サンティアゴ巡礼・動き疲れた体に沁みるワインとグルメ サンティアゴ巡礼・動き疲れた体に沁みるワインとグルメ

サンティアゴ巡礼・動き疲れた体に沁みるワインとグルメ

巡礼というと、どこかストイックで、信者ではないのに気軽に歩いていいのだろうか、と疑問に感じる方もいらっしゃるかもしれません。

サンティアゴ巡礼では、宗教を問わず、規定された区間を歩く、または自転車や馬で到達すれば、証明書を発行してもらうことができます。

巡礼路の途中で知り合った巡礼者とは、同じ境遇ということもあり、お互い励まし合ったり、助け合ったりしながら、ゴールであるサンティアゴ・デ・コンポステーラ(Santiago de Compostela)を目指すので、もし1人旅だとしても、きっと寂しくはないでしょう。

1日の終わり(時には巡礼の途中にも)には、その土地ならではのワインやグルメも待っています。

1日の締めを楽しみに、巡礼するのもありかもしれませんね。


サンティアゴ巡礼とは?

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サンティアゴ巡礼とは、キリスト(Jesus Christus)の弟子・サンティアゴ(聖(大)ヤコブ, Santiago)の墓の上に建てられた教会があるサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指して巡礼することを意味します。

コンポステーラとは「星の野原」という意味で、星の光に導かれた羊飼いがサンティアゴの墓を発見したことから名づけられました。

サンティアゴ・デ・コンポステーラは、エルサレム(Jerusalem)、バチカン(Vatican)と共に、キリスト教の3大巡礼地に選ばれています。

他の聖地に行きにくくなった11世紀後半から巡礼する人が増え始め、12世紀には年間50万人が訪れる、人気の巡礼地となりました。

一時は巡礼が下火になりましたが、1995年ころから再び注目されるようになり、映画(「星の旅人たち」など)や本(「星の巡礼」など)の影響で、巡礼者も右肩上がりに伸びつつあります。

7月25日(聖(大)ヤコブの日)が日曜日の年は聖年と呼ばれ、巡礼者には特別の赦しが与えられます。

2021年はちょうど聖年に当たっていますが、新型コロナウィルスの関係で巡礼者が減っているため、2022年もイレギュラーで聖年になることが決まりました。

2022年に感染状況が落ち着いたら、サンティアゴ巡礼を検討してみても良いかもしれません。


サンティアゴ巡礼の主なルート

では、これから、サンティアゴ巡礼にどのようなルートがあるのかを、ご紹介していきたいと思います。

ヨーロッパに住んでいる方は自宅からサンティアゴ巡礼を始めることもできるので、非公式なサンティアゴ巡礼路は無限にあります。

公式の巡礼路の中で最も有名なのは、巡礼路沿いの建造物が世界遺産に選ばれているフランスの道(Camino Francés)です。

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フランスの道は、スペインとの国境近くにあるフランスのサン・ジャン・ピエ・ド・ポー(Saint-Jean-Pied-de-Port)からサンティアゴ・デ・コンポステーラまで続く、約780kmの巡礼路です。

全行程を踏破するには約30~40日かかるため、証明書がもらえる最短距離(徒歩の場合、100km。自転車や馬の場合、200km)のみ巡礼する方が多いですが、各地のワインを飲み比べたり、ピレネー越えなど巡礼ならではの達成感を味わったりしたいならば、全ルート歩くことをおすすめします。

フランスの道と同じタイミング(1993年)で世界遺産に選ばれたのは、プエルト・デ・ソンポルト(ソンポルト峠,Puerto de Somport)を出発し、プエンテ・ラ・レイナ(Puente la Reina)でフランスの道に合流する、約170kmのアラゴンの道(Camino Aragonés)です。

アラゴンの道経由だと、サンティアゴ・デ・コンポステーラまでの距離は、約850kmになります。

この2つの道に続いて世界遺産に選ばれたのは、フランス国内を横断する4つのルート、パリ(Le Chemin de Paris)ヴェズレー(Le Chemin de Vézelay)、ル・ピュイ(Le Chemin du Puy)、アルルの道(Le Chemin d'arles)の巡礼路沿いにある建造物です。

また、ル・ピュイの道のいくつかの区間も、世界遺産に選ばれています。

4ルートのうち最も人気があるのは、ル・ピュイ・アンヴレ(Le Puy-en-Velay)からフランスの道の出発点サン・ジャン・ピエ・ド・ポーまで続く、約716kmのル・ピュイの道です。

パリ、ヴェズレーの道も、各々の都市を起点にサン・ジャン・ピエ・ド・ポーまで続き、アルルの道は、アルルを起点に、アラゴンの道の出発点であるプエルト・デ・ソンポルトまで続いています。

ル・ピュイの道のルート上には、「黒ワイン」と呼ばれることもある、色の濃い赤ワインで知られるAOC. カオール(Cahors)の生産地カオール

パリの道のルート上には、フランスを代表するワイン産地・ボルドー(Bordeaux)

アルルの道のルート上には、フレンチブランデー・アルマニャック(Armagnac)の産地・オーシュ(Auch)があり、

ヴェズレーの道は、ブルゴーニュ地方(Bourgogne)のヴェズレーが出発地点なので、どのルートを選んでも、その土地ならではのワインやお酒を楽しむことができますよ。

再びスペインに話を戻しまして、フランスの道やアラゴンの道と合わせて、2015年に世界遺産に追加登録されたのは、

イルン(Irún)からアルスーア(Arzúa)までの約820kmを結ぶ北の道(Camino de la costa)

イルン(Irún)からサント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダ(Santo Domingo de la Calzada)へと続くバスクーリオハ内陸の道(Camino del interior Vasco-Riojano)

オビエド(Oviedo)からメリデ(Melide)まで続く、約260kmのプリミティボの道(Camino primitivo)

サン・ビセンテ・デ・ラ・バルケラ(San Vicente de la Barquera)からサント・トリビオ・デ・リエバナ修道院(Monastery of Santo Toribio de Liébana)までのリエバナの道(Camino de Liébana)

の4ルートです。

他に有名なサンティアゴ巡礼路としては、

ポルトガル(Portugal)の巡礼者が大半を占め、ルートの8割はポルトガルを通る、リスボン(Lisboa)からサンティアゴ・デ・コンポステーラまで続く、約615kmのポルトガルの道(Camino Portugués)

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イギリスや北欧などから船で到着した巡礼者が主に歩く巡礼路で、フェロール(Ferrol)からサンティアゴ・デ・コンポステーラまで約120kmと、巡礼路の中ではかなり短いイギリス人の道(Camino Inglés)

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古代ローマ時代にはスペイン北部から採掘した金銀を運ぶために使われた、セビージャ(Sevilla)からアストルガ(Astorga)へと続く、約705kmの銀の道(Via de la Plata)

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銀の道のルート上にあるグランハ・デ・モレルエラ(Granja de Moreruela)からサンティアゴ・デ・コンポステーラへ向かう、約368kmのサナブレスの道(Camino Sanabrés)

などがあります。


サンティアゴ巡礼路沿いにある穴場の

お立ち寄りグルメスポット&ボデガ


サンティアゴ巡礼路には、北の道のサン・セバスティアン(San Sebastián)やフランスの道のログローニョ(Logroño)など、美食で知られる有名な観光地も含まれています。

この項目では、そこまでメジャーではないものの、おすすめのグルメや近隣にボデガがあるスポットを、ガリシア州を中心にご紹介していきたいと思います。

まずはフランスの道から。

ポルトマリン(Portomarín)は、サンティアゴ・デ・コンポステーラまで100kmを切った、巡礼路の終盤に位置する村です。

かつてのポルトマリンはダム建設のため水没したのですが、12世紀から13世紀にかけて建てられたロマネスク建築のサン・ニコラス教会(Igrexa de San Xoán de Portomarín)は水没前に高台に移築されています。

ポルトマリンの名物は、うなぎ(Anguías)入りのエンパナーダ(Empanada,具入りのパン)やぶどうから造られるアグアルディエンテ(Augardente,蒸留酒)などです。

ガリシア伝統のケイマダ(Queimada)は、砂糖とレモンの皮などを入れたアグアルディエンテに火をつけて作る飲み物です。

ポルトマリンから車で約30分、少しサンティアゴ・デ・コンポステーラ寄りのオスピタル・ダ・クルス(Hospital da cruz)からは車で約20分の場所にあるチャンターダ(Chantada)という町には、ビニガリシア(Vinigalicia)という、ガリシアを代表するワインの会社があります。

続きまして、ポルトガルの道のルート上にあるポンテベドラ(Pontevedra)は、サンティアゴ・デ・コンポステーラの約65km手前にある都市です。

ほたて貝の形をイメージして建てられたとされる巡礼者の聖母教会(Iglesia de la Virgen Peregrina)は、ポンテベドラを訪れるならば、はずせないスポットです。

キリストの石像が目印のレニャ広場(Praza Da Leña)を取り囲むように建つ、どこかロマンチックな石造りの建物の1階には、ガリシア産を中心としたワインとタパスをテラス席で飲食できる「バディアナ・タパス」(Badiana Tapas)などのお店が集まっています。

ポンテペドラからは車で約30分、サンティアゴ・デ・コンポステーラからは車で約1時間の場所には、D.O. リアス・バイシャス(Rías Baixas)のボデガ、ボデガス・レクトラル・ド・ウミア(Bodegas Rectoral do Umia)もありますよ。

サナブレスの道のルート上にあるオウレンセ(Ourense)には、ミーニョ川(Río Miño)の近くに、水着を着て入るタイプの無料温泉2つと有料のスパ2つがあります。

日本に影響された有料スパ・テルマス・チャバスケイラ(Termas Chavasqueira)には、ROTEMBUROやOFURO、TSUMETAI(水風呂)など、日本語でそのまま通じる施設があり、館内のバーでは、味噌汁や寿司などの日本食も食べることもできますよ。

オウレンセでタパスを食べられるお店は、カテドラル(Catedral de San Martiño)周辺に集まっています。

たこ(Pulpo)料理を始めとしたガリシア名物が色々食べられる「A Casa do Pulpo」(カサ・ド・プルポ)は、おすすめのグルメスポットです。

オウレンセから西に約15km、車で15分ほど移動した場所には、D.O.リベイロ(Ribeiro)のボデガ・アラニス(Bodega Alanís)やD.O. リベイラ・サクラ(Ribeira Sacra)のレクトラル・デ・アマンディ(Rectoral de Amandi)など、複数のボデガを所有するビノス・イ・ボデガス・ガジェーガス(Vinos y Bodegas Gallegas)の本部があります。

先程ご紹介したボデガス・レクトラル・ド・ウミアも、ビノス・イ・ボデガス・ガジェーガスが所有しているボデガの1つです。

次は、かなり北に移動した場所をご紹介します。

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北の道のルート上にあるアストゥリアス州(Asturias)で最大の都市ヒホン(Gijón)は、海に突き出たようなシマデビージャ(Cimadevilla)にバーが集まっています。

名物のシードラが飲めるシドレリア(Sidrería)も何軒かあるので、ヒホンに行く機会があれば、訪れてみてください。

ヒホンでは、毎年8月の最後の週末に「ナチュラル・シードラ・フェスティバル」(Festival de la Sidra Natural)を開催しています。

ヒホンを三角形の頂点、プリミティボの道の起点となっているオビエドを三角形の左下と見立てると、三角形の右下にサリエゴ(Sariego)があり、ここにはスペインで唯一アイス・シードラのみを造っているバルべラン(Valverán)があります。

バルべランは、マサベウ・ボデガス(Masabeu Bodegas)の系列ボデガです。

 

同じくマサベウ・ボデガスの系列ボデガであるボデガス・フィジャボア(Bodegas Fillaboa)は、ポルトガルの道のルート上・トゥーイ(Tui)から車で約20分のサルバテーラ・デ・ミニョ(Salvaterra de Miño)にあります。

ボデガス・フィジャボアでは、テイスティング付きのワインツーリズムを開催しているので、ポルトガルの道を訪れる際には、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。


終わりに

これまで、サンティアゴ巡礼について、ご紹介してきました。

サンティアゴ巡礼を歩き通すには、長い期間がかかるため、日本人の場合、定年退職してから出かけられる方が多いようです。

サンティアゴ巡礼というと到達することに意義があるように思えますが、実は無心になってひらすら歩いたり、人生について考えたりするほうが重要なのかもしれません。

とはいっても、夜にはワインやグルメで満たされたり、巡礼者同士で会話したり、楽しみもいっぱいです。

魅了された方は何回もリピートするサンティアゴ巡礼。

現在は海外に行きづらい状況にありますが、また海外に行けるタイミングが来ましたら、旅行先の1つとして検討してみるのも良いかもしれませんね。

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