9月8日はスペインワインの日です。今回はスペインワインの日の詳細、スペインのワイン法と歴史の関係性、スペインワイン法の特徴とスペインワインの味わいの特徴について解説します。
スペインワインの日の詳細
9月8日はスペインワイン協会(Asociación del Vino Español en Japón)が制定したスペインワインの日です。由来となったのはスペインで初めて「ワイン法(Estatuto del Vino)」が制定されたのが1932年9月8日だったことです。一般社団法人・日本記念日協会により認定・登録されました。
スペインワイン協会とはスペインワインの素晴らしさを日本に伝えるために活動している団体で、スペインワインの日の前後の日曜日に、「スペインワイン祭り」を開催し、スペインワインのPRをおこないます。
スペインのワイン法と歴史の関係性
スペインワインの由来となった、1932年9月8日に制定されたワイン法は現在のスペインの原産地呼称等製法のもととなる政令です。スペインで最初にワインに対し、規制がおこなわれたのは、18世紀に入ってからのことです。
スペインでは1492年、8世紀から続いたイスラム教徒からの国土奪還運動、レコンキスタがグラナダ(Granada)の陥落によってようやく終焉を迎えました。そして奇しくも同年にクリストファー・コロンブス(Christopher Columbus)がスペイン王室の承認のもと、大西洋に「新世界」を発見しました。そして、スペインの大航海時代が幕開けとなったのです。
大航海時代に入るとスペイン王室の命を受け新大陸、つまりアメリカ大陸に渡った宣教者たちは宗教の布教だけでなく、聖餐用ワインを造るためのぶどう、レーズン用のマスカットの栽培法も伝授していきます。
しかし、いっぽうではスペインでは大航海時代以降、それまで交易のなかった国々から、安価で品質の低いワインが輸入されるようになってしまいます。その結果、スペインワインの品質は下降の一途をたどります。スペインワイン業界はこのままではスペインワインの世界的地位の向上は見込めないと判断。そして、国内で生産されるワインの品質を保つ基準となる、スペイン初の特別立法を18世紀に交付しました。
19世紀に入ると、スペインのワイン産業はフランスへのテーブルワイン(Table Wine)の輸出がその主力となります。しかし、19世紀後半になるとスペインワインには偽造をしたものがあったとしてフランスやイギリスから輸入制限を受けてしまいます。そのため、スペインワインの国際市場での評価は一気に落ちてしまうのです。その流れを受け、1920年代にはリオハ(Rioja)を皮切りに、ヘレス(Jerez)、マラガ(Maraga)で原産地指定制度が成立。そして、1932年に先述したワイン法が成立し、スペインワインの地位の向上に貢献することとなります。
第二次世界大戦が勃発すると、スペインでは長い内戦の時代に入ります。すると、スペインワインの生産と輸出は大幅に減り、その消費はほぼ国内にのみ限られる時代もありました。そのため、1950〜60年代にかけ、下降していくスペイン国内のぶどう栽培を立て直すため、各地で協同組合が設けられ、大量供給が図られます。その影響で栽培が簡単で大量の果実をつける品種が普及するようになります。
1970年には「ぶどう畑、ワインおよびアルコールに関する法令」が制定され、品質管理の制度が強化されます。そして、1975年、長期に渡ったフランコ(Francisco Franco Bahamonde)による独裁政権が終焉。スペインワインにおける価値観は、それまでの「質より量」が、「量より質」というものに変化していきます。
また、2003年にはあらたにワイン法が施行され、それに基づいてワインの格付けが確立します。 その後、EUワイン法が2009年に改定されることに伴い、さらにあらたな原産地呼称が定められました。
新しいワイン法では、それまであった指定地域高級ワイン(VCPRD)という原産地呼称が廃止されます。そのかわり、保護原産地呼称(Denominacion de Origen Protegida/DOP)と(Indicacion Geografica Protegida/IGP)の2つが設定されています。
スペインワイン法の特徴とスペインワインの味わいの特徴
スペインワイン法は、底辺から頂上まで6層に分かれたピラミッド型の格付けが特徴です。それぞれの格付けについて説明していきましょう。
ビノ・デ・メサ(Vino de Mesa)
ピラミッドの底辺にあたる格付けで、テーブルワインと呼ばれるカテゴリーがこのビノ・デ・メサで、スペインワインの年間生産量の75%を占めています。一般的に大量生産されるワインのことを指し、格付けのない地域や畑で栽培されたぶどうを使用したり、醸造所が指定地域外にあったり、異なる地域や畑のワインをブレンドするなどし、造られたワインの総称です。ラベルには、地域名、品種名、収穫年などの表示が一切認められていません。
ビノ・デ・ラ・ティエラ(Vino de la Tiera/VT)
ビノ・デ・メサの上段に位置する格付けで、地方ワインやカントリーワインのことを指します。
ビノ・デ・ラ・ティエラは、名称のあとに町や地方名が併記され、地域名を冠することのできるテーブルワインといった位置付けです。使用される樽の容量は600リットルが上限となっています。
ビノ・デ・カリダ・コン・インディカシオン・ヘオグラフィカ(Vino de Calidad con Indicacion Geografica/VC)
ビノ・デ・ラ・ティエラの上段に位置する格付けで、地域名称付き高級ワインと呼ばれます。 ある特定の地域、地区などにおいて収穫されたぶどうを原料として醸造、熟成されたワインのことを指します。より地域性が表現されたワインとなり、この格付けで5年以上の実績がある産地は、原産地呼称ワインへの昇格を申請する権利を得るのです。
デノミナシオン・デ・オリヘン(Denominacion de Origen/DO)
ビノ・デ・カリダ・コン・インディカシオン・ヘオグラフィカの上位にある格付けで、原産地呼称ワインと呼ばれます。 原産地呼称統制委員会のある限定された原産地において、地域内で栽培され、しかも認可を受けた品種で造られた上質なワインとされます。
デノミナシオン・デ・オリヘン・カリフィカーダ(Denominacion de Origen Calificada/DOCa)
原産地呼称ワインの上段に位置する格付けで、特選原産地呼称ワインと呼ばれます。 原産地呼称ワインの中から厳しい基準で昇格が認められた高品質なワインのことを指します。
ビノ・デ・パゴ(Vino de Pago/VP)
ピラミッドの頂点に位置する格付けで、単一ぶどう畑限定高級ワインと呼ばれます。ワイン造りに必要な気候や地形、地質、土壌などのテロワールが抜きん出ている限定された畑において生産される、個性的な高級ワインのことです。
以上、6層の格付けによるワイン法により、地域ごとの個性豊かな、スペインワインの品質が保たれています。さまざまなスタイルが存在するスペインワインですが、全体として土着品種の個性、そして、地域ごとのテロワールの特性が豊かに表現されています。そして、赤はフルーティなフルボディ、白は華やかな香りとフレッシュさとフルーティさが楽しめるものが多い、という特徴があります。
まとめ
スペインワインの日の詳細、スペインのワイン法と歴史の関係性、スペインワイン法の特徴とスペインワインの味わいの特徴について解説しました。
9月8日はスペインワインの日。残暑が厳しいながらも秋の夜長が徐々に深まるこの時期に、スペインワインを囲んで楽しいひと時を過ごしていただければと思います。