ロマンチックなピンク色が女子受けしそうなロゼワイン。
見た目から甘いイメージを持たれがちですが、実は辛口が多いんです。
軽くて飲みやすいのに、香りも豊かで、赤ワインと白ワインの要素を併せ持つロゼ。いろんな料理に合わせやすい万能選手です。
ロゼワインとは?
ロゼワインは、主に赤ワイン用の黒ぶどうを使って造られるワインです。
ロゼ(Rosé)はフランス語で「バラ色」を意味し、フランス語だけでなく、英語でもロゼ(RoséまたはRose)ワインと呼ばれています。
アメリカでは、ピンクワインやブラッシュ(Blush)ワインと呼ばれることも。
スペインでは、ロゼワインをロサード(Rosado)と呼び、イタリアではロサート(Rosato)と呼んでいます。
ロゼワインには、非常に淡いソメイヨシノのような色合いのピンク色から紫がかった赤ワインに近い濃いピンクタイプまで、ぶどうの品種やワインの製法により、さまざまなバリエーションがあります。
ロゼワインの歴史
ロゼワインは歴史が浅いイメージがありますが、実は2600年前にフランスのプロヴァンス地方(Provence)にギリシャ人がぶどうの木を植えた段階で、既にロゼワインは造られていました。
その当時は赤ワインを造る技術が発達していなかったため、赤ワイン用のぶどうを使っても色がはっきりつかず、自然とロゼワインになっていたのです。
プロヴァンス地方(特にバンドール,Bandol)は、ローヌ川下流のタヴェル(Tavel)やロワール地方のアンジュ(Anjou)と共に、フランスのロゼワインの3大産地として知られています。
フランスでは、他にブルゴーニュ地方(Bourgogne)のマルサネ(Marsannay)やジュラ地方(Jura)のアルボワ(Arbois)もロゼワインの産地として有名です。
ロゼのシャンパンが造られ始めた時期はロゼワインよりもっと遅く、1764年に、フランス・シャンパーニュ(Champagne)地方のルイナール(Ruinart)が「ウイユ・ド・ペルドリ」(Oeil De Perdrix,「山ウズラの目」という意味)を出荷した記録が残されています。
第2次世界大戦後には、ポルトガル・ソグラペ社(Sogrape)の微発泡ロゼワイン「マテウス・ロゼ」(Mateus Rosé)がロゼブームの火付け役になり、日本でも大流行しました。
日本では桜の時期である春に売られることが多いロゼワインですが、もともとは夏がシーズンで、コート・ダジュールのバカンス客に人気でした。1970年代には、カンヌ映画祭でエスタンドン(Estandon)のロゼワインが振舞われています。
フランスでは、1990年ころから、伝統にとらわれない、流行に敏感な若者を中心に人気が出て、ロゼの消費量が増え始めます。
アメリカでは2000年ころから人気に火が付き、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーが所有するミラヴァル(Miraval)、ジョン・ボン・ジョヴィが手掛ける「ハンプトン・ウォーター(Hampton Water)」がロゼワインを販売するなど、ハリウッドのセレブもロゼワイン人気に一役買っています。
2018年現在、ロゼの消費量はフランスがトップ(世界全体の34%)で、アメリカが2位(世界全体の20%)です。
同じく2018年現在のロゼの生産量は、フランスがトップで、アメリカが2位、スペインが3位です。スペインは2013年以降、生産量が減少していましたが、再び上昇に転じました。
スペインはエントリーレベル(Entry level)を中心に、輸出量トップを誇っています。
ロゼワインの製法
ロゼワインの製法は、セニエ法、直接圧搾法、混醸法の3つに大きく分けられます。
セニエ法(Saignée)
セニエ(Saignee)はフランス語で「血抜き」を意味します。
下の図の③発酵までは赤ワインと同じ醸造方法で、⑤の発酵からは白ワインと同じ醸造方法で造ります。
赤ワインの醸造方法を用いるため、セニエ法で造られたロゼワインは濃く力強いのが特徴です。
①収穫 |
黒ぶどうを手摘みか機械で摘んだ後、醸造所でぶどうを選別します。 |
②除梗(じょこう)・破砕(はさい) |
ワインに不快な渋みや香りをつけてしまう果梗(かこう)(ぶどうの軸)を取り除きます。その後、ぶどうの実を軽くつぶし、果皮を破ります。除梗破砕機を使って行うケースが多いです。 |
③発酵 |
果皮や果肉、種子と一緒に果汁をタンク内で漬け込み(マセラシオン(Maceration))、高温(約23~25度)で発酵させます。 |
④分離 |
果汁がうっすら色づいてきた段階(12~36時間)で果汁を果皮などと分離し、抜き取ります。 |
⑤発酵 |
果汁を密閉型のタンクや樽に入れ、白ワインのように低めの温度(約13~20度)で発酵します。低温で発酵すると、フレッシュさが持続します。 |
⑥マロラクティック発酵(Malolactic fermentation,MLF) |
乳酸菌を加えることでリンゴ酸が乳酸に変わり、ワインの酸味が和らぎます。多くの赤ワインで行われる作業ですが、さわやかさな酸味が特徴のロゼワインでは行われないケースも。 |
⑦熟成 |
樽またはタンクに入れ、半年から1年熟成させます。ロゼワインは熟成を行わないケースが多いです。 |
⑧澱引き(おりひき)(Racking) |
熟成中に底に溜まった酵母などの沈殿物をとるため、上澄みを何度か他の容器に入れ替えます。 |
⑨清澄・ろ過 |
ゼラチンや卵白などの清澄剤をワインの中に入れたり、結晶化した酒石酸をろ過したりして、ワインの濁りをなくします。 |
⑩瓶詰め |
ワインを瓶に詰めたら、栓をし、ワインラベル(エチケット,Étiquette)を貼って出荷します。一部の高級ワインは瓶熟成するため、すぐに出荷せず、しばらく保管します。 |
直接圧搾法(プレッシュラージュ・ディレクト,Pressurage direct)
ダイレクトプレス法とも呼ばれる直接圧搾法は、白ワインを造る際に用いられる製法です。
直接圧搾法で造られたロゼワインは、色が薄く味が軽めになります。
①収穫 |
黒ぶどうを手摘みか機械で摘んだ後、醸造所でぶどうを選別します。 |
②除梗(じょこう)・破砕(はさい) |
ワインに不快な渋みや香りをつけてしまう果梗(かこう)(ぶどうの軸)を取り除きます。その後、ぶどうの実を軽くつぶし、果皮を破ります。除梗破砕機を使って行うケースが多いです。この作業を飛ばして、直接圧搾する場合もあります。 |
③圧搾 |
圧搾機で果皮をつぶし、果汁のみを取り除きます。圧搾する時に、果皮や種から色が移るため、うっすら赤い色になります。破砕の時にできた果汁はフリーラン・ジュース(Free-run juices)、圧搾の時に出た果汁はプレス・ジュース(Pressed juices)と呼ばれ、必要に応じてブレンドされます。 |
④発酵 |
果汁を密閉型のタンクや樽に入れ、白ワインのように低めの温度(約13~20度)で発酵します。低温で発酵すると、フレッシュさが持続します。 |
⑤マロラクティック発酵(Malolactic fermentation,MLF) |
乳酸菌を加えることでリンゴ酸が乳酸に変わり、ワインの酸味が和らぎます。多くの赤ワインで行われる作業ですが、さわやかさな酸味が特徴のロゼワインでは行われないケースも。 |
⑥熟成 |
樽またはタンクに入れ、半年から1年熟成させます。ロゼワインは熟成を行わないケースが多いです。 |
⑦澱引き(おりひき) (Racking) |
熟成中に底に溜まった酵母などの沈殿物をとるため、上澄みを何度か他の容器に入れ替えます。 |
⑧清澄・ろ過 |
ゼラチンや卵白などの清澄剤をワインの中に入れたり、結晶化した酒石酸をろ過したりして、ワインの濁りをなくします。 |
⑨瓶詰め |
ワインを瓶に詰めたら、栓をし、ワインラベル(エチケット,Étiquette)を貼って出荷します。一部の高級ワインは瓶熟成するため、すぐに出荷せず、しばらく保管します。 |
混醸法
ロゼワインを造る時には、通常は黒ぶどう(赤ワイン用のぶどう)のみを使いますが、混醸法の場合、黒ぶどうと白ぶどうを混ぜた状態で、そのまま発酵させます。醸造方法は、白ワインと同じです。
他に、赤ワインと白ワインをブレンドしてロゼワインを造る方法もありますが、この方法はEUのワイン法では違法で、カヴァやシャンパンなどのスパークリングワインに限って許されています。スパークリングワインは、ブレンドまたはセニエ法で造られます。
スペイン産ロゼワインについて
スペインでは、リオハ(Rioja)、ナバーラ(Navarra)、シガレス(Cigales)のロゼワインが特に知られています。
リオハでは、ロゼワインを赤ワインの製法で造りますが、マセラシオンの時間は通常より短くなっています。
ナバーラ製のロゼワインの大半は、ガルナッチャ(Garnacha)を使って、セニエ法で造られることが多いです。1980年代までは伝統的なロゼワインの産地として有名でしたが、現在はワイン生産量の内、ロゼワインが占める割合は30%です。
カスティーリャ・イ・レオン州(Castiella y Llión)にあるシガレスでは、ワイン生産量の75%をロゼが占めます。シガレスでは、黒ぶどうだけでなく白ぶどうも使って、白ワインの醸造方法でロゼワインを造っています。
スペインでロゼワインを造る時に使われる土着品種としては、
ガルナッチャ、モナストレル(Monastrell)、テンプラニーリョ(Tempranillo)などがあります。
ガルナッチャはアラゴン地方(Aragón)が原産地で、ガルナッチャ・ティンタ(Garnacha Tinta)とも呼ばれています。南仏やオーストラリアなどではグルナッシュ(Grenache)、イタリアのサルディーニャ島(Sardegna)ではカンノナウ(Cannonau)と呼ばれています。
環境の変化に適応力があり、病気にも強いことから、現在は世界で2番目に栽培面積が広いぶどうの品種です。
酸化しやすい品種なので、シラー(Syrah)やモナストレルを、自然の酸化防止剤としてブレンドすることが多いです。
スパイシーかつ濃厚なフルーツのような野生味を感じるガルナッチャは、辛口のロゼワインにぴったりのぶどうです。
バレンシア州(Valencia)が原産地のモナストレルは、フランスではムールヴェードル(Mourvèdre)、オーストラリアとアメリカではマタロ(Mataró)と呼ばれています。
日当たりの良い場所を好み、成熟するまでに時間がかかるため、バレンシア州、ムルシア州(Murcia)のフミーリャ(Jumilla)やイエクラ(Yecla)、カタルーニャ州(Cataluña)など、地中海沿岸地域で主に栽培されています。
モナストレルは、色の濃さとスパイシー&ビターチョコのような苦みを感じるタンニンが特徴で、南仏ではグルナッシュやサンソー(Cinsault)などをブレンドすることが多いです。
D.Oイエクラでは、赤やロゼにはモナストレルを60%以上使わなければならない、という決まりがあります。
テンプラニーリョ(Tempranillo)は、リオハ、ナバーラ地方原産の、スペインを代表する黒ぶどうです。
名前の語源であるTempranoがスペイン語で「早く」を意味することもあり、成熟が早いのが特徴です。
地域により呼び方が異なっていて、マドリード(Madrid)とラ・マンチャ(La Mancha)ではセンシベル(Cencibel)、カスティーリャ・イ・レオン州ではティント・フィノ(Tinto Fino)またはティント・デル・パイス(Tinto del PaÍs)、カタルーニャではウル・デ・リェブレ(Ull de Llebre)と呼ばれています。
スペイン産のぶどうの中ではアルコール度は低めで、寒い地域で栽培すると酸味が強くなります。
色合いやタンニンが濃いのが特徴で、長期熟成すると香りの複雑さが増し、味わいも深くなります。
高級ワインに使われることが多いぶどうです。
ロゼワインを醸造する主なボデガ
ボデガス・エステバン・マルティン(Bodegas Esteban Martín)
ボデガス・エステバン・マルティンは、スペイン北部・アラゴン州のカリニェナ(Cariñena)地区にある、2003年設立の家族経営のボデガです。
D.Oカリニェナという原産地呼称は、アラゴン州とカタルーニャ州以外のスペインでは「マスエロ」(Mazuelo)、カタルーニャ州では「サムソ」(Samsó)、フランスでは「カリニャン」(Carignan)と呼ばれる「カリニェナ」というぶどうの品種名から名づけられました。
もともとこの地区ではカリニェナが栽培されていたのですが、フィロキセラ(Phylloxera)の被害などもあったため、現在では、害虫にも強いガルナッチャを中心に育てています。
ボデガと同じ名前が付いたエステバン・マルティン ロサード(Esteban Martín Rosado)は、
バラなど赤系果実の香りが広がる、ガルナッチャ100%の辛口ロゼワインです。
ヴィーガンフレンドリーなワインなので、健康に気を使う方にもおすすめのロゼワインです。
ボデガ・シエラ・ノルテ(Bodega Sierra Norte)
ボデガ・シエラ・ノルテはぶどう栽培農家3軒が集まってできたボデガで、現在は3代目が跡を継いでいます。ボデガ・シエラ・ノルテは、D.Oウティエル・レケーナを代表するボデガの1つです。
ボデガ・シエラ・ノルテで造られたワインは、すべてオーガニック認証とヴィーガン認証を受けています。
パシオン・デ・ボバル・ロサード(Pasión de Bobal Rosado)は、樹齢40年以上のボバル(Bobal)から取れたぶどうを100%使ったロゼワインです。ボバルは、バレンシア州のウティエル・レケーナ(Utiel-Requena)周辺のみで栽培されてきたぶどうの品種です。
通常、ボバルから造られるロゼワインは色が濃いのですが、パシオン・デ・ボバル・ロサードは淡いピンク色をしています。ですが、その色とは対照的に、ボバルらしい、ストラクチャー(スペイン語ではエストルクトゥーラ,Estructura)がしっかりした味わい深いロゼワインに仕上がっています。
パシオン・デ・ボバル・ロサードは、エチケットに木の葉型のハートマーク、キャップにもハートがデザインされているので、バレンタインのプレゼントや結婚式の披露宴用ワインにもおすすめです。
ロゼワインのおいしい飲み方
ロゼワインは、8度から14度くらいが適温です。
直接圧搾法で造られたさわやかなロゼは温度を低めに、セニエ法で造られたしっかりとした味わいのロゼは温度を高めにします。
冷蔵庫から出した直後は冷え過ぎなので、飲む5~15分前から外に出しておくと良いでしょう。
ロゼは熟成させても、味に変化はありません。また、ロゼはあまり長持ちしないので、開栓していない場合もなるべく早めに、遅くとも出荷後6カ月以内に飲み切ることをおすすめします。
まとめ
ロゼワインは赤と白の要素を併せ持つため、お魚にも肉料理にも合います。
また、ロゼワインと一口に言っても、産地や品種の違いによって、色や味に様々な多様性があるのが、ロゼワインの魅力です。
赤と白のどちらを買おうかな、と迷ったら、ぜひ次回はロゼワインを試してみてください。