スペインのフミーリャ地方で有名なものといえば、やはりワインでしょう。
しかし、フミーリャのワインが注目されワイン産地として有名になったのは、ここ20〜30年の出来事だということはご存知でしょうか?
バリューワインが多いと有名なスペインの中でも、フミーリャのワインは大変高いコストパフォーマンスを誇っています。一方で、そのワインの高品質さが世界的にも高い評価を受けているフミーリャのワイン。
本記事では、そんなフミーリャが造りだすワインの特徴やフミーリャおすすめの赤ワイン、ボデガスシリーズ第4弾「ボデガス・ルソン セレクション・モナストレル」の魅力をご紹介します。
フミーリャはどんなところ?
フミーリャ(スペイン語: Jumilla)は、日本ではフミージャとも呼ばれています。
フミーリャ地方は、バレンシアから少し内陸に入ったムルシア州の北部に位置します。最高標高は900mの高地にあり、平均気温16℃の大陸性気候です。
スペインワインの産地として有名な地域であり、1966年にはD.O.フミーリャとして認定され、2018年時点での総栽培面積は約22,000ha、43ヶ所のワイナリーがあります。
フミーリャ地方のワインの歴史
フミーリャの過酷な環境下で育つぶどうは強い耐性と高い繁殖力をもち、フミーリャ地方では、ワイン造りを中心産業として発達してきました。
しかし、1980年までのフミーリャワインは現在のように洗練されたワインではなく、まるでシェリーのような高いアルコール度数と、野性味の高いワインが作られており、主にブレンド用や安価なスペインワインとして有名でした。
そんな中、1980年代の終わり頃、他の地域から約100年遅れてフミーリャ地方では、フィロキセラ(ブドウネアブラムシ)が大流行。この被害により、多くのワイナリー・ぶどう畑でぶどう樹木の植え替えを余儀なくされます。
大きな災害に見舞われたフミーリャでしたが、この大災害をきっかけにこれまでのぶどう栽培の改善に努め、より高品質なワイン造りを目指しました。
その結果、過酷な環境化の中で栽培されるぶどうだからこそ出せる、活き活きとしたフルーティーな果実味に加え、豊かな香りと力強さなど、フミーリャの個性を最大限に引き出した素晴らしいワインを造ることに成功します。
このように、フミーリャでのワイン技術が向上し、品質の高いワインが提供できるようになったのは1990年以降のこと。
つまり、フミーリャ地方が現在のような近代的なワイン産地へと発展したのは、ここ数十年のことなのです。
以来フミーリャ地方のワイン品質向上は大変目覚ましく、国際的にも注目の地域となりました。
フミーリャワインの特徴
フミーリャワインの特徴としてあげられるのは、力強い印象に濃厚な果実味、芳醇なアロマなどがあります。
フミーリャで栽培されている主な黒ぶどう品種はこちら。
- モナストレル
- テンプラニーリョ
- メルロー
- シラー
- カベルネソーヴィニヨン
など
フミーリャを代表するぶどう品種「モナストレル」
さまざまなぶどう品種の中でもフミーリャを代表するぶどう品種は、モナストレル(ムールヴェードル)で、この地方で栽培されるぶどう品種の約8割を占めています。
フミーリャで栽培されるモナストレルは、小ぶりの果実に、皮は厚く青みがかった黒色をしています。しっかりとした肉厚と柔らかな果肉で、アントシアニンが豊富ですが、酸やタンニンは控えめ。
そんなモナストレルの特徴は、パワフルなインパクト。凝縮された果実味とおだやかなタンニンがこの地方で栽培されるモナストレルならではの個性的なワインを造りだすことができます。
いまでこそ、そのポテンシャルの高さに魅了されている人が多いモナストレルですが、実は長い間、モナストレルは脇役のぶどう品種(ブレンド用)として栽培されてきました。
フミーリャのワイン産業発展に伴い、モナストレル単一品種としても上質なワインが造ることが可能になりました。
現在のD.O.フミーリャでは、赤ワイン・ロゼワインはモナストレルを50%以上使用することを義務付けられており、フミーリャのワイン造りの主役ともいえる存在になったのです。
フミーリャの特徴を感じられるおすすめの赤ワイン
【商品情報】
商品名 |
ラス・エルマーナス セレクション モナストレル |
生産者 |
ボデガス・ルソン |
おすすめ料理 |
鶏のロースト、鶏のレバーの赤ワイン煮、ピーマンの肉詰めなど |
生産国 |
スペイン |
地域 |
ムルシア州 D.O.フミーリャ(フミージャ) |
ぶどう品種 |
モナストレル:100% |
樹齢 |
モナストレル:15〜35年 |
度数 |
14.5% |
ボディ |
ミディアム |
味わい |
辛口 |
飲み頃の温度 |
14〜16℃ |
容量 |
750ml |
「ラス・エルマーナス
セレクション モナストレル」の味わい
色合いは濃いルビー色。
口に含むと、ドライプルーンやダークチェリーのような濃縮された黒系果実のアロマが広がります。アタックには、フルーティーでボリュームのある果実味に、モナストレル由来のコショウのようなスパイシーなニュアンスが加わります。
口当たりは柔らかで、ほど良いタンニンと穏やかな酸味が調和したバランスの取れた赤ワインは、まさにフミーリャさが味わえる1本です。
生産者について
地中海に面するスペインのムルシア州フミーリャに畑を持つ「ラス・エルマーナス」シリーズの生産者「ボデガス・ルソン」についてご紹介します。
歴史ある伝統ワイナリー「ボデガス・ルソン」
ボデガスルソンは、19世紀の終わり1916年に設立されました。伝統的な家族経営を続けている最も歴史的なワイナリーの一つです。
さらに1990年の後半には、これまでの知識や経験を活かし、新しいボデガを建設しています。その際に、若いスタッフも加わることで新しい風が入り、伝統的かつモダンなワイナリーへと進化をとげました。
2016年に100周年を迎えたボデガス・ルソンは、年間400万本ものボトルを生産しており、これまでに多くの受賞歴を持ち、世界的にも高い評価を受けている生産者です。
「ボデガス・ルソン」のポリシー
ボデガス・ルソンのワイナリーでは、最高品質のワインを造り出すために以下の4つのポリシーを掲げ、日々の高品質なワイン生産が行われています。
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ぶどう品種「モナストレル」へのこだわり
ボデガス・ルソンと他のワイナリーとの大きな違いは、ぶどう品種モナストレルにあります。
ボデガス・ルソンのモナストレルは、凝縮された豊かな果実味とスパイシーな味わいが特徴です。
一般的にブレンドして使用されるモナストレルですが、ボデガス・ルソンではモナストレル単一品種でも大変バランスの良い赤ワインを造ることができます。
このような品質の良いモナストレルを栽培できるのは、ぶどう畑の土壌と地域の気候に理由があります。
砂質石灰岩によるぶどう栽培に優れた土壌と、年間3000時間を超える照射時間に加え、年間雨量は300mm以下と大変乾燥している地域で夏は35℃以上に暑く、冬は0℃以下に冷え込み寒さが厳しいことが特徴です。
過酷な気候で栽培されたボデガス・ルソンのぶどうは、高い糖度と優れた酸味を持つ小粒で皮の厚い良質なぶどうとなります。
こうしてできた良質なぶどうからフルーティでアロマティックなワインの生産を可能にします。
1 継続的な改善
ボデガス・ルソンでは、現状に満足することなく継続的な改善を行うことで、よりハイクオリティなワイン造りを目指しています。
創業当初から現在に至るまで「日々改善」をワイナリーのモットーとし、栽培・製造過程・ワイン造りのどの分野においても高品質さにこだわっています。
2 歴史・伝統を守りながら新しい技術を取り入れる
ボデガス・ルソン創業当時から、先人が残してきた知識や伝統を守りつつ、継続的な改善を続けたことによる改善点や最新の技術を合わせることで、これまで以上に完璧なワインを造る努力がされています。
3 環境を考えた持続可能性の農業
ボデガス・ルソンでは、土地や畑の丁寧な管理からワインの製造過程までをすべて環境に配慮されて行っています。
このような自然に配慮した取り組みによって、安定したぶどう栽培が行われています。
また、ボデガス・ルソンぶどう畑の半分以上では、オーガニック栽培が行われ、地球環境や将来にわたる長期的な農業の持続可能性を考えてられています。
ラベルの女性は情熱的で活気に溢れる「カルメン」
「ラス・エルマーナス セレクション・モナストレル」は、オレンジのポップなラベルに、母親からワイナリーを引継ぎ、全体責任者となったカルメンという女性が描かれています。
カルメンは、バレンシアで生まれた情熱的で活気に溢れた女性でした。文学に情熱を注ぎ、人生の大半を執筆に専念していたといわれており、カルメンの夫に向けて書いた沢山の詩が保存されています。
そんなカルメンでしたが、一時期は医療の勉強に力を入れており、故郷であるバレンシアに住んでいました。その間、ボデガス・ルソンのワイナリーを管理していたのは、次女のマリアと三女ルイサでした。
のちに、カルメン(オレンジ色)の娘である長女アンパロ(白)と次女サルバドーラ(青)がボデガス・ルソンを引き継ぐこととなり、それぞれがラベルの女性として描かれています。
まとめ
今回ご紹介したワイン「ボデガス・ルソン セレクション モナストレル」は、生産者ボデガス・ルソンを代表するぶどう品種モナストレルを100%使用した力強くも、口当たり柔らかで、フルーティーな味わいは、まさにフミーリャの特徴をしっかりと感じることのできる赤ワインです。
ほんの数十年前まで、フミーリャワインといえば「安価で粗野なワイン」というイメージでしたが、フィロキセラという大災害に見舞われながらも、真摯にワイン造りに向き合った結果が現在の素晴らしいワイン造りにつながっています。
今日、私たちが何気なく口にしているワインはどれも、数百年と繋がる先人からの知恵や技術の継承とワインメーカーの日々の努力や発展の賜物です。
ぜひワインを飲む時は、これまでの歴史的背景も想像しながら飲んでみて下さいね。何気なく飲む時とはまた違った奥深い味わいを感じられるはずです。