ワインラベルはデザイン的にも色々なものがあり、レコードのように「ジャケ買い」したくなるようなものも数多くあります。もちろんデザインで選ぶのも良いのですが、ワインラベルには実はたくさんの情報が詰まっているのです。
この記事では、ワインラベルの見方について解説します。ワインラベルの見方がわかると、ワイン選びが何倍も面白くなりますよ!
EUのワインラベルの表示義務
EUのワイン法に基づきラベルに表示しなければならない項目には以下のものがあります。
義務表示
- 原産国
- 品名(Vin、Vino、Wein、 Vino VDLなど)
- 発泡、非発泡、甘味ワイン
- 地理的表示
- アルコール度数(%)
- 瓶詰め元とその住所
- 輸入ワインの場合、輸入元とその住所
- 容量
- 発泡性ワインの残糖
- 発泡性ワインの生産者・販売者の名称
- アレルゲン表記
- SO₂(亜硫酸)の含有
- 妊婦への注意喚起
任意表示としては以下のものがあります。
- ぶどう品種(単一品種85%以上、2種以上は合計100%)
- ヴィンテージ(収穫年・当該年85%以上)
- 地理的表示のシンボルマーク
- スティルワインの残糖
- 地理的表示GIワインに認められる表現
- 特定の醸造方法に関する事項(樽発酵、樽熟成などの表示はGIワインのみ可能)
- 未成年に対する警告
各国のワインのワインラベル
ここからは各国のワインラベルについて説明していきます。多くの場合もっとも大きな、目立つ文字で記載されているのは産地名、もしくはワイン名です。以下で紹介していくのはフロントラベルに記載されている項目の例です。表示義務として定められていてフロントラベルに記載しきれないものはバックラベルに記載されることになります。
フランス・ボルドーワインのラベル
- ワイン名
フランス・ボルドー(Bordeaux)地方のワインではワイン醸造者であるシャトー(Chateau)の名称がそのままワイン名になっていることが大半です。
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ヴィンテージ
- 瓶詰め元
「Mis en Buteille au Chateau」と記載があれば醸造元のシャトーで瓶詰めされていることを示します。
- 容量
EU諸国の飲料の容量はmlの10倍であるcl(センチリットル)で表示されていることがあります。
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アルコール度数
- 原産国(輸出される場合)
フランス・ブルゴーニュワインのラベル
- ワイン名
ブルゴーニュ(Bourgogne)地方ではAOC(Appellation d'Origine Controlee /原産地呼称)がワインの名称として採用されています。AOCは地方、地区、村、畑の4段階に分けられていて、さらに畑は「グラン・クリュ(Grand Cru /特級畑)」と「プルミエ・クリュ(Premier Cru/一級畑)」にランク分けされます。グラン・クリュであれば畑名のみの記載で済みますが、プルミエ・クリュは村名の記載も義務付けられています。ただし、シャブリ(Chabli)地区であればグラン・クリュとプリミエ・クリュどちらとも「Chabli」の後ろに「Grand Cru」もしくは「Premier Cru」とともに畑名を名乗ることが許されています。
- グラン・クリュ、もしくはプルミエ・クリュかの記載
- 産地名
「Appellation d'Origine Controlee」の d'Origine の部分には産地名が入ります。
- ドメーヌ(Domaine/ワイナリー )名
- ヴィンテージ
ブルゴーニュの場合、ボトルの肩の部分にヴィンテージを示すラベルが別で貼られている場合が大半です。
- 瓶詰め元
「Mis en Buteille au Domaine」と記載があれば醸造元のドメーヌで瓶詰めされていることを示します。
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アルコール度数
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容量
- 原産国
フランス・アルザスワインのラベル
アルザス(Alsace)ワインのフロントラベルに記載されている項目はボルドー・ブルゴーニュとほぼ変わりません。ワイン名に関しては地区や畑名での単独AOCのないアルザスワインはAOCであればその後にぶどうの品種名を表示してワイン名とします。50のグラン・クリュで収穫されたぶどうが使われている場合は「Alsace Grand Cru」に併記してグラン・クリュ名も記載可能です。
イタリアワインのラベル
2010年にイタリアワイン法が改正され、上位からDOP(Vino a Denominazione di Origine Protetta/保護原産地呼称ワイン)、IGP(Vino a Indicazione Geografica Protetta/保護地理表示ワイン)、Vino(ワイン、ここではテーブルワインを指す)に分けられることとなりました。ただし、上級ワインであるDOC(Denominazione di Origine Controllata/統制原産地呼称)とさらに厳しい制約をクリアしたDOCG(Denominazione di Origine Controllata e Garantita/統制保証付原産地呼称)、IGT(Indicazione Geografica Tipica/地域特性表示ワイン) とに関しては現在でも表示が認められています。
DOCGもしくはDOCワインであればDOCG、DOC名がワイン名となります。
瓶詰め業者所在地の記載があれば「Imbottigliato da」の後に表示されます。
イタリアワインの場合は他に、さらに「Rosso(ロッソ、赤)」、「Bianco(ビアンコ、白)」、「Secco(セッコ、辛口)」「Abboccato(アッボッカート、中辛口)」、「Amabile(アマービレ、甘口)」などの記載や、「Riserva(リゼルヴァ、特定の熟成期間を経たワイン)」、「Superiore(スペリオーレ、規定のアルコール度数をクリアしたもの)」、陰干ししたぶどうを使った甘口のデザートワインである「Vin Santo(ヴィン・サント)」や「Recioto(レチョート)」などの記載がされていることがあります。
ドイツワインのラベル
ドイツワインのラベルは日常消費用ワインでテーブルワインを表すTafelwein(ターフェルヴァイン)、特定産地で製造された上質ワインであるQbA(Qualitätswein bestimmter Anbaugebiet、クヴァリテーツヴァイン・ベシュティムター・アンバウゲビート)と肩書き付きワインの意味であるPrädikatswein(プレディカーツヴァイン)の3つのカテゴリーによって異なります。Prädikatsweinは2007年まではQmP(Qualitätswein mit Prädikat、クヴァリテーツヴァイン・ミット・プレディカート)という名称でした。
ワイン名は基本的に市町村名+畑名で表され、畑名はその畑のぶどうを使ったワインが85%以上含まれていることが条件です。ただし、Prädikatsweinのうち「粒を選別して収穫した」という意味のBeerenauslese(BA、ベーレンアウスレーゼ)と「乾いた粒を選別して収穫した」という意味のTrockenbeerenauslese(TBA、トロッケンベーレンアウスレーゼ)に限っては51%以上であれば良いとされています。
他の記載はこれまでの例で述べてきた項目とほぼ同じものになりますが、以下はドイツワイン独自の項目・表記になります。
- ヴィンテージ
その年のワインが85%含まれていればヴィンテージとして記載が可能です。
- ぶどう品種
その品種が85%以上含まれていればその品種名が表記可能です。2つの品種のブレンドであれば連名も可能で、その場合は多く含まれている法が先に表示されます。
- 肩書き
PrädikatsweinのワインであればKabinett(カビネット/酒倉)」から始まる6つの肩書きがあり、ラベルに表記されます。
- 等級、生産地域
Tafelwein 、QbA、 Prädikatsweinのいずれかの等級であるかが表示され、QbAとPrädikatsweinにはさらに生産地域が明記されます。
- 瓶詰め元
生産者が瓶詰めしている場合は「Erzeugerabfullung(製造者による瓶詰め)」と記載されています。業者の場合は「Gusabfullung」の後に業者名が記載されます。
- 公的検査合格番号
ドイツワインではQbA以上の等級には公的検査合格番号がラベルに明示されます。
スペインワインのラベル
スペインワインは全てクオリティワイン(保護原産地呼称、DOP)もしくはテーブルワイン(保護地理的表示、IGP)に分類されます。DOPのうちDO(Denominación de Origen、デノミナシオン・デ・オリヘン/原産地呼称ワイン)もしくはDOCa (Denominación de Origen Calificada、デノミナシオン・デ・オリヘン・カリフィカーダ/特選原産地呼称ワイン)であれば産地表示が義務付けられていますがラベルにブランド名や固有の畑名、またはボデガス(Bodegas)名を表示します。
ブランド名の他には原産地呼称名がDOであれば「Denominación de Origen」、DOCであれば「Denominación de Origen Calificada」と表記されます。DOCに属するワインは現在プリオラート(Priorat)とリオハ(Rioja) のみで、カタルーニャ州(Cataluña)産のプリオラートのラベルにはカタルーニャ語でDOQと表記されている場合があります。
その他容量やアルコール度数などの記載があるのはこれまで述べてきた例と同じですが、以下はスペインワイン(DO以上)独自の項目・表記になります。
- 熟成期間の分
熟成期間を必要としない「Sin CrianzaまたはVino Joben(シン・クリアンサ、ビノ・ホーベン)」から赤ワインなら最低2年、白・ロゼワインなら最低1年半の「Crianza(クリアンサ)」、赤なら最低3年、白・ロゼなら最低2年、カヴァなら15ヶ月以上の「Reserva(レセルバ)」、赤なら最低5年、白・ロゼなら最低4年、カヴァなら30ヶ月以上の「Gran Reserva(グラン・レセルバ) 」の4段階の熟成期間に分かれます。
- 瓶詰め元
「Embotellado por」の記載があればその後は瓶詰めを行なった業者名を表しています。
- 産地証明スタンプ
スペインワインでは産地証明スタンプが記されていることがあります。
アメリカ・カリフォルニアワインのラベル
アメリカではEUのワイン法による原産地統制呼称制度は設けられていません。カリフォルニアワインはヴァラエタルワインと(varetal wine)ジェネリックワイン(generic wine)の2種類に大きく分類されます。ヴァラエタルワインでは75%以上使用されたぶどうの品種名とその産地が記載されます。複数のぶどうをブレンドして造るジェネリックワインは高価なものからかなり安価なワインまで幅広く存在します。以下はヴァラエタルワインの例となります。
- 生産地
州名、カウンティ(county /県または郡)名、AVA(American Approved Viticultural Area /アメリカ政府承認ぶどう栽培地域)名などが記載可能ですが、州名であれば100%(他の州は75%以上)、カウンティ名は75%以上、AVAは85%、表記した地域で作られたぶどうを使用していなければなりません。
- 品種
- 収穫年
- ブランド名もしくは畑名
- 瓶詰め元
ワインを他所から購入して瓶詰めしていれば「bottled by」、瓶詰め元がブレンドして瓶詰めしていれば「Cellared and bottled by」、瓶詰め元が醸造したワインが10%以上入っていれば「Made and bottled by」、瓶詰め元が醸造したワインが75%以上入っていれば「Produced and bottled by」、ぶどう栽培から栓をするまでワイナリーが全てを手掛けたものは「Grown,produced and bottled by」と記載されています。
- アルコール度数
アルコール度数の代わりに「Table wine」または「Light wine」と表記されることがあります。
ワインラベルはなぜエチケットと呼ばれるのか
ワインラベルは「エチケット」と呼ばれることがあります。これはフランス語でラベルが「étiquette」であることから来る呼び方です。この言葉の語源には一説では私たちが「エチケット」という言葉に対して抱くイメージそのもののエピソードがあるとされています。
せっかく手入れした庭に無作法に入って庭を荒らした宮廷人に対し、怒った庭師が「庭を荒らさぬよう」と、立て札を立てました。そしてその後、礼儀作法を記した札や宮廷で守るべき礼儀作法をエチケット、と呼ぶようになったのだ、というのです。
また、別の説ではワインの入った荷物を、輸送する際に荷札(エチケット)を見て中身を確認していたため、荷詰めしていた者がきちんと仕事をしているのかどうか判断されたため、エチケット=礼儀作法を意味するようになったのだ、とも言われています。
どちらの説にしても、エチケットという言葉にはどこか背筋を伸ばさなければならないような雰囲気を感じます。ちなみに、スペイン語でワインラベルは「etiqueta」といいます。
まとめ
以上、ワインラベルの見方について解説しました。
複雑なように見えるワインラベルですがほんの少しポイントを抑えるだけでそのワインについてかなりの情報が把握できるようになります。次のワイン選びをもっと楽しいものにするために、ぜひワインラベルの見方を知っていただきたいと思います。