イベリア半島の北西部に位置するガリシア州は、北はカンタブリア海、西には大西洋と、1200キロ以上に及ぶ海岸線を持ち、スペイン有数の漁業が盛んな地として知られています。
降水量が多く緑が多いことから、ガリシア州を含む、バスク州、カンタブリア州、アストゥリアス州、北部の4州は「グリーンスペイン」とも呼ばれ、景観の良さから観光ルートとしても人気の地域。
スペインの最北西に位置するガリシア州は、近年ではリアス・バイシャス(Rias Baixas)をはじめガリシア州全土で造られる、アルバリーニョ(albariño)というブドウから造る白ワインが世界的にも有名ですよね。
しかし、近年ガリシア州は白ワインだけでなく、希少な地ブドウから造られる赤ワインも評価が高まっています。今回は生産量の極めて少ない希少品種、メレンサオ(Merenzao)を主体に造られる赤ワイン、「エスカラーダ・ド・シル(ESCALADA DO SIL)」をご紹介します。
ヴァルデオラス(Valdeorras)希少品種の復活
ガリシア州、ヴァルデオラス(Valdeorras)は、州の内陸部、最東端に位置し、かつてローマ帝国の植民地であった時代、金鉱で有名だったことから「黄金の谷」と呼ばれ、それが地名の由来となっています。
地中海性・海洋性気候で降雨量は多いですが、内陸で大陸性気候の影響を受けることから、冬は寒く、夏は厳しい暑さに見舞われる土地です。日照量が多く水捌けの良い土壌は、余分な水分を排出し健全なブドウの生育に適した土地と言えます。
ヴァルデオラス(Valdeorras)のブドウ畑はシル川沿いの渓谷にあり、標高300〜700メートルの斜面に広がっています。木々や草がうっそうと生え、さらに急勾配であることから機械が入ることができず、畑の仕事は全て手作業で行う必要があり、農業を行うには過酷な環境です。その環境のせいか、この土地のブドウ栽培量は年々減少傾向にありました。
しかし、D.O.ヴァルデオラス統制委員会の取り組みや、地元の生産者の改革によって、伝統と近代的技術の導入の両方に力が入れられ、消滅しつつある土着品種を回復させることに成功。現在では少しずつ収量が上がり、盛り上がりを見せている産地です。
ヴァルデオラス(Valdeorras)のブドウ品種
ヴァルデオラス(Valdeorras)はゴデーリョ(Godello)という品種から造られる白ワインが高評価を得ていることで知られています。かつてはエレガントで香り高い赤ワインの生産も行われていましたが、急勾配で草木が生い茂る畑での作業は効率が悪く、収量は減少傾向にありました。
現在、D.O.ヴァルデオラス(D.O.Valdeorras)では白ブドウは8種、黒ブドウは11種の使用が認められており、造られるワインのタイプは赤・白・スパークリングタイプに加え、トスタード(Tostado)と呼ばれる、干しブドウから造られる甘口ワインがあります。
D.O.ヴァルデオラス(D.O.Valdeorras)の使用品種 |
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白ブドウ |
黒ブドウ |
主要品種 |
・Albariño |
・Mencía |
認定品種 |
・DoñaBlanca |
・Merenzao ・Souson |
エスカラーダ・ド・シル(ESCALADA DO SIL)の主体となっている黒ブドウ品種、メレンサオ(Merenzao)は早熟で糖度が高いことからアルコール度数が高いワインに仕上がる傾向にあります。小粒な実にはタンニンが多く含まれ、しっかりとした酸味と骨格を与えることができる品種です。
メレンサオ(Merenzao)は隣国のポルトガルではバスタルド(Bastardo)と呼ばれており、生産量が少ないことから極めて希少な品種と言われています。
エスカラーダ・ド・シル(ESCALADA DO SIL)
【商品情報】
商品名 |
エスカラーダ・ド・シル(ESCALADA DO SIL) |
生産者 |
アルベルト・オルテ (Alberto Orte) |
地域 |
ブドウ生産地:ガリシア州 D.O.ヴァルデオラス(D.O.Valdeorras) |
ビンテージ |
2020 |
生産国 |
スペイン |
ブドウ品種 |
メレンサオ 60% メンシア 30% ガルナッチャ・ティントレラ10% |
認証・規格 |
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おすすめ料理 |
すき焼き、カツオやマグロのミキュイ、鴨とフォアグラのポワレ、いちじくのタルト など |
発酵容器 |
フードル(ブルゴーニュ産」) |
発酵期間 |
21日間 |
発酵温度 |
18°C |
度数 |
14% |
テイスト |
ミディアム |
飲み頃の温度 |
14~16°C |
容量 |
750ml |
エスカラーダ・ド・シル (ESCALADA DO SIL)について
“アルベルト・オルテは、ほとんど切り立った地面に、古いブドウの木が植えられている区画を発見し、この失われつつある伝統を復活させることを決意した。”
エスカラーダ・ド・シル (ESCALADA DO SIL)を手がけるアルベルト・オルテ (Alberto Orte)は、古木のメレンサオ(Merenzao) をはじめ、メンシア(Mencía)や、ガルナッチャ・ティントレラ(Garnacha Tintorera)などを栽培する区画を所有している数軒の小規模農家と協力してワイン造りを行っています。
ガリシアでは「ミニフンディオ」と呼ばれる「小さな畑(区画)を個人が所有する農業」が主流となっており、さらにアルベルトの協力農家では作業をすべて人の手で行うため、収穫量は極めて少なく、希少性の高いものとなります。
収穫されたブドウは房のまま28日間浸漬され、天然酵母で発酵が進められます。圧搾後、ワインはフレンチオーク樽で18ヶ月の間熟成され、品種の特性とテロワールの力を最大限に引き出すため、繊細な作業によってエスカラーダ・ド・シル (ESCALADA DO SIL)は造られています。
味わいの特徴
輝きのあるルビーレッドの色調に、樽を感じさせる香りと赤いベリーや微かにバラのような香りが広がります。口に含むと、しっかりとしたタンニンとエレガントな酸味が心地良く広がり、フィニッシュにはほのかな苦味が感じられ、長い余韻を楽しむことができるワイン。
グラスに注いで少し時間が経つと、より香りが繊細に広がり、クリーンな酸味を楽しむことができます。開けたてから飲み終わりまで多彩な変化を楽しめるワインです。
生き生きとした酸味が合わせるお料理を引き立たせ、すぐに飲まずに少し寝かせても楽しめる上質な赤ワインと言えます。
おすすめのペアリング
エレガントな酸味を味わえるエスカラーダ・ド・シル (ESCALADA DO SIL)には、羊肉のローストや鴨肉のお料理など、クセのないお肉料理がマッチします。貝類などの魚介を使ったガリシアの郷土料理や、チーズに合わせても楽しめるでしょう。
ガリシア州は、北にカンタブリア海、西に大西洋と1200キロを超える海岸線を持つスペイン有数の漁業の地としても有名です。タコのガリシア風や、ムール貝やホタテ貝の酒蒸しなどの魚介料理も合いますし、スペインでは数少ない「牛乳製チーズ」も多く造られている土地ですので、クセの少ない牛乳製ハードタイプのチーズとも好相性です。
酸味と果実味、タンニンのバランスが良い赤ワイン、エスカラーダ・ド・シル (ESCALADA DO SIL)で、素敵な食事を楽しんでくださいね。
アルベルト・オルテ (Alberto Orte)について
言葉少なだが、ワイン造りは緻密で正確。目標は、複雑で、バランスの取れたエレガントなワインを造ること。偉大なテロワールを発見し、絶滅寸前の品種を復活させることに人生の大部分を捧げてきたと言います。
ヘレス、ヴァルデオラス、リオハでワインを生産しているアルベルトは、農家であり、生産者であり、歴史家でもあります。
テロワールを反映したワインを生み出すための基本要素に、「低収量」「バランスのとれた土壌」「最高品質の原料」を挙げ、土地に合った栽培方法や醸造技術の発展のための努力を惜しまない姿と、生み出されるワインの素晴らしさから、スペインワイン界の次世代を担う造り手として支持されている生産者です。
まとめ
今回は、希少品種であるメレンサオ(Merenzao)を主体に造られる赤ワイン、「エスカラーダ・ド・シル(ESCALADA DO SIL)」をご紹介しました。
ガリシアの州都である、サンティアゴ・デ・コンポステラはキリスト教の三大聖地として世界的に有名ですよね。巡礼のシンボルとなっている「ホタテ貝」のモチーフがエスカラーダ・ド・シル (ESCALADA DO SIL)のラベルにもデザインされており、ラベルからもアルベルト・オルテ (Alberto Orte)がテロワールや歴史を重んじていることが伺えます。
ガリシア州の歴史に興味のある方はぜひこちらの記事もチェックしてみてくださいね。
◆スペインの「異邦の地」・ガリシア州の文化と食について
https://sukoruni.wine/blogs/wine-column/culture-and-food-in-galicia-spains-foreign-land
この機会に、年間生産本数わずか3200本という希少な赤ワイン、「エスカラーダ・ド・シル(ESCALADA DO SIL)」をぜひ味わってみてください。