収穫の秋。スペインでも、ワイン用ぶどうは秋に収穫を迎え、各地で収穫祭やワイン祭りが開かれ、大賑わいとなります。そんな秋のシーズンも佳境を迎えた10月26日はぶどう品種のカリニェーナの日です。今回はスペイン原産のぶどう品種カリニェーナについて、その歴史や世界での活躍、シノニムなどを解説するとともに、カリニェーナを使用したスペインワイン3選もご紹介します。ぜひ、この記事を読んで、10月26日にはカリニェーナのワインで乾杯!してみてはいかがでしょうか?
ぶどう品種カリニェーナとは?
カリニェーナ(Cariñena)はスペイン北東部アラゴン地方(Aragón)原産の黒ぶどう品種です。特徴として、色が濃く、酸度が非常に高くタンニンが豊富であることが挙げられます。また、収穫量が非常に多い品種としても知られ、食用としても普及しています。
若いうちに飲むと飲みにくいワインになりますが、いっぽうで長期熟成に適していて、なめし革、スパイス 、鉄やインクなどの複雑な香りとフレーバーを持つワインに。香りはそれほど強くなく、酸味や渋味の強い刺激的な風味のワインになります。また、同じくアラゴン地方原産のガルナチャ(Garnacha)とのブレンドでバランスの取れた味わいになるとされています。いっぽう、リオハ(Rioja)では繊細なテンプラニーリョ(Tempranillo)にブレンドし、力強さを足す品種としても使われています。
ちなみに、カリニェーナは同名の原産地呼称、デノミナシオン・デ・オリヘン(D.O.)がアラゴン州存在します。そのため、D.O.カリニェーナ以外では品種名をラベルに記載することは許されていません。また、カリニェーナには白の皮を持つカリニャン・ブラン(Carignan blanc)やバラ色の皮を持つカリニャン・グリ(Carignan gris)など、突然変異種も存在します。
カリニェーナのシノニム
カリニェーナのシノニム(synonym)には以下のようなものがあります。
l カリニャン(Carignan)・・・フランス
l カリニャーノ(Carignano)・・・イタリア
l マズエロ/マズエラ(Mazuelo / Mazuela )・・・カスティーヤ・イ・レオン地方(Castilla y Leon):このシノニムはカスティーヤ・イ・レオン地方(Castilla y Leon)のブルゴス県(Provincia de Burgos)にあるマズエロ・デ・ムーニョ(Mazuelo de Muño)という小さな地区名が由来とされています。
l サムソ(Samsó)・・・カタルーニャ地方(Cataluña)
l カレニェナ(Carinyena)・・・プリオラート(D.O.Q. Priorat )
カリニェーナの歴史や世界での活躍
カリニェーナの発祥には諸説あり、紀元前9世紀に地中海東岸のフェニキア人が現在のイタリア、サルディーニャ島(Sardegna)に種を運び、その後ローマ帝国の進出とともに地中海一帯へと広がっていったとされるのが最も古い説です。そして、その後北アフリカにもカリニェーナは広まり、北アフリカのアルジェリア(Algeria)のワインの歴史の始まりのきっかけを作った、ともされています。しかし、現在もっとも有力な説はアラゴン地方のカリニェーナを原産とするもので、実際にサルディーニャ島で栽培されているカリニャーノ(Carignano)とアラゴン地方のカリニェーナのDNAを検査すると同一のものであることがわかっています。
カリニェーナは12世紀にフランス南部に伝わり、その後イタリアやアメリカにも伝えられました。また、クロアチアや地中海のマルタ、さらにはトルコやイスラエルといった地区でもこのカリニェーナは栽培されているようです。アメリカではカリフォルニアを中心に栽培され、北アメリカ、カナダやメキシコでもカリニェーナは植えられていて、南アメリカではアルゼンチンやチリでも栽培されています。
フランスでは植民地アルジェリアからカリニェーナ種のワインが輸出されている時期が長く続きました。しかし、1962年にアルジェリアがフランスから独立し、カリニェーナ種のワインがフランス市場から減ったため、フランス国内で栽培し始めるようになった、という経緯があります。
1988年には、フランスでカリニェーナ種がぶどうの生産量第1位となり、そのピークを迎えます。しかし、その後2000年以降には、EUがメルロー(Merlot)やそのほかのフランス原産の品種の栽培量とのバランスを取るため、カリニェーナ種の生産を控えるようになります。そして、他のぶどう品種の栽培を農家に奨励したため、フランスではカリニェーナの生産量は減り、メルローが第1位の座を取り戻している、ということです。ただ、フランス南部の地中海岸を中心にいまだカリニェーナの栽培は盛んで、シャルドネ(Chardonnay)の5倍もの収穫量があるとされています。
いっぽう、原産地であるスペイン、アラゴン地方やカタルーニャ地方では長く栽培されてきましたが、カリニェーナのウドンコ病に対する抵抗力の弱さが農家から疎まれ、栽培が一時期減っていました。しかし、近年はプリオラートがカリニェーナ種のワインで成功を収めたため、作り手が増えてきています。
カリニェーナを使用したスペインワイン3選
カリニェーナを使用したおすすめのスペインワインを3種、ご紹介します。
ポレラ・ビ・ダ・ビラ バィ・リャック(Porrera Vi de Vila Vall Llach)
カタルーニャ州D.O.Ca.プリオラートのワイナリー、セジェール・バィ・リャックによるカリニェーナ80%、ガルナチャ20%使用のフルボディワインです。色合いはきらめく深いチェリーレッド。完熟のアンズなどのフルーツやミント、スパイス、ミネラルも感じられます。しっかりとした成熟感のある、厚みがある味わい。また、芳醇であるとともにしっかりとした酸があるためフレッシュさも感じられ、とても個性的です。さらに、非常に長く続く余韻も楽しめます。
セジェール・バィ・リャック(Celler Vall Llach)は醸造の全工程で伝統と近代技術を調和させています。栽培から瓶詰めまでにおいて厳格さと品質の高さを最重視し、非常にエレガントで繊細な味わいを作り出す、プリオラートでも最高峰と自他ともに認める名高い生産者として知られています。「ポレラ・ ビ・デ・ビラ」とは、畑のある村名であり、DOCaプリオラートがあらたに規定した村単位でのAOC(原産地呼称)です。その村のなかという限られた土地、気象、土壌の特徴を有したぶどうを使い、醸造したワインのみに村名を冠することができるようになったのです。
プリオラート・イドゥス バィ・リャック(Priorat Idus Vall Llach)
こちらも同じく、セジェール・バィ・リャックによるカリニェーナ68%、ガルナチャ32%のフルボディワインです。色調は濃いルビーレッド。プラムやカシスなど黒系ベリーのアロマが楽しめます。また、スミレの花の香りやスパイシーなニュアンスもほのかに感じられるでしょう。口当たりはソフトで、酸は伸びがあり、さらに渋さも調和したエレガントな仕上がりです。
アンブルッシュ・ダ・バィ・リャック(Embruix de Vall Llach)
こちらもセジェール・バィ・リャックによるガルナチャ29%、カリニェーナ28%、メルロー22%、シラー(Syrah)14%、カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)68%のフルボディワインです。色調は濃いルビーレッド。プラムやダークチェリーなど、黒系ベリーの凝縮感のあるアロマが楽しめます。また、特徴としてほのかなスパイシーさの効いた、しっかりとしたストラクチャーが挙げられます。さらに、アッサンブラージュによる複雑さも楽しめる1本です。
まとめ
スペイン原産のぶどう品種カリニェーナについて、その歴史や世界での活躍、シノニムなどを解説するとともに、カリニェーナを使用したスペインワイン3選もご紹介しました。きっと、カリニェーナの魅力がお分かりいただけたのではないでしょうか?ぜひ、10月26日はカリニェーナ のワインで楽しみましょう!