちらも多種多様なタイプが存在するため、一概にすべてのチョコレートとワインの相性が良い、とは言えないのです。
チョコレートとワインのペアリングの成功例
一般的に、チョコレートとワインのペアリングが成功するのは、
l 糖度が近いもの同士を合わせる
l 風味が近いもの同士を合わせる
組み合わせだと言われています。これは、相乗効果と呼ばれる作用が関係しています。
相乗効果は甘味と甘味、旨味と旨味など、同じ系統の味のもの同士が組み合わされたとき、その味が何倍にも強調される作用です。相乗効果の例として、昆布と鰹節の組み合わせがあげられます。昆布と鰹節のそれぞれ種類の違う旨味成分が組み合わされて相乗効果が働き、旨味たっぷりの出汁が出来上がる、というわけなのです。
そのため、チョコレートとワインの糖度を合わせるとペアリングが成功しやすいのです。ですから、ミルクチョコレートと果実味のある甘口のライトボディのワインなどは良いペアリングになります。
同じく、風味が似たチョコレートとワインを合わせると良いペアリングとなります。例えば、ナッツの入ったチョコレートにナッツの香りが特徴のワインを合わせると、それぞれの香りが相乗効果で増し、美味しいと感じられるでしょう。また、オレンジピールの入ったチョコレートには柑橘系の香りがするワインもおすすめです。
また、風味が似たもの同士を合わせるペアリングとして、ほろ苦いダークチョコレートとフルボディの赤ワインの組み合わせも昔から知られています。チョコレートと赤ワインのどちらにも含まれるポリフェノール成分が相乗効果を起こし、深みのある渋味を長く楽しむことができるでしょう。ただ、ポリフェノールは組み合わせによっては心地良い渋味というよりは強すぎる苦味として感じられてしまうことがあります。ですから、「ダークチョコレートと赤ワイン」のペアリングは万能ではないことに注意が必要です。
ロゼスパークリングワインはチョコレートとペアリングしやすい
ロゼのスパークリングは幅広いタイプのチョコレートに合わせられるワインと言われています。ミルクチョコレートに合わせればミルクチョコレートの甘味とミルキーさがロゼの味わいと相性が良く、ナッツ入りのチョコレートに合わせるとロゼのコクと相乗効果を起こします。また、レーズンなどのドライフルーツの入ったチョコレートはロゼの果実味をさらに引き出してくれるのです。
チョコレートとワインのペアリングが生まれるまでの歴史
チョコレートの原料であるカカオは、紀元前3300年ごろに中南米のエクアドルで食用にされていました。また、カカオが栽培され始めたのは紀元前2000年頃だと考えられています。「カカオ」という名の起源は紀元前1200年頃にメキシコ湾岸に成立したオルメカ文明時代の言葉で「カカワ」にあるとされています。
マヤ文明やアステカ文明ではカカオが通貨として用いられ、神への捧げ物でもありました。
これらの文明ではカカオは特権階級だけが味わえる特別なものでした。そして、摂取の仕方も現在のチョコレートとはかけ離れていました。カカオをとうもろこしなどとすりつぶし、水と唐辛子などと混ぜ、ドロドロの状態で飲むのです。
その後、カカオの存在を初めて知ったヨーロッパ人だと考えられるのはクリストファー・コロンブス(Christopher Columbus)でした。1502年の航海でマヤ族がカカオ豆を貴重品として扱うのを見て、カカオの価値を知ったとされます。そして、1521年にエルナン・コルテス(Hernán Cortés )がアステカ帝国を征服すると、現在のチョコレートの原型となる飲み物「ショコラトル(Chocolatre)」がスペインに伝わりました。また、聖職者や商人などの手によりカカオはスペインに渡ります。ただ、アステカ帝国のショコラトルはスペイン人の口には合わず、砂糖で甘く味付けされるようになったのです。そして、スペインの貴族社会で広く受け入れられるようになりました。
カカオはスペインでもひとにぎりの特権階級だけが口にできる贅沢品で、しかも長寿や疲労回復への効果も期待されていました。そのため、スペイン国外への持ち出しが100年ほど禁止されていたのです。その後、砂糖やシナモンなどの組み合わせでよりヨーロッパ人の口に合うショコラトルとなり、イタリアやフランス、そしてイギリスなどの諸国へと伝わっていきました。
チョコレートとワインをペアリングするようになったのはイギリスの著述家であるハンナ・ウーリー(Hannah Woolley)が1672年に発表したボルドースタイルの辛口の赤ワインを入れたチョコレートドリンク「チャクラート(Chaculato)」のレシピがきっかけだと言われています。そのレシピ以来、チョコレートとワインのペアリングは広く知られるようになったのです。
チャクラートの作り方
辛口の赤ワイン半パイント(約280ml)を少し沸騰させる。
1にチョコレートを細かくすりおろして入れ、卵黄を2個入れて弱火で熱しながらかき混ぜてとろみをつける。好みに合わせて砂糖を加えて完成。
チョコレートとのペアリングにおすすめのスペインワイン2種
1822 ペドロ・ヒメネス(Pedro Ximénez)
1822 ペドロ・ヒメネスはビターチョコレートやドライフルーツ入りのチョコレートとのペアリングにおすすめです。濃い琥珀色の極甘口タイプのシェリーです。ペドロ・ヒメネス種のぶどうを天日干しにし、甘くして醸造される自然由来の甘さでドライフィグやドライプルーンのような甘いアロマ、濃厚な黒糖のニュアンスがあります。苦味と甘みのバランスが良く、とろけるような口当たりがあります。
ムリージョ・ビテリ ホーベン(Murillo Viteri Joven)
ムリージョ・ビテリ ホーベンはホワイトチョコレートとのペアリングにおすすめです。チェリーレッドが鮮やかな、フレッシュな果実味とキャンディーの甘いニュアンスが特徴のテンプラニーリョ(Tempranillo)92%で、若々しさが特徴。
テンプラニーリョのワインは乳酸発酵の副産物である、バターに似た香りがあります。そのため、ミルキーなホワイトチョコレートと親和性が高いのです。また、なかでも熟成が進んでいない早飲みのテンプラニーリョはバターの香りが強いため、ミルクチョコレートとの相性がとくに良いとされています。
まとめ
チョコレートとワインの相性についてと、チョコレートとワインのペアリングの成功例、チョコレートとワインのペアリングが生まれるまでの歴史、そして、チョコレートとのペアリングにおすすめのスペインワインを紹介しました。
バレンタインの贈り物にチョコレートだけでは物足りない、とお考えの方はチョコレートとワインのセットを贈ってみてはいかがでしょうか?また、チョコレートとワインのペアリングを試したことがない方も、ぜひこの機会にチョコレートとワインの味のハーモニーをお楽しみ頂ければと思います。