ミシュランの星付きレストランには、お食事だけでなく飲み物にもこだわりを持ったお店が多いですが、今回は自らボデガを運営しているお店をピックアップしてご紹介したいと思います。
ワインを1番の目的に、レストランを訪ねてみるのも楽しいかもしれません。
どれを飲もうか迷ってしまう!?ワインメニュー充実の邸宅ホテル内レストラン
(引用元:Villa Retiro)
ヴィラ レティーロ(Villa Retiro,レティーロ邸)は、タラゴナ(Tarragona)から車で南西に約1時間向かった、カタルーニャ州(Catalunya)のセルタ(Xerta)という町にある、ミシュラン1つ星レストランです。
シェフのフラン・ロペス氏(Fran López)は、16歳でバルセロナ(Barcelona)のホフマン料理学校(Escuela de Hostelería Hofmann)に入学。
その後、パリにあるホテル・プラザ・アテネ(Hôtel Plaza Athénée)内のアラン・デュカス(Alain Ducasse,2021年に閉店)で3年間働きました。
スペインに帰国したフラン・ロペス氏は、彼のファミリーが2001年に買い取った、築100年以上の邸宅をホテルに改造し、2006年、兄ホアキン氏(Joaquim)と共に5つ星ホテル・ヴィラ・レティーロ(Hotel Villa Retiro)をオープンしました。
ホテル内にあるヴィラ レティーロのシェフとして、2009年、フラン・ロペス氏は25歳という史上4番目の若さでミシュランの1つ星を獲得し、星を維持し続けています。
また、2016年にオープンしたバルセロナのセルタ(Xerta)も、オープンから半年という早さでミシュランの1つ星獲得を獲得しています。
2013年からは、D.O.テラ・アルタ(Terra Alta)内にある「ワインの大聖堂」(Catedral del Vi,カテドラル・デル・ヴィ)という呼び名のセジェール・コーペラティボ・ピネル・デ・ブライ(Celler Cooperativo de Pinell de Brai, ピネル・デ・ブライ村協同組合ワイナリー)の共同運営も行うフラン・ロペス氏。
パゴス・デ・イベラ(Pagos de Híbera)というワイナリーも、醸造学者のジョゼップ・ヴァリエンテ氏(Josep Valiente)と醸造家のジョゼップ・ヴィセンス氏(Josep Vicens)の助けを借りながら、兄弟でプロデュースしています。
「ワインの大聖堂」の中にあるフラン・ロペス氏がプロデュースするレストランでは、パゴス・デ・イベラなど、D.O.テラ・アルタのワイナリーのワインと料理を組み合わせて楽しむことができますよ。
「ワインの大聖堂」の建物は、ガウディ(Antoni Gaudí)の弟子であるセサール・マルティネル(Cèsar Martinell)が手掛けた作品なので、それを見るためだけにでも立ち寄る価値はあります。
ヴィラ レティーロからは車で約15分の距離にあるので、宿泊ついでに立ち寄ってみるのも良いですね。
さて、ヴィラ レティーロに話を戻しましょう。
ヴィラ レティーロでは、エブロ川デルタ地帯(Delta de l'Ebre)をインスピレーションの源泉とする
ソトボスケ・メニュー(Menú Sotabosc,メヌー・ソタボス, ソトボスケはガリシア語で「下草」という意味)
テイスティング・メニュー(Menú Degustació,メニュー・デグスタシオ)
トリビュート・メニュー(Menú Homenatge,メニュー・オマナージュ)
という3種類のコースを提供しています。
コース料理には、
ワインのペアリング(Maridatge de de vins,マリダッツェ・デ・デ・ヴィンズ)
というメニューをオプションで合わせることもできますが、自分で選んだ好みのワインを注文することもできます。
ヴィラ レティーロのWebページには、何とPDFファイルにして191ページという、膨大なワインリストが掲載されているんです。
そのほとんどがスペインワインですが、中には日本製の日本酒やウイスキーといったワイン以外のアルコール飲料も載っています。
ワインとしては、パゴス・デ・イベラの製品はもちろん、
D.O.カバ(Cava)のアグスティ・トレジョ・マタ クリプタ グラン・レセルバ(Agustí Torelló Mata Kripta Gran Reserva)
D.O.コステルス・デル・セグレ(Costers del Segre):カステル・デル・レメイ(Castell del Remei )のオーダ ブラン(Oda Blanc)や
ゴティム ブル(Gotim Bru)
D.O.Ca. プリオラート(Priorat):セジェール・バィ・リャック(Celler Vall Llach )のアンブルッシュ・ダ・バィ・リャック(Embruix de Vall Llach)
D.O.リベラ・デル・ドゥエロ(Ribera del Duero):ボデガス・エルマノス・ペレス・パスクアス のセパ・ガビラン クリアンサ(Cepa Gavilan Crianza)
など、おすすめしたいワインがいっぱいなので、どれを飲もうか悩んでしまうかもしれませんね。
なお、ヴィラ レティーロでは、小さなお子様がいらっしゃるご夫婦も、落ち着いて食事を楽しめるベビーシッターのサービスも行っています。ですので、結婚記念日のお祝いなどに訪れるのも良いのではないでしょうか。
食事の前後には、ホテル内のスパやマッサージで、リラックスすることもできますよ。
ボデガの敷地内にある1つ星レストランでスペインワインとグルメを
(引用元:Ambivium)
次にご紹介するアンビビウム(Ambivium)は、D.O.リベラ・デル・ドゥエロ(Ribera del Duero)のボデガ・パゴ・デ・カラオベハス(Pago de Carraovejas)の敷地内にあるレストランです。
パゴ・デ・カラオベハスは、1971年に開催された世界ソムリエコンテストのスペイン代表やセゴビア(Segovia)のレストラン「ホセマリア」(José María)の経営者としても知られるホセ・マリア・ルイス氏(José María Ruiz)が1987年にプロジェクトを開始し、1991年にファーストヴィンテージを生産したボデガです。
ヒュー・ジョンソン氏(Hugh Johnson)著の「Hugh Johnson Pocket Wine 2021」では、D.O.リベラ・デル・ドゥエロの項目で、アロンソ・デル・イェロ(Alonso Del Yerro)とパゴ・デ・ロス・カペジャーネス(Pago de los Capellanes)と共に、試して欲しいボデガとして挙げられています。
2代目を継いだペドロ・ルイス氏(Pedro Ruiz)がワインツーリズムを積極的に行うようになり、2017年にレストランをオープンし、2020年に初のミシュラン1つ星を獲得しました。
ワインと美食との融合がコンセプトのアンビビウム。
店内には、パゴ・デ・カラオベハス製のスペインワインをはじめ、5大陸の約4,000種類のワインがストックされています。
目の前にブドウ畑が広がる眺めの良い店内では、
「環境」(Entornos,エントルノス)と「風景」(Paisaje,パイサヘ)
という2種類のテイスティング・メニューを、アルマ・カラオベハス(Alma Carraovejas)のワインまたはスペイン国内&海外のワインを組み合わせた、
ワインのハーモニー(Armonías de vinos)
と合わせていただくことができます。
アルマ・カラオベハスは、パゴ・デ・カラオベハスやアンビビウムなどを含む、ルイス家のプロジェクトの総称です。
ワインのハーモニーはオプションになっていますが、予想外のワインやあまり出会うことができないヴィンテージが登場することもあるので、試してみてはいかがでしょうか。
野菜やハーブなどは、レストランから数メートルの距離にあるオーガニック・ガーデンで収穫したものを使用し、24時間前までに連絡すれば、アレルギー対応などもしてもらえるそうです。
コース終了まで「環境」は約2時間、「風景」は約3時間半かかるので、お食事をする際は時間に余裕をもって訪れてみてください。
修道院ホテルに宿泊してミシュラン1つ星レストランのグルメとワインを楽しむ
(引用元:Refectorio)
レフェクトリオ(Refectorio)は、アバディア・レトゥエルタ(Abadía Retuerta, レトゥエルタ修道院)という、12世紀に建てられたロマネスク様式の修道院を改装したホテル内のレストランです。
D.O.リベラ・デル・ドゥエロの近くのサルドン・デ・ドゥエロ(Sardón de Duero)にあるアバディア・レトゥエルタは、周りをブドウ園で囲まれ、敷地内には、2軒のレストランと1軒のワインバー、夏限定のガーデンレストラン、ボデガ、スパなどがあります。
レフェクトリオは、2014年からミシュランの星を獲得していますが、カスティーリャ・イ・レオン州(Castilla y León)の小規模生産者35ヶ所以上と契約し、敷地内の農場で収穫した松の実やハチミツなども使用しているため、2020年からは、環境に配慮したお店に贈られるグリーンスター(Estrella verde MICHELIN)もダブルで受賞しています。
アバディア・レトゥエルタのエグゼクティブシェフであるマルク・セガラ氏(Marc Segarra)は、ミシュラン2つ星のムガリッツ(Mugaritz)など、複数の有名レストランで勤務経験がある他、植物学者と共に「ガストロ・ボタニカ」(Gastro botanica)という概念を生み出したロドリゴ・デ・ラ・カジェ(Rodrigo de la Calle)のレストランでも、3年間働いた経験があります。
レフェクトリオのメニューは、
「テロワール」(Terruño,テルーニョ)
「テロワール ー 拡張バージョン」(Terruño- Versión Extendida,テルーニョ - ベルシオン・エクステンデイダ)
「遺産」(Legado,レガード)
という、3種類のテイスティング・メニューのみ。
デザートを担当するパティシェは、2021年のマドリッドフュージョン啓示ペストリー賞(Premio Pastelero Revelación Madrid Fusión)のファイナリストに選ばれたジェマ・ロペス(Gemma López)です。
テイスティング・メニューは、
ワインのハーモニー(Armonías de vinos)
という、ソムリエが料理ごとにセレクトしたワインを合わせていただきます。
アバディア・レトゥエルタでは、修道院時代からワイン造りは行われていたそうです。
1989年、アバディア・レトゥエルタの筆頭株主であるスイスの企業ノバルティス(Novartis)が、荒廃していたブドウ園を、近隣のワイン生産者と共に立て直しました。
製薬会社がブドウ園に関わるのは珍しいと思ったのですが、日本の大塚製薬(現在は大塚食品)もカリフォルニアのリッジ ヴィンヤーズ(Ridge Vineyards)を所有しているそうです。
ボデガの設計をしたのは、ノバルティスのトップが個人的な友人に紹介された、ボルドー(Bordeaux)の有名醸造家パスカル・デルベック氏(Pascal Delbeck)です。
その後、ボルドー大学で醸造学を学んだアンヘル・アノシバル氏(Ángel Anocíbar)がワインメーカーとして採用され、1996年にファーストヴィンテージが生産されました。
アバディア・レトゥエルタは、スペインのワインとしては、世界のワインベスト100に3年連続で選ばれた初のボデガとなりました。
レフェクトリオのソムリエを務めるのは、伝説のレストラン・エル・ブジ(El Bulli)やエチェバリ(Etxebarri)で働いていたアグスティ・ペリス氏(Agustí Peris)です。
セッティングされたナプキンの上に載せられた植物は、ペリス氏が実際に探してきたものだそうなので、記念に持ち帰るのも良いかもしれません。
最後に
以上、3ヶ所のミシュラン1つ星レストランをご紹介してきました。
気になるレストランは、見つかりましたでしょうか。
しばらくは、海外にも気軽に行けない日々が続きそうなので、今回ご紹介したワインの中から気になるものを購入して、ご自宅でちょっとスペイン気分を味わってみるのも良いかもしれません。