グラスに注がれた
スペインの豊かな文化と伝統を味わう
「アルマ・カラオベハス」主催のワイン・テイスティングセミナー(2023年1月21日)
アルマ・カラオベハスは、「ワインと美食による忘れられない体験の創造」をテーマに、良質かつユニークなワイナリーやレストランビジネスをスペイン各地で展開するグループです。同グループのパウロ・カルドーゾ氏(コマーシャルディレクター)によるプレス向けワイン・テイスティングセミナーが、スペイン大使館および株式会社スコルニ・ワインのサポートのもと、スペイン料理レストラン「フェルミンチョ」(東京都港区)で開催されました。
アルマ・カラオベハスのルーツは1982年のセゴビアに遡ります。ソムリエそしてホテルやレストランビジネスなどで名を馳せる起業家ホセ・マリア・ルイス氏は、1982年にセゴビアで自身のレストランを創業しました。ルイス氏は名物料理「子豚の丸焼き」に合うワインを造りたいと思うようになり、1987年、DOリベラ・デル・ドゥエロに位置するペニャフィエル村で理想のワインづくりに着手しました。これが記念すべき初のワイナリー、「パゴ・デ・カラオベハス」へと成長します。
それ以降、グループはマドリッド、ルエダ、リベイロなどの様々な地域に6つのワイナリーを展開し、個性的かつ安定したワインづくりを続けています。2017年にはパゴ・デ・カラオベハス内にレストラン「アンビビウム」がオープン。ワインと美食による極上の体験を実現するこのレストランは、すでに数々の賞を受賞しています。こうしたグループ経営を受け継ぐのは、ルイス氏の息子であるペドロ・ルイス・アラゴネスCEOです。カルドーゾ氏はこう語ります。「『人が第一』という理念のもと、社員240人に公正な福利厚生を付与するなど、持続可能性を重視する企業経営に尽力しています」。設備や醸造法の向上や革新に取り組みながらも、有機栽培を取り入れるなど環境にも配慮した上質なワインづくりを追求しているとのことです。
セミナーでは、6つのワイナリーのうち5つのワイナリーから以下10種類のワインが出されました。
- パゴ・デ・カラオベハス2020(ボデガ・パゴ・デ・カラオベハス、DOリベラ・デル・ドゥエロ)
- ミル・セテンタ・イ・セイス 2018(ボデガ・ミル・セテンタ・イ・セイス、DOリベラ・デル・ドゥエロ)
- 30,000 マラヴェディエス2019(ボデガ・マラニョネス、DOヴィノス・デ・マドリッド)
- キンタルナ2020(オシアン・ビデス・イ・ビノ、IGPカスティーリャ・イ・レオン)
- オシアン2020(オシアン・ビデス・イ・ビノ、IGPカスティーリャ・イ・レオン)
- カピテル2020(オシアン・ビデス・イ・ビノ、IGPカスティーリャ・イ・レオン)
- O Pequeno Mein Castes Blancas 2021(ボデガ・ビニャ・メイン-エミリオ・ロホ、DOリベイロ)
- O Gran Mein Castes Blancas 2020(ボデガ・ビニャ・メイン-エミリオ・ロホ、DOリベイロ)
- O Gran Main Tinto 2019(ボデガ・ビニャ・メイン-エミリオ・ロホ、DOリベイロ)
- Emilio Rojo 2019(ボデガ・ビニャ・メイン-エミリオ・ロホ、DOリベイロ)
*1、2、3、4、5はスコルニのオンラインショップで販売しています(ビンテージが異なる銘柄もあります)。7、8、9、10は日本未入荷のワインとなります(2023年2月16日の時点)。
4、5、6は、ベルデホ100%の白ワインです。ブドウが栽培されているのは14の村にある60の小さな区画。フィロキセラの被害を受けていない畑や、フィロキセラ以前の自根クロ―ンから、驚くほど澄んだ味わいのワインが生まれます。どの区画も低収量。最終的な品質に向けて、単一または複数の区画のブドウを使い、野生酵母による発酵、フードルや樽での熟成、シュールリー熟成などの多様なプロセスを使い分けています。ベルデホの代名詞とも言えるのはDOルエダですが、オシアンが選んだのはIGPカスティーリャ・イ・レオン。「フレッシュな早飲みタイプ」が多いルエダとは異なり、オシアンのベルデホは、凝縮した果実味、深み、複雑さ、しっとりとした口当たりを実現したエレガントなワインに仕上がっています。カルドーゾ氏は「本当のベルデホを味わえますよ」と強調しました。
1のパゴ・デ・カラオベハス2020はテンプラニーリョ(ティント・フィノ)、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロをブレンドした赤ワインです。アルマ・カラオベハスの原点とも言えるパゴ・デ・カラオベハスは、持続性と自然環境に配慮したワイナリーです。温度制御システムやソーラーシステムの他、熟成前酸化を回避するためにクレーンなどの重力を活用する設備が備えられています。微生物汚染を回避すべく常にクリーンな環境整備に努めているとのこと。「泥灰土、粘土、砂岩からなる豊かな土壌といった自然環境に恵まれているだけでなく、醸造技術や工程の面においても多様性のあるワイナリーです」とカルドーゾ氏は述べます。ワイナリー周囲の景観も素晴らしく、ミシュランの星を獲得したレストランもあるなどワインツーリズムにも力を入れています。そんなワイナリーで丁寧に作られたパゴ・デ・カラオベハスは、カカオやシナモンの香りや濃厚な果実味、そして長い余韻が楽しめる最高品質のワインです。参加したジャーナリストから「このワイン、とても好き」との声も聞かれました。セゴビア名物の子豚の丸焼きに合わせて飲んでみたい逸品です。
「ミル・セテンタ・イ・セイス(mil setenta y seis)」とはスペイン語で1076という数字を意味します。2のミル・セテンタ・イ・セイス ティント2018は、標高1076mの山地で育ったブドウ(ティント・フィノ、アルビーリョ)で造られました。標高1076mといえば、空や雲に手が届きそうに感じられるほどの高さ。澄み切った空気の中で生まれた繊細でフレッシュな味わいの赤ワインです。3番の30,000 マラヴェディエス2019が造られるボデガ・マラニョネスも高い標高に位置しています。水はけの良い砂質の花崗岩土壌からなるこの土地は、穏やかな風の吹く地中海性気候に属しています。こうした環境で、ブドウ本来の果実味やほどよい酸が感じられるグルナッシュ主体のワインが生まれます。
エミリオ・ロホとビニャ・メインはリベイロの伝説的な高品質ワイナリーです。アルマ・カラオベハスはこれらワイナリーを傘下に入れ、「ビニャ・メインエミリオ・ロホ」という名の1つのワイナリーに統合しました。そこで造られたのが、7、8、9、10のワインです。緻密なワインづくりで知られるヴィニュロンのエミリオ・ロホは、すべての樹のブドウを食べ、翌日収穫できると判断した樹一本一本に印を付けていました。新体制にも受け継がれたこの収穫方法を含め、徹底した品質管理が行われています。この希少なワインから、みずみずしさや力強いテロワールを感じることができます。トレイシャドゥーラ、アルバリーニョ、ラド、ゴデージョ、ロウレイラなど、現在は8種類の土着品種が栽培されています。
ワイン誌やワインジャーナリストが参加したこのセミナーは、終始なごやかな雰囲気の中、カルドーゾ氏の細やかな説明を聞きながらゆっくりと試飲が進みました。スペイン大使館のカスティーリャ・イ・レオン州部門で商取引アドバイザーを務めるクリスティーナ・ゴリンチョイ・チェバヌ氏はこう述べました。「アルマ・カラオベハスは改革性とプロフェッショナリズムのもと、常に最高品質のワインを提供しています。日本でも多くの方々に飲んでいただきたいと思います」。スペインワインには「日常生活で楽しめる親しみやすいワイン」というイメージが先行しています。これと同時に、驚くほど質の高い洗練されたワインの産地であることにも注目すべきであると改めて強く認識したセミナーとなりました。