闘牛・人々を熱狂させるスペインの国技の魅力に迫る 闘牛・人々を熱狂させるスペインの国技の魅力に迫る

闘牛・人々を熱狂させるスペインの国技の魅力に迫る

スペインを代表する数々の芸術家たちが、闘牛をテーマに作品を作りました。

ピカソ(Pablo Ruiz Picasso)は画家よりもバンデリジェ-ロ(Banderillero,銛(もり)打ち士)になりたかったそうで、闘牛士ルイス・ミゲル(Luis Miguel Dominguín)とも友達でした。

また、ゴヤ(Francisco José de Goya y Lucientes)はかつて闘牛士だったという説もあります。

闘牛のどういったところが、多くの芸術家たちをとりこにしたのでしょう。

この文章では、その謎に迫ってみたいと思います。

スペインの国技・闘牛の歴史をざっくりとご紹介します

スコルニワイン 闘牛

日本では「闘牛」と呼ばれていますが、スペイン語では、闘牛は「コリーダ・デ・トロス」(Corrida de toros,「牛を走らせること」を意味するスペイン語)と呼ばれています。

闘牛が始まったのは、古代ギリシャ(Greece)とも古代ローマ(Roma)ともいわれていますが、スペインへは、北アフリカ出身のムーア人(Moors)経由で8世紀の初めころに伝わったとされています。

11世紀から17世紀ころまでは、主に貴族が行う騎馬闘牛(Rejoneo,レホネーオ)が盛んで、現在のようにプロの闘牛士が観客の前で闘牛を行うようになったのは18世紀以降です。

騎馬でなく、人と牛が対するスタイルの闘牛を始めたのは、ロンダ(Ronda)出身のフランシスコ・ロメロ(Francisco Romero)という闘牛士(Matador,マタドール、Torero,トレーロとも呼ばれる)で、フランシスコの孫・ペドロ(Pedro Romero Martínez)は、25年間に5,600頭の牛と対峙しながら、1度も怪我をしたことがないという伝説を残しました。

ロメロ一族は、様々な闘牛技術を開発したセビージャ(Sevilla)出身の「コスティリャーレス」(Costillares)ことホアキン・ロドリゲス(Joaquín Rodríguez)と共に、近代闘牛の発展に大きな役割を果たしました。

ちなみに、マタドールはスペイン語で「殺し屋」も意味します。テキーラ、パイナップルジュース、ライムジュースをシェイクしたカクテルは、「マタドール」という名前で呼ばれています。

スペインからの独立を視野に入れているカタルーニャ州(Cataluña)では、2012年に廃止された闘牛ですが、スペイン国内には500以上の闘牛場(Plaza de toros,プラサ・デ・トロス)があり、平均して年間約2,000回の闘牛が開催されています。

2020年も、コロナ禍ながら、100回以上の闘牛が開催されました。

危険が伴うため、男性しかいないイメージの闘牛士ですが、実は少数派ながら、女性の闘牛士も活躍しているそうです。

また、日本人闘牛士も、今までに3人誕生しています。

闘牛はどのように行われる?おおまかな流れをご紹介

スコルニワイン 闘牛

では、これから、闘牛がどのように進行していくのか、流れをご紹介していきたいと思います。

まずは、騎馬を先導役として、光の衣装(Vestido de Luces,ヴェスティード・デ・ルセス)を身に着けた3人の闘牛士、バンデリジェ-ロ、騎馬に乗って牛を槍で刺す闘牛士(picador,ピカドール)、助手(Monosabio,モノサビオ)、3頭のラバ隊(Mule)が、パソドブレ(Paso doble)の演奏と共に砂場(Arena,アレーナ)に入場します。

避難壁(Burladero,ブルラデーロ)へと闘牛士たちが移動した後、うす暗い檻に閉じ込められていた牡牛は、いきなり誰もいない砂場に出され、わけもわからず走り出します。

闘牛士の相手となるのは、「トロ・ブラボ」(Toro Bravo)という、闘牛牧場で育てられた、完全に飼いならされていない半野生の牡牛です。リディア種(Lidia)の黒牛で、年齢は満4~5歳、体重は約500kgあります。

その後、砂場に現れた助手たちが左右にはためかせるカポーテ(Capote,表がショッキングピンクで裏が黄色の布)を目掛けて、牡牛が突進。牡牛の動き方などを観察した後、闘牛士はカポーテを手に1人、牡牛としばらく対峙します。

次に、ラッパの音を合図として、馬に乗ったピカドールが登場。首が傾けばカポーテやムレータ(Muleta,棒についた赤い布)の動きが見やすくなるため、長槍で牡牛の首のあたりを刺します。

しばらく助手がカポーテで牡牛を誘った後、今度はバンデリジェ-ロが、2本の銛を手に持ち、牡牛が下を向いた隙を狙って、牡牛の正面側から飛び上がりつつ、背中に銛を打ち込みます。

バンデリージョ3人分、計6本の銛が刺さった状態の牡牛と、ムレータや剣を手に持った闘牛士が、1対1の対決を繰り広げるのが、闘牛のクライマックスです。

闘牛士が牡牛をどれだけ従わせられるか、どれだけ牡牛を目の前にして動かずにいられる度胸があるか、などを観客は見ていて、良い演技をすると「オーレ」(Olé)という声援が上がったり、パソドブレの演奏が再び始まったり、観客がスタンディングオベーションしたりします。

観客からのリクエストがあれば、アンコールのように、ムレータの演技が若干長めになることもあるようです。

ベロニカ(Veronica,ムレータで牡牛を通過(Pase,パセ)させる技)が連続で決まるなど、

闘牛士と牡牛の演技が特に素晴らしい場合は、牡牛は赦免(Indulto,インドゥルト)され、殺されずに済むこともあります。

赦免された牡牛は、傷を治療してもらった後、闘牛牧場で種牛として活躍するそうです。

ちなみに、1回闘牛したことのある牛は人間を襲うようになってしまうので、2度と闘牛には出られません。

赦免されなかった牡牛は、闘牛士により肩甲骨の間のくぼみに剣が刺され(「真実の瞬間」、Hora de verdad,オラ・デ・ベルダ)、15分以内に絶命します。

絶命した牡牛がラバ隊に引かれて退場した後、闘牛士の演技が良かったと判断した観客たちは、一斉に白いハンカチを振ります。その様子を見た会長(Presidente,プレシデンテ)が白いハンカチを出すと、闘牛士は褒章として、牡牛の耳1枚を受け取ることができます。

その後も、観客たちが白いハンカチを振り続けた場合、もう1枚の耳や尻尾の毛が与えられることもあります。

ちなみに、赦免された場合は、絶命した牡牛の耳や尻尾の毛が代わりに与えられるそうです。

3人の闘牛士は、1人ずつ順番に闘牛を行った後、再び同じ順番で2回目の演技を行います。

人気の闘牛士の場合、例外的に1人または2人で闘牛を行うこともあるそうです。

約2時間かけて6頭の闘牛が行われ、バンデリジェ-ロを従えた闘牛士が退場すると、その日の闘牛は終了。

絶命した牡牛は解体され、食肉として、レストランなどに運ばれます。

スペインでは、通常の闘牛以外にも、騎馬闘牛や見習い闘牛士(ノビジェーロ,Novillero)と若牛による闘牛なども行われています。

闘牛に興味はあるけれど、残酷なのであまり見たくない、という方は、身体をそらすポーズなどをして、人が牛にどれだけ近づけるか度胸を試す、闘牛ショー(Concurso de Recortes, コンクルーソ・デ・レコルテスまたはConcurso de Recortadores, コンクルーソ・デ・レコルタドレス)を見に行くと良いかもしれません。

セビージャの闘牛場と周辺のグルメスポット

スコルニワイン 闘牛

バレンシア(València)の火祭り(Falles)が行われる3月中旬から、サラゴサ(Zaragoza)でエル・ピラールの聖母祭(Fiestas del Pilar)が開催される10月中旬までが、スペインの闘牛シーズンです。

闘牛場は第1級から第3級までランク付けされていますが、格付け第1級闘牛場と呼ばれているのは、マドリード(Madrid)、セビージャ(Sevilla)、バレンシア、ビルバオ(Bilbao)、コルドバ(Córdoba)、サラゴサ、マラガ(Málaga)、パンプローナ(Pamplona)、サン・セバスチャン(San Sebastián)の9ヶ所です。

第1級から第3級以外に、祭りの際に臨時で造られる仮設闘牛場もあります。

今回は、第1級闘牛場の中で、わたしが実際に訪れたことがあるセビージャのマエストランサ闘牛場(Plaza De Toros De La Real Maestranza)と、その周辺のグルメスポットをご紹介したいと思います。

マエストランサ闘牛場は、18世紀に建てられた、約12,000人収容の王立闘牛場です。 

段階的に改修された後、1881年に、建築家フアン・タラベラ・イ・デ・ラ・ベガ(Juan Talavera y de la Vega)が、後期バロック様式の闘牛場として完成させました。

マエストランサ闘牛場は、白い壁とオレンジがかった赤いドア、黄色い縁取りのカラーリングが印象的な闘牛場です。

セビージャ派の本拠地で、内部には博物館やショップもあります。

わたしの場合、闘牛は見ず、ガイドツアーで内部を見学しただけなのですが、客席から見た闘牛場の広さに、まずは圧倒されました。

そして、コリント様式(Corinthian)風の柱装飾が印象的な、「王室専用バルコニー席」(Palco del Príncipe)のアーチも、ゴージャスだと感じました。

博物館は闘牛場1階の内部通路にあり、そこには、涙を浮かべた聖母(La Esperanza,ラ・エスペランサ)像の写真が飾られ、礼拝所も設けられていました。

闘牛士は、闘牛前にそこでお祈りするのだそうです。

博物館には、闘牛士の衣装や闘牛関連の絵画なども展示されていて、壁にはめ込まれた装飾タイル(Azulejo,アスレホ)も素敵でした。

わたしは1月に訪れましたが、マエストランサ闘牛場を訪れるならば、闘牛祭りが開催される、フェリア・デ・アブリル(Feria de abril)の時期がおすすめです。

フェリア・デ・アブリルでは、サンルーカル・デ・バラメーダ(Sanlúcar de Barrameda)産のマンサニージャ(Manzanilla)やマンサニージャをスプライト(Sprite)またはセブンアップ(7UP)で割って、氷を入れた「レブヒート」(Rebujito)と呼ばれるカクテルは欠かすことができません。

エレデーロス・デ・アルグエソ(Herederos de Argüeso )のサン・レオン マンサニージャ(San León Manzanilla)やラス・メダージャス マンサニージャ(Las medallas Manzanilla)があれば、本場の「レブヒート」を日本にいながら楽しむことができますので、ぜひお試しください。 

ちなみに、セビージャは、フランス人作曲家ジョルジュ・ビゼー(Georges Bizet)が作曲したオペラ「カルメン」(Carmen)の舞台としても知られています。

このオペラには、カルメンが恋する闘牛士も登場します。主人公のカルメンが働いていたという設定の煙草工場も闘牛場から徒歩で10分強の場所にあるので、立ち寄ってみるのも良いでしょう。(現在は、セビージャ大学(Universidad de Sevilla)になっています)

オペラ「カルメン」には、マンサニージャを酒場で飲むシーンも登場しますよ。

話を戻しまして、闘牛場のそばには、牛の頭や闘牛関連の写真、闘牛士の衣装などが飾られた店内で、闘牛のお肉やワインを楽しむことができる「メソン・セラニート」(Mesones del Serranito)というお店もあります。

闘牛の余韻を味わいながら、一杯やるのには、うってつけなお店です。

店名にもなっている、セビージャ発祥のボカディージョ(Bocadillo)の一種・セラニート(Serranito)を食べに訪れてみるのも良いかもしれません。

 

 

闘牛のような力強さが感じられるD.O.トロのワイン

スペイン北西部カスティーリャ・イ・レオン州(Castilla y León)の西部サモラ県(Provincia de Zamora)に、牛や闘牛を意味する「トロ(D.O.Toro)」というワイン産地があります。トロはティンタ・デ・トロ(Tinta de Toro)で造られる力強いフルボディワインで近年注目されている産地です。ティンタ・デ・トロは、スペインを代表する赤ワイン用ぶどう品種のテンプラニーリョ(Tempranillo)のシノニム(Synonym/別名)です。幅広い気候に適応することのできるテンプラニーリョはイベリア半島の各地で栽培されています。そのため、各地で50種類以上のシノニムを持っていますが、トロで栽培されるテンプラニーリョはティンタ・デ・トロと呼ばれます。

トロは寒暖差の厳しい大陸性気候です。そのため、ティンタ・デ・トロは、他の地域で育つテンプラニーリョよりも厚い果皮を持ち、酸は控えめで非常にフルーティ、そして、凝縮された旨みがあります。ティンタ・デ・トロのパワフルで濃厚、芳醇な味わいは世界中で評価されていて、20世紀末から急成長を遂げたことでも非常に注目されています。

トロのワイン造りの起源はローマ人が入植した頃よりさらに古い時代にさかのぼるとされています。 すでに、中世にはトロのワインの人気には揺るぎないものがありました。そのため、他の地域のワインが流通されていなかった町や都市でもトロのワインは販売できるほど、特権があったのです。トロのワインは王室の御用達であり、15世紀以降、アメリカ大陸へと向かう王室の船にも積み込まれていました。また、19世紀にフィロキセラで大打撃を受けたフランスでは大量のトロのワインを輸入しています。

D.O.トロには1987年より製品の品質を保証する規則を監視する規制委員会を持っています。規制委員会では50以上のワイナリーの品質を保証し、白ワイン、ロゼワイン、赤ワインの製造を許可しています。そして、土地固有の品種の栽培を奨励、栽培方法や収穫量に規定を設け、醸造プロセスにも適切な基準や技術に沿っているかどうか重視し、ワインの品質を保証しています。また、赤ワインについては熟成期間に応じ「ホベン(Joven)」「クリアンサ(Crianza)」「レセルバ(Reserva)」「グラン・レセルバ(Gran Reserva)」の用語を使います。

 

おすすめのD.O.トロのワイン

モンテ・トロ クリアンサ(Monte Toro Crianza

色合いはルビーレッド。カシスやダークチェリーのような赤系ベリーのアロマが凝縮されています。また、非常にフルーティで、ビロードのような口当たりが楽しめます。ほんのりとしたスパイス感とノンフィルターならではのパワフルさが特徴のフルボディワインです。

ティンタ・デ・トロ 100%使用。

造り手のボデガ・ラモン・ラモス(Bodega Ramón Ramos)は1963年創立の家族経営ワイナリー。現在の当主は2代目で、ラモン氏とホセ氏の兄弟が力を合わせて運営しています。地域の伝統的なワイン造りに情熱を注ぎ、品質の向上を第一に掲げ、丹精込めたワイン造りに励んでいるワイナリーです。ぶどうの持つ本来のうまみにこだわり、熟成させるタイプの赤ワインにはフィルターを使わず、無濾過で瓶詰めします。そのため、どこか懐かしい昔ながらの味わいが表現されているのです。

 

モンテ・トロ レセルバ(Monte Toro Reserva

色合いは深みのあるルビーレッド。プラムやダークチェリーなど、黒系ベリーの甘いフルーティなアロマに加え、カカオやナツメグなどの甘やかかつ個性的なスパイスのニュアンスが楽しめます。口に含むと柔らかさがあり、非常に滑らかな口当たりです。熟成感がたっぷりと感じられ、渋みと酸が絶妙にまとまった心地良い余韻が楽しめます。ノンフィルターならではのパワフルさとレセルバらしい落ち着きのあるエレガントな逸品です。ティンタ・デ・トロ 100%使用。

 

終わりに

スコルニワイン 闘牛

闘牛は、牡牛と闘牛士のコンディションや天候の良し悪しによって、その日ごとに闘牛の満足度が大きく異なります。

また、闘牛は、一方的に見るものだと思われがちですが、実は観客の反応によって闘牛士や牡牛の結果が左右される、参加型のイベントです。

だからこそ、すべての条件が完璧にそろった闘牛を1度見た人は、会場の一体感や興奮を忘れられず、リピーターになるのだと思います。

生死がかかった真剣勝負は、日常では、めったに見ることはできません。

臨場感を味わうならば本場で見るのが一番ですが、現在スペインに行くのは難しいため、興味のある方は、まずYouTubeなどの動画を見てみてはいかがでしょうか。

もしかしたら、意外と闘牛の魅力にハマってしまうかもしれません。

 

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