イベリア半島の南東に位置するムルシア州 (Murcia)は、バレンシア州とアンダルシア州に挟まれた小さな州で、「ヨーロッパの台所」と言われるほど古くから農業が盛んな土地です。カスティージャ・ラ・マンチャ州と接する北部にはワイン産地として評価を得ているフミージャ(Jumilla)やイエクラ(Yecla)があり、南部の地中海沿岸地域は温かな気候と美しい景観で観光地としても人気があります。
今回は、ムルシア州 (Murcia)の北側、フミージャ(Jumilla)で造られる赤ワイン、「パラヘス・デル・バジェ モナストレル (Parajes del Valle Monastrell)」をご紹介します。
気候が生み出す力強い味、ブレンド用として評価されていたモナストレル
ムルシア州の気候は南東の「海岸部」と、その他の「丘陵・山岳部」で大きく分かれています。
南東の地中海に面した地域は一年を通して温暖な気候で、夏冬の寒暖差が少ない穏やかな気候です。一方、州の面積の65%を占めている丘陵・山岳部では昼夜の寒暖差が激しく、夏は40度を超える日もあれば冬は氷点下まで下がることもある大変厳しい環境。州全体の年間降水量は300mm程度と乾燥しており、年間3000時間を超える豊かな日照量を誇っています。
ワインが有名な産地はほぼ丘陵・山部に位置しており、このような土地で収穫されるブドウは糖度が高くアルコール度数が上がることから、力強いワインに仕上がります。そのためムルシアで造られるワインの多くが、他のワインに骨格を与えるための高品質な「ブレンド用ワイン」として出荷されてきました。
バルクワインから瓶詰めワインへの転換
フミージャは、かつてブレンド用の「バルクワイン」を主に生産してきた産地ですが、近年では醸造技術の向上や生産者の努力によって、モナストレル(Monastrell)単一で楽しむことができる高品質なワインが続々と生まれています。
バルクワインから瓶詰めワインの生産が主流となったのは、この土地で古くから栽培されてきたモナストレル(Monastrell)を、ブレンド用ではないワインに仕上げるために、生産者たちが従来の栽培方法や醸造方法などの見直しと再構築をはじめたことがきっかけでした。
1980年台に起こったこの動きによって大きな方向転換が起こり、瓶詰めワインの評価は徐々に高まっていきます。この流れは現在でも受け継がれており、生産者たちは日々、伝統を守りながら最新の栽培技術や醸造技術を取り入れ、素晴らしいワイン生み出すことに力を注いでいます。
生産者ごとの違いを楽しめるフミージャの赤ワイン
フミージャのワインが好評価を得る理由の一つに、モナストレル(Monastrell)という品種の特徴が地域の環境条件にマッチしていることが挙げられるでしょう。スペイン南部が原産のモナストレル(Monastrell)は、粒が小さく果肉がしっかりとした黒ブドウで、ブドウの中でも特に干ばつに強く、雨の少ない土地でも栽培することができます。
極端な暑さと乾燥に耐えうる品種だからこそ得られる果実は、ワインにフルーティーさと渋み、豊かなアルコール感を与えます。しっかりとしたボディのあるものから、エレガントなタイプのワインまで、生産者によって様々なスタイルのモナストレル(Monastrell)を楽しめるのも、フミージャワインの魅力です。
現在では、モナストレル(Monastrell)単一のワインにカベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)やシラー(Syrah)などの国際品種ブレンドしたワインも高評価を得ています。
※フミージャ・モナストレル(Jumilla Monastrell)と表示する場合はモナストレルを85%以上使用することが規定されています。
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パラヘス・デル・バジェ モナストレル
【商品情報】
商品名 |
パラヘス・デル・バジェ モナストレル (Parajes del Valle Monastrell) |
生産者 |
パラヘス・デル・バジェ(Parajes del Valle) |
ビンテージ |
2022 |
生産国 |
スペイン |
地域 |
D.O.フミージャ(D.O. Jumilla )ムルシア州(Murcia) |
ブドウ品種 |
モナストレル(Monastrell)100% |
認証・規格 |
ユーロリーフ、EU有機認証及びヴィーガン認証有 |
おすすめ料理 |
ポークリエット、トリッパ、チキンのトマト煮 など |
発酵容器 |
ステンレス・スティールタンク |
発酵期間 |
6日間 |
発酵温度 |
23℃ |
熟成容器/期間 |
コンクリートタンク/ 5ヶ月 |
度数 |
13.0% |
テイスト |
赤(ミディアムボディ) |
飲み頃の温度 |
12℃ |
容量 |
750ml |
パラヘス・デル・バジェ モナストレル (Parajes del Valle Monastrell)について
パラヘス・デル・バジェ モナストレル (Parajes del Valle Monastrell)は、標高700メートルの高地に植えられた樹齢15~30年のモナストレルから造られます。収穫は全て手摘みで行われ発酵が進められます。その後ステンレスタンクからコンクリートタンクに移し、アルコール発酵とマロラクティック発酵を行います。
酸化防止剤無添加、清澄時には動物性原料を使用せず、オーガニック認証とヴィーガン認証を取得した食の多様性に配慮した赤ワインです。
味わいの特徴
深みのある美しいルビーレッドの色調。ダークチェリーのような赤系果実のアロマと、ほのかにオレンジピールやハーブを思わせる香りが広がり、口に含むと果実味と優しい渋みのバランスが良く、しっかりとしたボディがあり後味に旨みを感じられる赤ワインです。ミディアムボディで渋みが強すぎないので、少し冷やして飲むのもおすすめ。
おすすめのペアリング
酸味と果実味のバランスが良く、程よい渋みのあるパラヘス・デル・バジェ モナストレル (Parajes del Valle Monastrell)は、どんな食事にも良く合いますが、トマトソースを使ったお料理との相性が特に良いのでぜひ合わせてみてください。
チキンのトマト煮やトリッパのトマト煮込み、トマトソースのパスタやピザと合わせていただくと、トマトの酸味と旨みがワインの酸や渋みと良く合います。生のトマトを使ったサラダや、トマトベースの冷たいスープ「ガスパチョ」などもおすすめ。冷たいお料理と合わせるときには、ワインを少し冷やしても美味しく飲んでいただけます。食後のチーズには旨みが凝縮されたハードタイプがおすすめです。
パラヘス・デル・バジェ(Parajes del Valle)について
「持続可能なブドウ栽培から、個性のあるワインを作る」パラヘス・デル・バジェは、心を込めて造られた特別なワインを見つける場所です。なぜなら、そのワインが生まれるブドウの木もまた、過去の時代を乗り越え、年月を重ねることによって強くなったユニークなものだからです。私たちは、この土地の生物多様性を大切にすることによってのみ、最高の果実を私たちに返してくれることを知っています。
パラヘス・デル・パジェは、バレンシアの大手ワインメーカー、ガルシア・ペレス・グループ(García Pérez Group)の一員で、2018年に設立されたワイナリーです。
パラヘス・デル・バジェのワイン造りには、環境への敬意という明確なコンセプトが込められています。
土地の生物多様性に配慮することによってのみ、最高のクォリティの果実を収穫できることを理解しており、それこそが彼らがオーガニックワインを造る理由です。
まとめ
今回は、パラヘス・デル・バジェが手がけるオーガニックな赤ワイン、 パラヘス・デル・バジェ・モナストレル (Parajes del Valle Monastrell)をご紹介しました。
農業が盛んで野菜が美味しく、お米を食べる文化もあるムルシアは日本と少し似ていますよね。
パラヘス・デル・バジェ・モナストレル (Parajes del Valle Monastrell)は、野菜、お魚、お肉など、どんなお料理にもマッチします。和食と合わせていただいても楽しめる1本ですので、ぜひお気に入りの組み合わせを見つけてみてください。
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