今回は、スペインでも有名なシェリー生産者である‘ボデガス・ジュステ’グループのスペイン・アルグエソの醸造家であるミゲル氏に、ワイナリーの歴史や仕事内容、ワインの特徴やおすすめの飲み方についてお話しを聞きました。
Q. アルグエソの歴史について教えてください。
A. ワイナリーは今年で、200周年を迎えます。1822年にドン・レオン・デ・アルグエソ が、スペイン北部のブルゴス在住でしたが、南部アンダルシア州、サンルーカル・デ・バラメーダの小さな村のシェリーワインの世界に惹かれ、事業を始めたことから始まりました。この時すでに現在も使われているソレラ(熟成用樽)が存在していました。
その後、彼はサント・ドミンゴ教区の果樹園にワイナリーを増やしていきました。ワイナリーはサント・ドミンゴ教区に隣接しており、かつての果樹園はワイン貯蔵庫に姿を変えています。
アルベロの中庭は200年変わることなく美しい園庭を残しておりますが、いくつかの樽は長い年月の間に数個無くなってしまった事もあるそうです。
一方、サント・ドミンゴ、サン・マヌエルのサンレオン、ボデゲロス、サンファンの建物、そして樽は200年前のままの姿を今も映し出しています。
アルグエソ氏は子供がいなかったので、甥と姪に引き継がれましたが、2000年初頭に、200年続く熟成のワインと樽、設備と技術、味わいの全てをジュステでは受け継いでおります。
Q. ジュステグループにいつ入ったんですか?また醸造方針など変わったことはありますか?
A. 私自身は2021年4月から、アルグエソの一員になりましたが、アルグエソがジュステグループの傘下になった際も、 醸造家は製造方法を変えるのではなく維持すべきだと考えています。
新しく入ってきた醸造家は、各ワインの製造方法や有機的な特徴を学び、常に当時のままで保たなければなりません。
Q. アルグエソが一番大事にしていること、こだわりは何でしょうか?
A. 伝統と品質を保つことを大切にしています。
アルグエソのこだわりは、その歴史を守りながらワイナリーを存続させることです。
Q. 醸造家ミゲルさんについて、経歴を教えてください。
A. 最初はコルドバ大学で生物学を学び、その後、ワインの世界に興味があったので、醸造学を学びました。
生物学の学位を取得した後は、原産地呼称のモンティージャ・モリレスのワイナリーで働き始め、その後、モンティージャ・モリレス規制協議会でも1年間働き、プロモーションを担当しました。
当時は品質管理も担当もしており、ワイン貯蔵庫の仕様や規則などの条件が守られているか監査していました。
その後、ジュステやアルグエソのスタッフのつてで、こちらに来ました。
アンダルシアの酒精強化ワインはすでに知っていましたが、マンサニージャについてさらに知りたくなったためです。
昨年4月よりジュステグループに入り、定年まで働き続けたいと思っています。
Q. シェリーの産地であるへレス・デ・ラ・フロンテーラやエル・プエルト・デ・サンタ・マリアとサンルーカル・デ・バラメーダの特徴は何ですか?(気候、立地など)
A. カディス県に属するこの3つの地方の中でも、特に注目したいのがサンルーカル・デ・バラメーダの特殊な気候です。
目の前に広がるドニャーナ自然公園は、アンダルシアの主要な川のグアダルキビールの河口近くにあり、偏西風の恵みにより湿度と気温の条件が整っています。
サンルーカル・デ・バラメーダのワイナリーで注目すべき点は、世界のどこを見回しても、ここでしか造れないワインがあることです。
高温多湿の気候により、フローラ層の下で生物学的に熟成を促せるからこそ、マンサニージャというユニークなワイン製造が可能になっています。
Q. 日本ではシェリーと言えばTIOPEPEと思ってる方もまだまだ多いですが、大手のワイナリーにはないアルグエソの商品の特徴、魅力は何ですか?
A. アルグエソのワインは、非常に長い歴史を持ち、ワイナリーにも特徴があります。
サンルーカル・デ・バラメーダやアルグエソのワイナリーは、サン・レオンやファミリーリザーブ、ラス・メダージャスなど、ユニークなワインを製造しています。
私たちのワインの魅力は、長い歴史を通してソレラを変えずにそのまま保っていることです。
例えば、1920年代のサン・レオンのボトルは、今日のボトルの味と同じであるように努めています。
Q. アルグエソの特徴である200年以上修理・修復して使い続けている樽の管理方法を教えてください
A. ワイナリーには、ベテランの樽職人が2人います。どんな破損があっても、彼らが修理してくれるからこそ、樽を100年以上使い続けることができました。
樽は下から、ソレラ、第一クリアデラ、第二クリアデラの順になりますが、その場で修理できれるものはして、そうではなければ上から取り崩して、不具合のある樽を取り出します。
樽製造所には樽の修理に必要な道具がすべて揃っています。
樽の修理で最も一般的なものは漏れです。
夏の暑さや冬の寒さによる木材の膨張で、ワインが少し漏れることがあります。
修理が必要な際は、できるだけ早く交換が必要なので、樽を解体し取り外して製造所に持ち込みます。
Q. SDGs、環境に対しての取り組みは何かしていますか?
A. ワイン醸造は伝統的な仕事なので、環境を尊重しながら、可能な限りすべて自然のままにすることを心がけています。
最近、ジュステグループでは、できるだけクリーンなエネルギーを得るため太陽光パネルを設置しました。
自然のエネルギーなので、環境に害を与えることはありません。
アルグエソの9棟のうち1棟も設置予定です 。
Q. シェリーを初めて飲むのにおすすめの商品や飲み方は何ですか?
A. 早飲みの若いワインから試すのがよいでしょう。
すでに発酵今年のワインは、同じパロミノやリスタンの白ブドウから作られていて、それをマンサニージャの樽に入れます。
そこで、約3〜4ヶ月間寝かせてフロールを形成させ、まだ未発酵の状態でアルコール度数が11~12%のその年の白ワインを作ります。
フロールは初期のもので新しいですが、試飲してみると、今年のワインならではのブドウの花のフルーティーな香りを楽しめます。
一方、カクテルのベースにウィスキーやジン、ラムでの代わりに、アモンティリャードやマンサニージャ、パロ・コルタドを使うこともできます。
さらにワインを楽しむのなら、各製品の製造方法、味、使用方法について学べる試飲会に参加するのもよいでしょう。
Q サンルーカル・デ・バラメーダの中心地に位置し、地域の人がワイナリー内のオフィスに買いにきたりされていましたが、地域の皆さんとの交流についてお聞きできますか?
A. 地域の皆さんとの関係は良好で、マンサニージャは、サンルーカル・デ・バラメーダ全域で愛飲されています。
特に、マンサニージャ・サンレオンやラス・メダージャスは飲まれる量も多く、自前の瓶などをオフィスに持参して購入されるだけでなく、樽から直接取り出したマンサニージャを持ち帰る人もいます。
現地の方の多くは自宅に小さな樽があり、買ってきたワインを保存しつつ飲めるからです。
また、サンルーカル・デ・バラメーダには多くの居酒屋があり、そのほとんどが私たちのシェリーを置いています。
そこでもマンサニージャは、非常に人気があります。
Q 現地の人は何と一緒にシェリーを飲んでますか?現地の名物などペアリングについて教えてください。
A. ワインだけでなく、シェリーもどんな料理にも合います。食前にマンサニージャ、食中はアモンティリャードやパロ・コルタド、食後に甘いクリームやペドロ・ヒメネスにすれば完璧です。
前菜として、現地で獲れたエビやハモン・イベリコはマンサニージャによく合うでしょう。
メインは地元でも定番の新鮮な魚のフライや、名物のアンダルシア風エビのフリットがぴったりです。その他にもエビ入りスープ(リゾットの様に米と煮込んだりパンや小型のパスタなどを一緒にいれたりします)、さまざまな肉の煮込み料理も合います。
最後のデザートはペドロ・ヒメネスやモスカテルやクリームなどをかけたアイスやタルトがおすすめですね。
Q. 現地に行った時の楽しみ方、ワイナリー見学について教えてください。
A. ワイナリー見学の最大の魅力は、200年以上続く歴史を感じるワイン貯蔵庫です。
設立当時の200年前のままであり、3か所ある主要な建物としては、聖具室のあるサント・ドミンゴ棟では、世界レベルのワインの神殿を見ることができます。
また、サン・レオン棟では、私たちのマンサニージャを樽からたしなみながら、歌ったり楽しく過ごしたりすることができるテイスティングスペースが魅力です。
アルグエソは観光客が多く、毎日、月~日曜の12時に見学者が訪れます。
見学料金はプランにもよりますが、基本プランが15ユーロから幾つかあり、食前酒・食事付きのプランなど様々なプランを提供しております。
ワイナリー見学の専門ガイドがおり、スペイン語と英語でツアーを行います。
スペイン・アンダルシアにお越しの際は、ぜひ私たちを訪ねてみてください。
Q. 今年創立200周年を迎え、今後のやりたいことや展望を教えてください。