D.O.リベラ・デル・ドゥエロについて解説します D.O.リベラ・デル・ドゥエロについて解説します

D.O.リベラ・デル・ドゥエロについて解説します

リベラ・デル・ドゥエロは非常に高品質な赤ワインで知られている産地です。今回はスペインワインにおいて非常に重要な産地、D.O.リベラ・デル・ドゥエロについて解説します。

リベラ・デル・ドゥエロ概要

リベラ・デル・ドゥエロ(D.O. Ribera del Duero)はスペイン内陸の州、カスティーリャ・イ・レオン州(Castilla y León)にある、首都マドリッド(Madrid)からは北へ車で2時間ほどの場所にあるワイン産地です。ローマ時代からワイン造りが行われていた証拠に、イベリア半島最大のバッカス(Bacchus/ローマ神話のワインの神)が描かれたローマ時代のモザイクが1972年に発掘されています。スペインの原産地呼称制度、デノミナシオン・デ・オリヘン(Denominación de origen)によって、1982年にD.O.に認定されました。D.O.認定をきっかけに、多くのぶどう農家が改植を行い、家族経営から大規模な協同組合や大型ボデガ(Bodega、ワイナリー)まで、近代的な醸造技術を導入しました。

リベラ・デル・ドゥエロの気候

リベラ・デル・ドゥエロはドゥエロ川(El Duero)に沿って東西120km、南北には5kmほど、ブルゴス県(Provincia de Burgos)、セゴビア県(Provincia de Segovia)、ソリア県(Provincia de Soria)、バリャドリッド県(Provincia de Valladolid)と4つの県にまたがって広がっています。起伏に富んだ帯状の土地には、270以上ものボデガ(Bodega)が存在しています。

リベラ・デル・ドゥエロのぶどう畑は標高約750mから約900mの高地にあり、年間約2,400時間もの日照時間に恵まれています。収穫時期の平均気温は15度ほどで、リベラ・デル・ドゥエロよりさらに北部のリオハ(D.O. Rioja)の18度よりもさらに低くなっています。霜は冬だけでなく、春先に降りることも。また、夏は日中40度までまで上がるほど暑く、夜間にはそこから20度以上気温が下がることもあります。この寒暖差の大きさがぶどうに豊かな酸と熟成、濃縮した糖を与え、奥行きとバランスに優れたワインを造るのです。

気候は大陸性気候に影響を受けた地中海性気候、と表現されます。雨は春と秋に多く、年間の降水量は平均で400〜600mmほどです。ただし、ぶどうが育つ夏季にはほとんど降りません。

リベラ・デル・ドゥエロの地形と土壌

リベラ・デル・ドゥエロはイベリア半島最古の起伏である乾燥高原、メセタ(Meseta)の北部に位置します。広大な台地で形成され、土壌は白亜質の石灰岩と泥炭土の混合土壌で、ドゥエロ川流域では砂質が多く含まれます。

ドゥエロ川流域は長い期間侵食されていたために緩やかに起伏があり、平らな高原となっていて、優れたぶどうを多く産出しています。リベラ・デル・ドゥエロのほか、トロ(D.O. Toro)やルエダ(D.O. Rueda)を通り、ポルトガルに入ればドウロ川(O Douro)と名を変え、ポートワイン(Port Wine)の産地のポルト(Port)を通り、大西洋へ行き着きます。

リベラ・デル・ドゥエロのぶどう

リベラ・デル・ドゥエロで栽培されている主なぶどう品種を紹介します。

テンプラニーリョ(Tempranillo)

リベラ・デル・ドゥエロを代表する品種。リベラ・デル・ドゥエロではシノニムでティント・フィノ(Tinto Fino)、ティント・デル・パイス(Tinto del País)などと呼ばれます。

非常に適応力に優れた黒ぶどうで、濃い色の骨格がしっかりしたワインとなり、ブラックベリーのような強い香りを持ちます。完熟するとタンニンが甘く感じられ、酸味もほどほどにあります。

カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon

フランスボルドー地方(Bordeaux)原産の黒ぶどう品種。適応力が良く、房はコンパクト。ワインになると酸が目立ちピーマンの香りがするものの、熟成するにしたがってブラックベリーのような香りに変わります。タンニンは強めです。

メルロー(Merlot)

フランスボルドー地方原産の黒ぶどう品種。生産性はあまり高くなく、成熟はゆっくりめ。ワインにすると酸味はほどほどで、ブラックベリー系の香りにナッツの風味もほんのり加わります。タンニンもほどほど。

マルベック(Malbec)

フランス南西のカオール(Cahor)地区原産と言われている黒ぶどう品種。生産性は低く、発芽は遅めです。ワインは酸が強く、ブラックベリーやプルーンのような香りとバルサミコのような風味がマッチします。タンニンはほどほど。

ガルナチャ・ティンタ(Garnacha Tinta)

スペインのアラゴン地方(Aragón)が原産と言われている黒ぶどう品種。適応力が非常に強く、コンパクトな房で、熟成はかなりゆっくりとなります。完熟いちごの香りが強いワインになり、タンニンはほどほど。

アルビーリョ(Albillo

リベラ・デル・ドゥエロの土着品種の白ぶどう。アルビーリョ・マジョール(Mayor)とも呼ばれます。適応力は非常に高く、中程度の生産性です。赤ワインに数%ブレンドされる補助的な品種で、リンゴや桃と、その種のような香り、低めの酸が特徴です。赤ワインにブレンドすると、滑らかさや質感に変化が出ます。

リベラ・デル・ドゥエロのワイン

リベラ・デル・ドゥエロでは独自の厳しい規定を設け、ワインの品質を高水準に保ってきました。D.O.リベラ・デル・ドゥエロの呼称を使用するためには、規制審議会の認定プロセスに合格する必要があります。

赤ワイン

リベラ・デル・ドゥエロの赤ワインはテンプラニーリョを75%以上使って造られます。また、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、マルベックとのブレンドの場合はテンプラニーリョの割合は95%以上でなければなりません。

樽熟成の基準別に分けられた赤ワインのそれぞれの特徴を紹介します。

  • ビノ・ホーベン(Vino Joven)

樽熟成をしていない、もしくは12ヶ月未満樽熟成したワインです。ぶどうを収穫し、数ヶ月で届くため、若い(=joven)ワイン(=vino)と呼ばれます。鮮やかで明るい青味のあるルビー色で、藍、または紫色、またはチェリーレッドのような色味があります。凝縮感のある香りで、熟した果実やブラックベリー、ラズベリーのような香りを持ちます。口当たりは良く、フレッシュな酸味が際立ったタンニンを支える役目をしています。

  • クリアンサ(Crianza)

オーク樽で12ヶ月以上熟成されたワインで、ぶどう収穫後2年目の10月1日以降に販売されます。薄く層になった紫のハイライトのあるチェリー色の外観です。果実味がしっかりとあり、バニラやクローブなどのスパイス、ロースト香などが組み合わされた香り。肉感のあるふくよかさと丸みのある口当たりで、バランスの取れたタンニンと滑らかな舌触り、豊潤な風味と長く続く余韻を楽しめます。

  • レセルバ(Reserva)

オーク樽とボトル内で36ヶ月間熟成、うち最低12ヶ月は樽熟成されたワインで、ぶどうの収穫から3年目の10月1日以降に販売されます。ガーネットからルビーレッドまで変化するグラデーションのある色味。革やムスクの強く優雅な香りにバルサミコの香りやミネラル感が混ざっています。また、甘い完熟フルーツの香りもします。たっぷりと肉感がある、バランスの取れた味わいが口いっぱいに広がります。長時間続く余韻がさらに熟成を感じさせます。

  • グラン・レセルバ(Gran Reserva)

オーク樽とボトル内で60ヶ月間熟成、うち最低24ヶ月は樽熟成されたワインで、ぶどうの収穫から5年目の10月1日以降に販売されます。ガーネットからルビーレッドまでの幅のある色調のチェリーレッド。フルーツコンポートの香りを基調に、スパイス、トースト、猛禽類の肉など、熟成の間に複雑な香りを展開します。ストラクチャーとバランスに優れ、長く続く余韻のなかでもそのエレガントさは褪せません。

ロゼワイン

リベラ・デル・ドゥエロのロゼワインは認定されたぶどう品種を50%以上使用する必要があります。ぶどうの皮を剥いた状態で短期間発酵させて造るため、収穫からすぐに市場に出ます。苺ジュースのようなピンクに薄紫のレインボーカラーの要素もあります。ワイルドベリーや完熟果実のようなフルーティな香りで、フルーティで特徴のある酸味が特徴です。

白ワイン

D.O.リベラ・デル・ドゥエロとして販売できるワインは、長年、赤とロゼワインだけでした。リベラ・デル・ドゥエロで造られる白ワインは、カスティーリャ・イ・レオン(Castilla y Leon IGP)として売られていたのです。

しかし、2019年以降、減少しつつある土着品種を守るべく、アルビーリョを75%以上使用した白ワインもリベラ・デル・ドゥエロを名乗ることができるようになりました。アルビーリョ以外は、ピルレス(Pirules)、 マルバイサ(Malvaisa)、ビウラ(Viura)、 ヴェルデホ(Verdejo)、アルバリーニョ(Albariño)、オンダラビ・ズリ(Hondarrabi Zuri)パロミノ(Palomino)シャルドネ(Chardonnay)、リースリング(Riesling)、ソーヴィニヨン・ブラン(Sauvignon Blanc) トレイシャドゥーラ(Treixadura)、ヴィオニエ(Viognier)の使用が認められています。

アルビーリョのワインは淡い麦わらと淡い金属色の微妙な色合いで、香り高く、ほどほどの酸味があります。

まとめ

高級スペインワインの産地、D.O.リベラ・デル・ドゥエロについて解説しました。

大切な人との記念日やお祝い事などに、豊潤な味わいのリベラ・デル・ドゥエロのワインを選んでみてはいかがでしょうか?きっと特別な時間が過ごせることでしょう。

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