スペインの国民的スポーツと言えば、やはりサッカーで間違いないでしょう。日本でもスペイン=サッカーというイメージを持つ方は多いはずです。
スペインのサッカー人気は1960年代までは著しいものがありました。1960年代以降に経済発展を迎えると、テニス、自転車ロードレース、ゴルフ、バイクのMotoGP(ロードレース選手権)などのスポーツでも世界的成功を得るプレイヤーが現れました。
この記事ではサッカーをはじめとした、スペインで人気のスポーツについて紹介していきます。
サッカー
スペイン国内のサッカーリーグ「ラ・リーガ(La Liga )」、の一部リーグ”プリメーラ・ディビシオン(Primera División)”はレアル・マドリードCF(Real Madrid Club de Fútbol)とFCバルセロナ(Fútbol Club Barcelona)など、世界有数の強豪チームがあり、ヨーロッパの五大プロサッカーリーグの1つです。
プリメーラ・ディビシオンは1929年の創設以来62のチームが参加し、9つのチームがチャンピオンの座を得ています。なかでもレアル・マドリードCFは34回、FCバルセロナは26回チャンピオンになっています。さらに、レアル・マドリードはUEFAチャンピオンズリーグ(欧州サッカー連盟主催の大陸選手権大会)の最多優勝回数を誇っています。
プリメーラ・ディビシオンは日本ではリーガ・エスパニョーラ(Liga Española)の名称で知られてきましたが、2016年にラ・リーガ・サンタンデール(LaLiga Santander)に名称変更され、ラ・リーガ(LaLiga)と呼ばれるようになっています。
ラ・ロハ(La Roja、赤色)の愛称で知られるスペイン代表サッカーチームはFIFAワールドカップで1回、UEFA欧州選手権3度の優勝を勝ち取っています。しかし、スペイン国内では地元クラブなど、ラ ・リーガのクラブへの忠誠心が強いため、国民の代表チームへの関心はそれほど高くないと言われています。
世界的にも伝説といわれるサッカー選手が数多くスペインで誕生してきました。フランシスコ・へント(Francisco Gento López)、セルヒオ・ラモス(Sergio Ramos García)、ラウル・ゴンザレス(Raúl González Blanco)、ダビド・ビジャ(David Villa Sánchez)、アンドレス・イニエスタ(Andrés Iniesta Luján)などなど、ここではとても挙げきれません。ちなみに、イニエスタは故郷のラ・マンチャ地方(La Mancha)で自社ボデガ「ボデガ・イニエスタ(Bodega Iniesta)」を立ち上げ、2010年から自らの名を冠したワインをリリースしています。
2014年の調査ではスペインの人口約4677万人のうち、プロサッカー選手はその2%を占めるという高い割合であることがわかりました。アマチュアの選手は含まれていない数字であることを考えると、スペインのサッカー選手の層の厚さが思い知らされます。
その選手層の厚さを支えている1つの要素に、選手を育成する指導者は基本的に無給であることが挙げられます。サッカーは子供の権利だから、子供たちからお金を取るわけにはいかない、という理屈なのです。指導者はサッカーで生活を成りたたせることはできないが、その代わり優れた才能を見逃さない、という仕組みが確立されている、これがスペインがサッカー大国たる所以なのでしょう。
テニス
スペインでのテニスの人気は安定したものがあります。
その人気はカルロス・モヤ(Carlos Moyá)や、アレックス・コルチャ(Alex Corretja)、アランチャ・サンチェス・ビカリオ( Arantxa Sánchez Vicario)ら数々のスペイン出身のスター選手たちの功績によるものですが、今でも現役のラファエル・ナダル(Rafael Nadal)は最大の功労者と言えるでしょう。
マヨルカ島(Mallorca)出身のラファエル・ナダルは20勝のグランドスラム(全豪オープン・全仏オープン・ウィンブルドン選手権・全米オープンでの優勝)タイトルを獲得しています。これはスイス出身のロジャー・フェデラー(Roger Federe)とセルビア出身のノバク・ジョコヴィッチ(Novak Đoković,)に並ぶ1位タイ記録となっています。
バスケットボール
スペインのバスケットボールチームはここ10年で目覚ましい結果を残しています。2006年の世界選手権優勝以降、ワールドカップやユーロ・バスケットなどの大会で男子チームが優勝をおさめ、ロンドンオリンピックでは銀メダルを獲得しています。女子チームも2013年に欧州選手権で優勝するという大快挙を果たしました。
スペインのリーガACB(Liga ACB)はヨーロッパのトップチームの1つです。レアル・マドリード・バロンセスト(Real Madrid Baloncesto)、FCバルセロナ(FC Barcelona Bàsquet)、ホベントゥート・バダローナ(Club Joventut de Badalona, S.A.D.)はユーロリーグやユーロカップなどで優勝経験があります。
パウ・ガソル(Pau Gasol Sáe)とマルク・ガソル(Marc Gasol i Sáez)の兄弟プレーヤー、ホセ・カルデロン(Jose Calderon)、リッキー・ルビオ(Ricky Rubio)、セルヒオ・ロドリゲス(Sergio Rodriguez) など、NBAで優秀な成績を残すスペイン人選手も数多く、スペインはアメリカに次ぐバスケットボール強豪国として世界的に認識されています。
フットサル
フットサルクラブチームの欧州ナンバーワンを決めるUEFAフットサルカップで、1989〜1990年の第1回シーズンにマドリードのインテルビュー・ブーメラン (Interviú Boomerang)が優勝した頃からスペインは強豪国として君臨しています。
スペイン代表チームは世界トップに数えられるチームの1つで、ブラジルに次いで2番目にランクインする強さのチームと言われています。
F1
スペインのモータースポーツには長い歴史があります。スペインで最初のモータースポーツのレースは1908年、バルセロナ近郊のリゾート地、シッチェス(Sitges)周辺の道路で行われました。1923年にシッチェスに最初のサーキットが誕生、スペイングランプリ(Gran Premio de España)が開催されました。
スペイングランプリは1913年、マドリード近郊のグアダラーマ山脈(Sierra de Guadarrama)で行われたツーリングカーのロードレースに端を発しています。その後はバスク地方(Euskal Herria)のラサルテ・サーキット( Circuito Lasarte)で行われるようになりましたが1936年に勃発したスペイン内戦によって一時中断。1951年からバルセロナ市街地のペトラルベス公道コース(Circuit de Pedralbes)で再開されるもののル・マン24時間レース(24 Heures du Mans)の大事故の影響で1955年のグランプリは中止へ。
1967年にノンチャンピオンシップとして再開され、1968年よりF1選手権に復帰します。1975年までマドリッド近郊のハラマ・サーキット(Circuito Permanente del Jarama)とバルセロナの公園内にあるモンジュイック・サーキット(Circuit de Montjuïc)で交互に開催されました。しかしモンジュイック・サーキットは安全面に問題があり、1975年には観客の死傷事故が起こります。その後は1981年までハラマだけで行われるように。その後ヘレスでの開催などを経て、1990年代以降、例年5月にバルセロナ近郊のカタロニアサーキット(Circuit de Barcelona-Catalunya)で開催されています。
スペインは2008年から2012年まではバレンシア市街地コース(Circuito Urbano de Valencia)でもヨーロッパグランプリ(European Grand Prix)が行われ、この時期は唯一2つのF1グランプリが行われる国でした。
スペインでのF1人気は2005年と2006年にアストゥリアス 州(Principado de Asturias)オビエド出身(Oviedo)のフェルナンド・アロンソ(Fernando Alonso Díaz)が2回チャンピオンとなったことをきっかけに高まりました。
オートバイレース
2017年に史上最年少オートバイレーサーとなったカタルーニャ州(Cataluña)サルベーラ(Cervera)出身マルク・マルケス( Marc Márquez Alentà)はこれまでにMotoGPをはじめ、 7つの世界タイトルを取っています。
MotoGPは世界80カ国加盟の国際モーターサイクリズム連盟が統括の歴史ある二輪ロードレース大会。スペインや世界各国を転戦しながら全18戦でチャンピオンを決定するMotoGPはスペインで大人気のスポーツです。スペインではバルセロナ近郊やシェリー酒の産地、ヘレス・デ・ラ ・フロンテーラ(Jerez de la Frontera)など、4カ所でグランプリが行われます。
スペインにはマルク・マルケスの他にもダニ・ペドロサ(Daniel "Dani" Pedrosa Ramal
)や通算5回のワールドチャンピオンを獲得しているホルヘ・ロレンソ(Jorge Lorenzo)らの有名オートバイレーサーがいます。
自転車ロードレース競技
スペインでは自転車ロードレース競技は伝統的に人気のあるスポーツで、毎年8月末〜9月中旬まで開催されるブエルタ・ア・エスパーニャ( La Vuelta Ciclista a España)はフランスのツール・ド・フランス(Tour de France)やイタリアのジロ・デ・イタリア(Giro d'Italia)とともにグランツール(Grands Tours)と呼ばれています。
スペイン人のミゲル・インドゥライン(Miguel Ángel Induráin Larraya)やアルベルト・コンタドール(Alberto Contador Velasco)はグランツール全てで優勝した世界でも数少ない選手です。パンプローナ(Pamplona)出身で民族的にはバスク人であるミゲル・インドゥラインは1991年から1995年までのツール・ド・フランスで5回連続個人総合優勝を果たす偉業も残しています。
2006年から2009年にかけてのツール・ド・フランスではオスカル・ペレイロ(Óscar Pereiro Sio)、アルベルト・コンタドール、カルロス・サストレ(Carlos Sastre Candil)の3人で優勝を勝ち取り、4年連続スペイン人選手が総合優勝しました。
2012年まででスペイン人選手はツール・ド・フランスで13回優勝、フランス、ベルギーに次ぐ世界第3位の優勝回数を誇っています。
スペイン国内でもバスク地方は特に自転車ロードレースの人気が高く、年間シリーズ戦であるUCIワールドツアー(UCI WorldTour)に含まれる主要レースとしてバスク一周(Itzulia Basque Country)とクラシカ・サンセバスティアン(Clasica Ciclista San Sebastian)が開催されています。バスク地方以外はカタルーニャ州でも自転車ロードレースは非常に人気があります。
パデル
スペイン発祥のパデル(Padel)はテニスとスカッシュを組み合わせたようなスポーツです。スペインではサッカーに次ぐ競技人口を誇り、その数は400万人を突破、テニスの競技人口を超えました。世界でもヨーロッパを中心に北中米、南米、オセアニアなどで親しまれ、23カ国に連盟があり、競技人口は1200万人と言われています。日本にも連盟があり、パデル専用施設は11カ所ほどオープンしているようです。
1970年代中頃に発明されたパデルはガラスに囲まれたコートの中で戦う2対2のダブルスのみの競技です。テニスに比べ小さなラケットを使い、スカッシュと同じく壁を使って打ち合います。瞬発力と集中力を必要とし、観客を魅了するスポーツとしても人気です。ラファエル・ナダルやサッカー選手のリオネル・メッシ(Lionel Andrés Messi Cuccittini)もパデルの愛好者として知られています。
まとめ
スペインのスポーツについて紹介しました。
サッカーのみならず、さまざまなスポーツを愛し、熱中してやまない国、スペインの魅力の違った側面が垣間見えたのではないでしょうか。パデルや自転車ロードレースなどは日本ではあまり馴染みはないかもしれませんが、スペインワインを愛好するのをきっかけに、新しいスポーツの世界を覗いてみるのも良いかもしれませんね。